メロスは友を助けるため頑張った……はずなのに
「走れメロス」とはこんな話
妹の結婚式の準備のため、町にやってきた羊飼いのメロスは国王の傍若無人ぶりに憤りを覚え、暗殺を企てるが捕らえられてしまい死刑を宣告される。
結婚式だけは無事執り行いたいというメロスの懇願により、親友が身代わりとなり必ず帰ってくることを条件に一旦釈放される。
国王はメロスは絶対に帰ってこないと心のなかでは思っていた。
結婚式を無事済ませたメロスは期限に間に合わせるために、全力で国王のもとに向かう。
メロスが約束を守ったことに心を動かされた国王は改心する。
というのが太宰治の短編小説走れメロスのあらすじです。
タイトル通り、約束を守るためにメロスが全力で走り帰還する場面がこの物語の核となっており、読者が感動する場面でもあるわけですが・・・
道中、ほぼ歩いていたとする有力な説が発表される。
ところがこの定説を覆す説が発表されました。
小説の描写から、出発時刻と到着時刻、要した時間を推測し検証していくと、おどろくことにメロスは道中ほぼ歩いていたというのです。
物語の後半、結婚式を終えたメロスが国王のもとに戻る道中は、橋が落ちていたり山賊と戦ったりしたために時間が逼迫し、死に物狂いで走ったとされているのですが、発表者によればこの時でさえも、早歩き程度。
これは興味深い研究といえるのではないでしょうか?
発表者は中学2年生
自由研究が大きな波紋よぶ
この説を発表したのは
中学2年生の男子、村田一真くん
理数教育研究所が開催した「算数・数学の自由研究」に応募し、入賞を果たしたメロスの全力を検証という研究結果によって明らかにされました。
これによると、往路は時速3.9km
様々な困難が立ちはだかり時間との戦いとなった復路でさえ時速5.3kmという結果です。
ちなみに一般男性のフルマラソンの平均速度が時速9km程度ですから、メロスはかなりゆったりとしたペースで道中を移動したことになります。
作品の質は変わらない。そのユニークな着眼点を評価
さて、だからといって太宰治が才能がないとか、「走れメロス」が駄作だとかいう結論には至りません。
これからも名作として読み継がれていくことでしょう。
評価したいのは村田一真くんの着眼点です。
それを検証するというのはなかなか考えつかないことです。
たいていもっと難しいというか入賞をねらった研究を選びがちですが、誰でも知っている名作を題材に選ぶとは、村田くん、あなたはなかなか柔らかい頭をしていますね。
その柔軟性はきっとおとなになったら強い武器となるでしょう。
村田くんはなぜ「走れメロス」を題材に選んだのかはコメントしていませんが、おそらく
こんな速いスピードで走っていたんだ!
という驚きの結果を予想していたのではないでしょうか?
彼はこんなコメントをしています。
走れよメロス・・・
中学生の男の子に言われてるでぇ~
でも、内容は良え話やと思うけどな!