東京・埼玉・神奈川を中心とした首都近郊では、江戸時代の頃から11月の酉の日に
「酉の市(とりのいち)」
という市(いち)が立つ、神社やお寺のお祭が賑わっています。
売られているのは、「縁起熊手(えんぎくまで)」という飾り物です。
居酒屋さんなどにいくと、高い所に飾ってあるのを見かけたことがありませんか?
熊手は、お金や福を掻っ込んで引き寄せてくれるといわれています。
商売繁盛だけに留まらない福寄せアイテム
商売してないのに熊手買ってもしょうがない?
会社勤めの知人が、酉の市の縁日をひやかしにいったら、お店の人の巧みな口上に乗せられて、つい顔くらいの大きさの縁起熊手を買ってしまったそうです。
商売していないので、飾る店もないし、
玄関に飾っておくのもなんか恥ずかしいし、
捨てたりしまい込んだりすると罰が当たりそうだし、
「これ、どうすればいいの?」
と困っているようです。
いやいやいや・・・縁起熊手は、関西のえべっさん(十日戎、えびす講)の福笹と違い、「商売繁盛の縁起物」に限ったものではありません。
願い事がある人は熊手で引き寄せよう
冒頭にも書きましたが、熊手が引き寄せてくれるのは、お金と福です。そこにつながるものをかっこんでくれる幸せアイテムと思ってください。
- 商売繁盛を願う人は「お金」や「お客さん」
- 大願成就のために「運」「チャンス」「才能」
- 家内安全を願うなら「健康」「平和」
いろいろかっこんでもらいましょう。
商売していなくても、恥ずかしがらず、堂々と飾って福招きしてください。
縁起熊手の取り扱いマニュアル
縁起物には約束事が付き物です。熊手にも、買い方や飾り方などの手本があります。
幸せを呼び込むための熊手取り扱いのポイントをまとめてみました。
粋な買い方
1) 値切り交渉してみる
お江戸で盛んになった市ですから、江戸っ子気質の粋な振る舞いがかっこいいとされます。
チャキチャキの粋を表すには、歯切れよくやや早口で、立て板に水のようにはっきりものをいわないといけません。モゴモゴしたり、遠回しにグダグダいっちゃあいけねえ。
まず、お約束として、値段交渉してください。酉の市では、売り手も買い手も軽妙な口上で掛け合いながら、買値の交渉をする姿が祭の醍醐味です。
上手に掛け合えなくても、一応
「兄さん、もうちょっと安くなりませんかね」
とひと振りすると、向こうも
「お、この人わかってるね」
と、機嫌よく値引きに応じてくれるでしょう。
2) 値切った分も払う
昔は、値引かせるだけ値引かせて、決め値で買ったら、正規値段との差額を「ご祝儀」として渡すのが、真の粋な振る舞いとされていました。結局元値で買うのと同じですが、駆け引き口上で盛り上げ、ご祝儀の振る舞いっぷりを見せることで、人の株が上がるわけです。最後にお店の人と一緒に手打ちで締めて買い物が終わります。
が、今はそこまでかっこつける余裕がない時代ですから、値引き値段で買っていってしまう人も実は少なからずいます。そういう場合は、最後にお店の人が手打ちしてくれないこともあるそうですが、あらかじめオマケ考慮のケースもあります。
3) 買ったら高く掲げながら持って帰ろう
よりたくさんの福を掻っ込んでくれることを祈って、買った熊手は高く掲げながら持ち帰るのが良い、とされています。手が疲れちゃうので、ずっと上げなくてもいいですが、境内を出る時は、ちょっと見せびらかせていきましょう。
粋な飾り方
最も相応しい飾り場所は、
「玄関」
です。入口の方に向けて、高い所に飾ってください。
福を外から呼び込むには、それが一番良いのです。
自分のために買ったとしても、自分の部屋ではなく、玄関に飾って家族みんなの福を願いましょう。自分だけなんてケチくさいのは粋じゃないです。
北向きに飾るのはダメと解説しているものもありますが、日本の住宅事情では、そんなに飾る場所が選べないこともあるので、入口向きに置ければいいでしょう。
処分の仕方
商売繁盛祈願の場合、熊手は毎年、少しずつ大きさを大きくしながら買い替えていく、ということになっています。古い熊手は酉の市の神社やお寺に納めるのが常です。たいていは、古い熊手の納所を設けてくれています。
商売以外の招福や願掛けで買った熊手は、翌年も飼い続けない人もいますが、新しいのを買わなくても、熊手の有効期限は1年間しかありません。お役目を終えた古い熊手は、そのまま放置せず、できれば酉の市が終わるまでに納めに行きましょう。
熊手は縁起物ですが、神社が神体の御神霊(おみたま)を込めたものではないので、本来はお焚き上げの対象ではなく、酉の市以外の時期に持って行っても引き取ってくれない神社もあります。
もし納めそこなってしまったら、自分でお清めして処分する、という方法もあります。
新聞紙等の上に置いた熊手に、左・右・左、と3回塩を振りかけてから、自治体のごみ処理ルールに従って処分してください。飾りはプラスチックや金属の針金が入っているので、分別が必要な場合は、解体して分けましょう。
最後まできっちり感謝を込めて処分すると、そこでまた運気も上がる気がします。気分の問題ですが、縁起って、思っているより自分を強くしてくれるものです。
あなたも熊手一回買ってみてはどうですか?
縁起熊手ってこの目で見るまでは地味かと思ってたけど、思ったよりも派手で縁起物感がすごかったね。思わず買っちゃったね。