怪談・ホラー

あなたの知らないゾンビの真実/世界一ゾンビ発見数が多いハイチ

Written by すずき大和

『ゾンビ(Zombie)』とは、一般的に、蘇って歩き回る死体のことをいいます。ホラーやファンタジー作品、アクションやRPGゲームに出てくる定番のキャラです。

特に世界の映画界においては、毎年のように、ゾンビを題材にした作品がどこかで作られており、ホラー映画の一角を成す人気ジャンルです。

が、日本ではどうも、“マニア”イメージがあり、

「ゾンビ映画はヒットしない」

と、いわれ続けてきました。

2016年、大泉洋さん主演の『アイアムアヒーロー』 が、動員100万人超のヒット作となりました。


果たして日本にもゾンビの波がいよいよやってくるのでしょうか・・・



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20世紀が生んだホラーの定番「ソンビ」

ゾンビは意外と新参者

西洋のモンスターというと、神話や伝説、古典文学のキャラが思い浮かびます。

  • 魔女
  • 悪魔
  • ゴブリン
  • サイクロプス
  • ドラゴン
  • 人狼
  • バンパイア・・・

これら中世以前から語り継がれているクリーチャーに対し、ゾンビは至って最近出現したキャラクターです。

1929年、アメリカの探検家「ウィリアム・シーブルック」が紹介したハイチの民間信仰研究が発端です。

ゾンビは、ハイチ諸島や西アフリカに伝わる土着信仰ブードゥー教の呪術の一種といい伝えられています。呪術で蘇った死体を“永遠に死なない奴隷”として働かせ続けた、といわれています。

実際は、死者を蘇らせる.のではなく、秘薬(ゾンビパウダー)を使って仮死状態にした人間を死んだと思わせ、埋葬後、掘り出して蘇生させていたらしいです。それらの報告を下敷きとして、1932年、ハイチを舞台に初めてゾンビを扱った映画が作られました。

『ホワイト・ゾンビ(White Zombie)』1932年アメリカ映画(邦題:恐怖城)

ホワイト・ゾンビ(White Zombie)


最初のゾンビは自我を失い、操られるだけの存在

ホワイト・ゾンビに出てくるゾンビは、ゾンビマスターによってゾンビパウダーを投与された結果、自分の意思をもたず、ゾンビマスターの意図するままに働かされ、時には人殺しまでもさせられる操り人形のような人間たちです。

彼らは無表情で言葉は発せず、心ここにない様子で動き回る存在でした。痛みも感じないのか、銃で撃っても平気なのは、今のゾンビとも共通しています。しかし、私たちのよく知っているゾンビのように、人肉を食らうわけでもなく、感染して増えていくこともありません。外見のビジュアルも、普通の人と変わりません。

モダン・ゾンビ映画の幕開け

土気色の肌、うつろな表情、
おぼつかない足取りでノロノロと進みながら、
人間を見ると集団で襲い、その肉を食らい、
食われて死んだ人間もまたゾンビと化し、
食いちぎられた皮膚をむき出しにしながら徘徊する・・・・

あのおどろおどろしい風体のゾンビは、業界的には

「モダン・ゾンビ」

と呼ばれ、最初の頃のゾンビとは区別されています。

モダン・ゾンビが最初に描かれたのは、1968年「ジョージ・A・ロメロ」監督によるアメリカのホラー映画でした。

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(Night of the Living Dead)』・予告編


ここで初めて、モダン・ゾンビの主要な特徴

「カニバリズム(食人)」「ゾンビ化の感染」

が描かれます。

公民権運動やベトナム戦争など、不安渦巻く社会情勢の時代、理不尽とおぞましさの交錯するゾンビ映画は大きな反響を生み、以降、多くのモダン・ゾンビ映画が製作されるようになります。

本当のゾンビ

現実にゾンビは作られていたのか

ハイチのゾンビについては、前述の冒険家シーブルックの報告や、民族植物学者「ウェイド・デイビス」博士の著書(1985年)での仮説によると、

  • 呪術師は、フグなどに含まれる「テトロドトキシン」という毒を配合した秘薬を使った
  • 解毒剤で蘇生すると、仮死状態の間に脳の前頭葉だけ破壊され廃人のようになって蘇る
  • 廃人となった人間は、奴隷として過労死するまで使役された
  • 罪人への刑としてゾンビ化が行われていた

と、されています。

が、しかし、実際の蘇生法についての科学的根拠も証拠もなく、集団監禁されたゾンビ労働者が発見されたこともありません。シーブルック氏やデイビス博士の報告には創作や推測とみられる部分も多々あります。

そのため、現在ではこの仮説は都市伝説のような伝承と考える説が主流です。

あくまでも

「村のおきてに逆らうと、ゾンビにされちゃうぞ」

という、共同体の同調圧力としてのいましめにすぎなかったかもしれないし、

実際に囚人の奴隷労働はあって、人としての自由や人権をはく奪され、死人のように扱われたことが、「生ける屍」呼ばわりされたのかもしれません。

ゾンビ発見事例

しかし、ハイチではこれまで多くの「ゾンビ発見報告」があるのも確かです。多くが、死んだはずの人間が、数日~数十年後に生きて発見され、実はゾンビとして蘇っていたのだ!というものです。

ハイチは死んだその日に埋葬する習慣なので、医者の診断技術が低い時代は、仮死状態で埋葬され、蘇生した例もあったと思われます。一方、時間がたって発見された例で検証可能だったものは、ほぼ他人だったことが証明されました。多くは、よく似た知的または精神障害者だったそうです。

ゾンビ伝説があるため、似ている障害者が徘徊しているのを発見した家族が、「ゾンビとして蘇った」と信じて連れて帰ってしまう例が多い、と研究者は分析しています。ホラーではないけれど、ちょっと切ない話ですね。

まさケロンのひとこと

感染力があるだけでもおそろしいのに、最近じゃ「走るゾンビ」だったり、「力持ちのゾンビ」だったり、「知的なゾンビ」だったり、なんかすごい進化してて驚異的すぎるんだけど、本当にこんなゾンビばっかりだったら数年で人類滅亡しちゃうよね。。

masakeron-sorrow


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。