ガーデニング・家庭菜園

ヒョウタンの隣で育てたきゅうりは毒入りになる、って嘘だから!

Written by すずき大和

夏の猛暑が年々厳しくなる都市部で、このところ、つる性の植物を育てて作る「緑のカーテン」が人気です。種苗屋さんでは、ヘチマやゴーヤ、千成ヒョウタンなどのウリ科のタネや苗がよく売れているそうです。

ゴーヤは食べられますが、ヘチマやヒョウタンは観賞用です。ウリ科の植物の実には毒性物質があるので、その成分の多い実は食べると危険です。が、そのことを知らない人たちが、うっかりヒョウタンの実を食べて起こす食中毒事故が、このところ年に1、2回起きています。

2016年夏、改めてヒョウタンの毒性を周知する記事が、とある週刊誌に載りました。その見出しのつけ方が刺激的すぎたため、すぐにネット内にもいくつかリライト記事が出回りました。が、衝撃的なニセの事実が「デマ」として独り歩きしている面も見られます。皆さん注意してください。



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ヒョウタンの実は確かに毒ですが・・・

ヒョウタンの隣で育てたキュウリは「毒入り」になる?

表現する文言はそれぞれの記事で多少違いますが、簡単にいうと、

“ヒョウタンの隣でキュウリの苗を栽培すると、できたキュウリの実には毒がある”

という意味に受け取れる見出しつきで、記事が広まっています。

交配しやすいウリ科の植物の特徴により、隣のきゅうりも毒入りになる、というのです。

確かにウリ科は交配させやすいです。が、それは品種改良として人工的に受粉させる場合です。普通に咲いていて、異種の花粉が付いただけでは、受粉できません。

そして、家庭菜園のきゅうりのほとんどは、受粉しないで実ができるタイプのものです。私たちが食べているきゅうりはほとんどタネがないですよね。タネがあるとブツブツして触感悪いですから、栽培種のほとんどは受粉させない種です。

過剰に心配するのはやめましょう

万が一、ヒョウタンの雄花の花粉をきゅうりが受粉したとしても、一代の交配だけで、それほど毒性が高まるとすれば、食べるときに気付きます。

ウリ科の毒は「ククルビタシン」と呼ばれる“苦み成分”です。

もともときゅうりにも無害な程度は含まれています。もし危険なほど毒が高まっていれば、すでに苦くて食べられません。普通においしく食べられたら、毒きゅうりではありません。

後から

「そういえば、隣の家の緑のカーテンがヒョウタンだから、うちで作ったきゅうりは、毒きゅうりだったかもしれない!?」

なんて心配しなくても大丈夫です。

近くにヒョウタンの緑のカーテンと家庭菜園のきゅうりを両方作っているお家があっても、

「あそこのきゅうり、毒入りなんじゃないの・・・」

なんてコソコソ風評立てたりもしないであげてくださいね。

なぜ最近ヒョウタンの食中毒が目立つのか

ヒョウタン容器が身近ではなくなってきた時代

ヒョウタンの実は、中身を出してよく乾燥すると、丈夫な容器として活用できるので、特に東アジアでは、昔からよく人間の生活用品として身近にありました。

日本でも、昔からお酒や水の容器として利用しており、時代劇などでもよく見かけます。最近では、もっぱら観賞用になってしまいました。七味唐辛子屋さんでは、ヒョウタン型の入れ物が今でも人気ですが、あれ、実はほとんど木製です。


すでに自分の家で育てたり、もらってきたヒョウタンの実を加工することがほとんどなくなっています。戦後すぐの頃は、身近なところにヒョウタンを作っている人や、収穫期に徳利にしている農家がまだ都市部でも見られました。

当時の人は普通に知っていた

「ヒョウタンは食べちゃダメ」

という常識が、後の世代に伝わらないまま、そんなこと全然知らない人が増えています。

生半可でいい加減な知識をネット経由で得る人々

2016年に報告された中毒事故の例は、ネットで見たひょうたんの調理方法をまねて、千成ヒョウタンの実を料理して食べたケースでした。

ヒョウタンには食用のものがあります。ポピュラーなものは「かんぴょう」です。

あれは、「ユウガオ」というウリ科の植物の実で、ヒョウタンの仲間です。

ユウガオの実は、ヒョウタンより丸っこくて洋ナシに近い形をしており、千成ヒョウタンとは明らかに違います。

が、最近はやりのヒョウタンを取り上げた記事の中で、「食べられるヒョウタンもあります」のようにユウガオを紹介するケースが増えており、そこに掲載してある写真が、ヒョウタンなのかユウガオの実なのかまぎらわしいものも、いくつかあります。

ユウガオの実


記事を書く人も注意すべきですが、

“ネットの記事は何でも必ず、その信憑性について、自分で確認して調べる”

という習慣を付けること、

いわゆる「リテラシー」意識を持つことが求められます。

ウリ科のつる植物は、早く伸びて葉も大きく、緑のカーテンには確かにふさわしいです。千成ヒョウタンはつるの手入れさえちゃんとすれば、初心者でも育てやすく、日本ではひょうたんは縁起物です。エコのためにも、広まっていくのは悪いことではありません。

可愛らしい実に愛着が沸く人も多いと思いますが、くれぐれも食べようとしないように、そして、無実のきゅうりにあらぬ疑いをかけないように、お願いします。

まさケロンのひとこと

まさケロンもヒョウタン食べちゃダメ!って知らなかったよ。食用かどうかしっかり確認しないと。

masakeron-sorrow


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。