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展望記憶/人は常に大事なことをうっかり忘れながら生きている

Written by すずき大和

あなたは記憶力に自信があるほうですか?

方程式や歴史の年代、四文字熟語、英単語のつづり・・・学生時代を思い起せば、「暗記」で苦労した経験のひとつやふたつは誰しも覚えがあるでしょう。

中高年に差し掛かってきた皆さんは、新しいことを学ぶ「物覚え」が悪くなると同時に、昔のことをだんだん忘れていくことが気がかりかもしれません。過去の出来事を鮮明に思い出せる人に会うと「記憶力がいいですねぇ」なんて言葉が口から出ます。

記憶力が気になるのは、過去に暗記したり経験したりしたことを覚えているかどうかだけではありません。これからしようと思っていたことをつい忘れてしまうこともあります。

「うっかり」とか
「物忘れ」とか

呼ばれる類の記憶の欠落は、若い時でもよくあります。



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大事なことでもつい忘れてしまう人間

これからやるべきことの記憶

過去のことを覚えている記憶は「回想記憶」「回顧的記憶」などといいます。これに対して、これからやることや必要になることを覚えておく記憶のことは

「展望記憶(てんぼうきおく)」

といいます。

  • アイロンのスイッチを入れ、熱くなるまでの間他の家事をこなす
  • 買い物に出かけて、必要なものを買い揃える
  • 待ち合せや打ち合わせのために、決まった時間にでかける
  • 食後に薬を飲む

などなど、日常生活や仕事の中で、私たちは絶えず展望記憶によって行動をコントロールしています。

「次にあれをやって、これをやって」
「いついつまでにこれをやらなきゃ」

という予定を頭の中で整理しながら生きています。

展望記憶が失われると、社会でちゃんと生きていけなくなります。会議やいろんな約束をうっかり忘れることが多い人は、だんだん信用されなくなります。小さな子や要介護の家族の世話などを忘れてしまうと、人の命に関わることもあります。

車内に子供を置き忘れる

2020年の6月に、コロナ禍により在宅勤務中のお父さんが、保育園に送っていくつもりで車に乗せた2歳の子供のことを忘れて車内に放置し、熱中症で死なせてしまう、という事故がありました。ネットでは、親としての責任や人格を疑うような批判の声もあがりました。

一方、慣れない在宅勤務に

「仕事のことで頭がいっぱいだった」

というお父さんに同情する声や

「自分も忘れそうになったことがある」

というヒヤリ体験をつぶやく人もたくさんいました。

パチンコに熱中して子供が車内にいることを承知で放置した場合とは違う、こうした「うっかり置き忘れ」の車中放置事故は、実は珍しいことではないそうです。

展望記憶は完璧に思い出せない

  • 買ったものをその場に置いて帰る
  • 大事な書類を電車に置き忘れる
  • 車で出かけたのに忘れて電車で帰ってきてしまう

など、大事なことなのにうっかり忘れてしまう展望記憶の欠落は、よく起きる現象です。最近の研究によると、

「遺伝子の特徴によって、うっかり忘れをしやすい人としにくい人の違いがある」

という結果が報告されたものもありますが、いくつもの展望記憶を常にタイミングよく完璧に思い出せる人間はいません。ストレスが大きい問題が他にある時もない時も、とても大事な記憶でも、思い出せないことは誰にでもあります。

大事なことを忘れないようにするためにできること

うっかり忘れは高齢者ほどしない

たくさんの展望記憶の中でうっかり忘れが起きるのは、年齢や性別や人種に関係なく、誰でもあることです。が、実は

「定期的に服用する薬を飲み忘れる人の割合は、高齢者ほど低い」

という調査結果があります。

また、仕事の「うっかり忘れ」は若年層に多く、ベテランになるほどそういうミスが減る、という傾向は、いろいろな職種で見られます。

これは、人間は、うっかりの経験を積むほどに、

“うっかり忘れても、また思い出せるきっかけを作っておく”

という工夫をするようになるためです。高齢者は目に付くところに予定を書いて貼ったり、薬の時間にアラームを鳴らしたり、何かしら「物忘れ防止策」を講じている率が高いので、忘れ事故率が低い、と考えられています。

子供を車内に置き忘れないシステムを作る

車内放置による子供の死亡事故は珍しくないと書きましたが、これは欧米でも同じです。どの国も毎年数十件単位の事故が報告されています。

これを防止するため、自動車に子供が置き忘れられたら検知してアラームを鳴らしたり、親の携帯電話に知らせる装置を備えつける方向で、メーカーや消費者団体の動きが進んでいる国も出てきています。

ハード面を調えることも大事ですが、例えばアメリカの民間団体「Safe Kids Worldwide」では、子供がいることを忘れないための手順をルール化することを提唱しています。

  • 子供がチャイルドシートに据わっているときは助手席にぬいぐるみを置く
  • 自分のスマホや財布を後部座席の子供の近くに置く

などの決め事の例が提案されています。

物忘れすることを前提にしよう

子供の車内放置に限らず、大事なことを忘れてしまった人や自分を責めるだけでは解決にはつながりません。

「やることに追われる時ほど、大事なことを忘れてしまうのが人間」

ということを忘れずに、大事なことは忘れ防止対策を常に用意することが、重要ではないでしょうか。

まさケロンのひとこと

あれもこれもってなると、どうしても忘れちゃうことあるもんね。
まさケロンもうっかり対策していこ!

masakeron-happy


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。