お彼岸の頃、ビニールでパックされた砂糖菓子が仏壇にお供(そな)えされていませんでしたか?蓮の花や桃をかたどっていて、色はカラフルなピンク、イエロー、グリーンで、子供心においしそう!と思ったのですが……
実際に食べると、甘いだけでぱさぱさしておいしくないですよね。同じ体験をされた方は多いと思います。あの砂糖菓子はいったいなんなのでしょう。
砂糖菓子の名前は落雁(らくがん)
あの砂糖菓子は落雁(らくがん)という菓子です。お彼岸のお菓子には、なぜそのお菓子を供えるのか、ちゃんと理由があります。ご先祖には最高級のお供えしようという理由で、当時、高価だった砂糖がお供えされました。
蓮(はす)の花や、果物の形をしているのは、本物の花や果物だと飾っていると傷んでしまうため、それらの形にしたと言われています。
おいしくない落雁
由来はわかったものの、おいしくないお彼岸の落雁。筆者が子どもの頃、生姜湯(しょうがとう)で溶かしたとろみのある落雁を食べたことがありました。誰も食べないのはもったいないと母が作ってくれましたが、緑色の落雁で作ったそれは、スライムにしか見えず、やはりおいしくはありませんでした。
実は『日本三銘菓』の落雁
日本三銘菓として挙げられる菓子は全て落雁です。
- 長岡大和屋・越の雪(新潟県)
- 金沢森八・長生殿(石川県)
- 松江風流堂・山川(島根県)
「鶏卵素麺」という菓子が入ったり、それを含めた4つの菓子を日本三銘菓とする場合もありますが、それでも常に落雁は『日本三銘菓』に名を連ねているわけです。でも、「おいしくない!」と言われてる落雁が『日本三銘菓』と言われても納得がいきませんよね。
落雁ってどんなお菓子?
落雁は、“打ちもの”と呼ばれる干菓子で、伝統的な和菓子の一種です。
- 蒸してから乾燥させた米の粉に水あめや砂糖を加えて練り、型にはめ、乾燥させたもの。
- 非加熱の米の粉を用い水あめを加え、型にはめ、セイロで蒸し上げた後、乾燥させたもの。
最初に蒸した粉を使うか、型を作ってから蒸す、の2通りですね。
作り方は簡単ですが、それだけに素材の味が決め手になります。そのため、菓子職人たちは季節によって作り方を変えたり、色や形に工夫を凝らしています。本来の落雁は、口の中でさらっととけ、ふんわりとした甘さが口の中で広がる、とても上品なお菓子です。
どうしてお供えの落雁はおいしくないの?
落雁は大きく分けて2種類あります。
- お茶菓子の落雁
- お供え用の落雁
どちらも干菓子に分類され、名前も同じですが、それぞれの用途で味に違いが生じました。
お茶菓子用の落雁はお茶席で使う、庶民には手の届かない高級なお菓子でした。そこで材料を安価にした模倣品が多く出回りました。お供えに使われる落雁は後者です。砂糖が庶民にとって高根の花だった頃は、あの味でもおいしく感じたのかもしれません。
最近のお供え用の落雁は長い間お供えしても傷まないように作られていて、味は二の次のようです。
お彼岸の落雁の食べ方
いくらおいしくないとは言っても、食べ物、しかもお供え物を捨てるのは抵抗がありますよね。そんな訳で、お供え用の落雁のアレンジ方法を調べてみました。
生姜湯で溶いて食べる
原料に葛(くず)を使っているものだと、前述したように、ぷるんとした食感のゼリー状になります。筆者が子どもの頃、おいしくないと感じたのは、当時は生姜(しょうが)が嫌いだったせいかもしれません。冷やして食べると、おいしくなるかもしれませんよ。
お料理に使う
クックパッドにはお供え用の落雁を使った手作りスイーツのレシピがたくさん掲載されています。クッキーが多いですが、プリン、パンケーキなど、多彩なレシピを見つけることができます。
中身が砂糖の落雁を買う
見た目が落雁でも中身がグラニュー糖、という商品も売られています。お彼岸が終わったら、そのまま砂糖として使えます。アレンジして食べるのも面倒!という方におすすめです。
本気だせばすごく美味しい落雁だけど、お供えもの用は味よりも優先するべきところがあるんだね。