夏といえば「怪談!」です。
背筋も凍る“ぞっとする”体験は、暑さを忘れさせてくれるもの、とされ、
- 肝試し
- 百物語
- 歌舞伎の怪談興行
などは、日本の夏の風物詩となっています。
でもこれ、日本と日本の影響が強かった台湾や韓国だけに見られる習慣のようで、
「怖いとぞっとして涼しくなる」
という感覚は、世界的な共通認識ではないようです。
怪談は「ジャパニーズ・ホラー」と呼ばれることがあります。
が、海外のホラー映画を「西洋の怪談」とはあまりいいません。
日本と西洋では、怖さのニュアンスがちょっと違うかもしれません。
「怪談」「ホラー」「スリラー」「都市伝説」「サスペンス」・・・・
怖い作品に付けられるジャンル名はいろいろありますが、どう違うのでしょうか。
怪談とホラーの違い
怪談は日本の怖い話
日本の、主に幽霊や心霊現象、おばけや妖怪の類が出て来る怖い話を総じて「怪談」といいます。特に、江戸時代以前の怪談は、幽霊が生きている人を不幸に陥れたり、あの世に引きずり込んでいく有名な話が多く残っています。
- 夫に騙され殺された妻「お岩」の幽霊が、夫を恨み殺す『東海道四谷怪談』
- 主人の無体な仕打ちで死んだ下女「お菊」の幽霊が、主人の家をとり潰す『番町皿屋敷』
- 美人の幽霊「お露」に見染められた優男が、幽霊にあの世に連れていかれる『牡丹灯籠』
が「日本三大怪談」といわれています。
さらに、怨念の復讐が60年にわたり続く『累ヶ淵』の幽霊「累(かさね)」を加え
「日本の四大幽霊」
という人もいます。
現代の日本を舞台に作られる、超常現象を伴う怖い話も“怪談”と呼ばれます。
映画「学校の怪談」シリーズ名場面集
ホラーは思わず悲鳴があがる恐怖シーンのある作品
「ホラー(horror)」は“恐怖”という意味の単語です。
英単語には、“恐怖”を意味する言葉がいくつかあり、ニュアンスが微妙に違います。
- fear: 一般的な恐怖。「犬が怖い」時などはこれを使う
- horror: ぞっとするような、嫌悪感が走る怖さ。「得体のしれないもの」に対する恐怖
- terror: 現実に遭遇する問題で感じる怖さ。「暗闇」「高い所」「狭い所」などへの恐怖
「ホラー」は、初めは海外映画や小説のジャンル名として使われました。ぞっとするような恐怖シーンをウリにしている作品の総称です。超常現象のあるなしに関わらず、得体の知れないものへの恐怖が描かれ、思わず身も凍るような凄惨なシーンを見せつける類の作品ならホラーと呼ばれます。
20世紀の欧米映画のホラーというと、多くは血しぶき飛び散るグロテスクな殺りく描写がお約束の「スプラッターホラー」(スプラッターは“しぶきが上がる”という意味)でした。
映画「死霊のはらわた」予告編
日本のホラーは、怪談にしろ、人間による殺りくものにしろ、スプラッターシーンで怖がらせるというより、じわじわと募っていく恐怖の心情に共鳴(震撼)させる「心理ホラー」という作りのものが主流です。
ホラーとスリラーの違い
スリルとサスペンスとホラーはちょっと違う
ハラハラドキドキする緊迫感が迫ってくるシーンの多い作品を「サスペンス」といいます。ぞっとする怖さに限らず、のめり込んでいく楽しみもある“ドキドキ感”を伴うものも入ります。犯罪捜査ものやスパイもの、アドベンチャーものなど幅広い題材を含むカテゴリーです。ヒッチコック作品などはほぼこのカテゴリーに入ります。
ホラーもテラーも含めた恐怖を伴うハードな緊迫感を感じるものは特に「スリラー」と呼ぶ場合もあります。スリルは日本語では恐怖ではなく「戦慄」と訳されます。超常現象以外にも、犯罪捜査もので危機一髪事態に心臓バクバクするような作品などは、まさに「スリラー」と呼ばれます。
分類の視点による違い
ホラーは、“得体のしれないものに襲われる恐怖”という「題材」の視点での分類という感じがします。
サスペンスは緊迫感の高まりという「効果」の視点で見た分類。
スリラーは特に“ハードな「演出」”に着目してとらえた分け方でしょうか。
ホラーとスリラーは“怖さを感じている描写”が大事なので、例えばゾンビなどに襲われる話でも、強い主人公が恐怖に勝る勇気で戦いまくってしまうようなものは、サスペンスやアクション扱いになります。
怪談と都市伝説の違い
都市伝説は怖い話ばかりじゃない
日本で都市伝説と聞くと、『トイレの花子さん』と『口裂け女』が元祖のようにいわれています。他にも『タクシーの幽霊』とか『メリーさんの電話』とか、全国区で知られている都市伝説の中には怪談話が多くあります。
が、
都市伝説=怖い話
というわけではありません。
近代文明が発達した都市生活の中で広まり、定着した伝承話のことを「都市伝説」と呼びます。
怪談より
- 「どこそこで○○すると願い事が叶う」
- 「この話にはこんな秘話があるらしい」
みたいな“噂話系“のほうが多いかもしれません。
都市伝説は、本当かどうなのか、確認できない噂が広まったものですが、中にはタクシーの幽霊のように、実際に体験した人が体験談として語るものもあります。科学的に立証できない超常現象はみな「都市伝説」にされるので、一概にデマ扱いもしづらく、まさに
「信じる信じないはあなた次第」
ですね。
「怪談」ってワケガワカラナイからこわいんだよね。映画なんかだと、最初は本当に訳が分からなくて、最後はちょっとだけわかる感じ。