欧米を中心にした英語圏の国では、「13日の金曜日」は“不吉な日”といわれています。
13日の金曜日に起きた不幸をきっかけに、猟奇殺人が次々起こる、というアメリカのホラー映画『13日の金曜日』シリーズは、日本でも人気です。
40代以下の人の中には、この映画がきっかけで、
「13日の金曜日は不吉」
という知識を知った人も少なくないかもしれません。
“世界で最も信じられている迷信”ともいわれる「13日の金曜日」、
世界中で人々の行動に少なからぬ影響を及ぼしています。
13日の金曜日恐怖症
経済損益は1日9億ドル
例えば、アメリカでは人口の9~13%の人々(約2千数百万人)が、13日の金曜日を恐れている、といわれます。彼らは、この日はできるだけおとなしく目立たないように行動します。
- 飛行機にもマイカーにも乗らない
- 買い物しない
中には
- 仕事も休んで家から出ない
- 料理もしない
という人もいます。
心理学用語では、こういう人のことを
“パラスケイヴィデカトリアフォビア(paraskavedekatriaphobia)”
といいます。「13日の金曜日恐怖症」と訳されます。
英語圏国やドイツ、フランスでは、社会通念として、重要な決定ごとやおめでたいイベント、仕事の大きな取引や新たなプロジェクトのスタートなどは、13日の金曜日は避ける習慣が定着しています。
13日の金曜日の経済活動の抑制効果による損益は、アメリカでは1日で8億~9億ドルにのぼる、という試算も出ています。
13日の金曜日が不吉な理由
もともと不吉と嫌われていた「13」と「金曜日」
もともと西欧社会では、中世以前の時代から「13は忌み数」とされる文化があります。欧米へ行くと、多くのホテルやアパートで、13階や13号室が飛ばされています。
理由は諸説ありますが、キリスト教にも由来しています。
“最後の晩餐のテーブルに着いた人が13人”
“13番目にきたのは裏切り者ユダ”
が論拠です。
同じく、キリスト教徒を中心に「金曜日は不吉」という迷信も広く流布しています。
“イエスの処刑が金曜日に行われた”ためです。
20世紀に入ってから、この2つが重なる「13日の金曜日」は、特別に不吉であることがマスコミを中心に喧伝され始め、一気に恐怖症も広まりました。
13日の金曜日に起きたこと
具体的に13日の金曜日に起きた悲劇をあげ、不吉な運命を示唆する話が今も絶えません。
1,テンプル騎士団
1307年10月13日に、テンプル騎士団が一斉に逮捕されました。十字軍の時代から活躍する修道士による正義の戦士集団なのに、中世の権力者に疎まれた結果、異端の罪(冤罪)を問われ、拷問され続け、ほんどが獄死しました。
2,アポロ13号
アポロ13号(アメリカの有人月飛行宇宙船)の事故は、1970年4月13日でした。
大国が迷信に振り回されて国家計画を進めることを払拭するため、あえて13号とし、打ち上げ時刻も13時13分にしたのに、逆に不吉さを実証することになりました。
3,フランス同時多発テロ
2015年11月13日には、パリ同時多発テロ事件が起きました。IS(イスラム国)の戦闘員とみられるジハーディストによるテロは、死者130名、負傷者300名を超える犠牲を出す惨事でした。
13日の金曜日は本当に不吉なのか?
13日の金曜日は実はラッキーデー?
1年は365日しかないけれど、世界中の事故や事件は毎日複数起こり、13日の金曜日は年1~3回あります。歴史的な大きな事件の中に「13日の金曜日」がいくつも出てきても決して不自然なことではありません。
部分的ですが、世界では13日の金曜日の事故率などの調査もいくつか発表されています。結論からいうと、事故数は逆に平均より低くなっています。用心して車に乗らないとか、より慎重に行動する人が多いせいかもしれません。
欧州については、イギリス、フランス以外でも、オーストリアやスウェーデンなどで多くの航空会社が通常よりチケット代を安くしています。
確証バイアス
13日の金曜日恐怖症の人は、何か悪いことが起きると、すぐにそれを何かと結びつけて考え理由づけにし、反証する情報はあえて無視、または考えないようになる傾向があります。そういう心の作用を専門的には「確証バイアス」といいます。
これはつまり、「不吉かどうかは考え様」だ、ということです。
世界には13や金曜日を縁起がいいものとする文化もたくさんあります。来世を信じた古代エジプトでは、13は死の世界の象徴でしたが、不吉ではなく次世界への転換を示す肯定的なニュアンスでした。
アポロ13号は、宇宙の塵と散ってもおかしくない事故を起こしながら、乗り組み案全員が無事に生還しました。見方によっては、とてもラッキーな奇跡が起きた日でもあります。
アメリカ合衆国は建国時13州でスタートしました。1ドル紙幣にもある国章には
「13葉のオリーブの枝と13本の矢を掴む鷲」
が描かれています。独立当初、13はアメリカにとって「吉」のシンボルでした。
イエスの死は、キリスト教徒にとって、本来忌み嫌うべきことではなく、喜び称えるべき出来事でもあります。イエスの死によって、人類はすべての罪を許され、救いの道が開かれたのですから。実際に、金曜日を良い日とする信者もいます。そもそも、イエスが貼り付けにされた十字架を信仰のシンボルとしているということは、そういう意味です。
13日の金曜日、あなたは気にしますか?
まさケロンは「あ、そういえば今日って13日の金曜日だ。なにか変わったこと起きるかな?」くらいにしか思ってないけど、ちょっとワクワクしちゃってる部分もあるな~。ちょっといつもと違う「特別な日」って感じで、あんまりマイナスのイメージがあるわけじゃないんだよね。