5月です。
皆さんはもう初鰹食べましたか?
という人もいれば、
とも言われています。
スーパーに行くと、パックに入ったさくや御造りが冷蔵ケースにたくさん並んでいますね。
生きている時の鰹の姿を思い浮かべてください
丸ごとの鰹見たことないのに、鰹の絵は知っている
その場でさばいている個人商店の魚屋さんが減り、スーパーなど大型店に並ぶパックで魚を買うことが多くなった昨今、切り身やさくで売られる魚の生きている時の形を知らない人も増えています。
あなたは丸ごとのブリやシャケの姿、すぐに思いつきますか?
ちょっと自信ないかも?
鰹はそんなに大きな魚ではありませんが、大家族が少ない昨今は、やはりスーパーで丸ごと売ってる所はあんまり見ません。
が、鰹の絵はすぐにイメージできる人が多いそうです。
実は、本物は見ることが少なくても、だしの元や削り節のパッケージで鰹のイラストはとても頻繁に見ているんですよ。
お腹の縞模様が特徴的で印象に残る鰹
魚のイラストなんて、どれも同じようになってしまうものですが、鰹の場合は、銀色のお腹に走る黒い線が、尾びれにかけてくっきり縞模様を作っているので、それで判別できます。
というか、形や顔はうろ覚えでも、お腹に縞模様がある魚、というデータがインプットされている人が多いのではないでしょうか。
インプットされてなかった人は、台所のだしの元の箱や削り節のパックを見てみてください。
お腹が縞模様の魚がはねてるイラスト、描いてありませんか?
鰹の縞は縦縞?横縞?
そのイラスト、実は嘘なんです
だしの元の鰹の絵は確かにお腹が縞模様です。
が、本当の生きている鰹にはお腹に縞模様はありません。
という人います?
はい、魚屋さんで売ってる鰹は絵と同じ縞模様があります。
ちゃんと本物の鰹です。
ただし、死んだ鰹ですけど。
実は、鰹のお腹の縞模様は、鰹が水揚げされて初めて現れるもので、泳いでいる時は見えません。
だしの元の絵はピチピチはねているので、本当なら縞模様はないんです。
生きている時は背中に横縞、死ぬとお腹に縦縞
背骨がある動物は頭からお尻に向かう方向の縞を縦縞、脊髄を輪切りにする方向の縞を
横縞(よこじま)
といいます。
シマウマやトラは四本脚で立っている時は縦のストライプに見えますが「横縞」です。
鰹も生きて泳いでいる時、餌に群がるなど興奮していると背中に「横縞」が浮き上がります。
そうなんです。
生きている鰹は横縞なんです。
そして死んでしまった途端、皆さんよくご存知のお腹の黒い「縦縞」に変わるのです。
鰹縞は江戸時代に流行った粋な着物柄
江戸で流行った縞柄の中のヒットデザイン
和服柄の種類の中には鰹縞と呼ばれる縞模様があります。
かつて江戸っ子は初鰹を食べることが粋でいなせな証とされましたが、同じく江戸時代中期以降、この鰹縞も男女問わず、武士にも町民にも着物柄として好まれました。
雅が好まれた平安の貴族の間では、シンプル過ぎる柄はつまらないとされ、縞模様は嫌われていました。
武士の時代になり、シンプルでシャープなデザインの格好よさが見直され、町民文化が成熟した江戸時代、鰹縞の支持が広がりました。
鰹縞はお腹の黒いストライプのことじゃありません
前述の通り
鰹 縞
というとあのお腹の黒いストライプが思い浮かびますが、「鰹縞」はあの黒い線のことではありません。
そこ、お間違えないように。
粋なデザインだともてはやされたのは、暗色から明色へかけて数段階の同系色で作る縞模様です。
鰹の背中からお腹へかけての色合いをイメージさせるため「鰹縞」と呼ばれるようになりました。
暗から明へ順番に並べるだけでなく、ランダムに並べたものも多く、江戸っ子の遊び心がうかがい知れます。
色の境目がはっきり分かれないグラデーションに染めたものは鰹ぼかしと言います。
江戸っ子の粋を表わす代表のような初鰹ですが、鰹の縞というと、あのわかりやすい黒いラインではなく、青光りするからだの美しいグラデーションに注目している所も、並みのセンスではないものを感じます。
死んだ鰹ではなく、泳いでいる時の生き生きした鰹の美しさを柄にするほうが、そりゃあ粋ですよ。
鰹と縞模様の話、なかなか奥深くて面白いです。
生きてる鰹でも、餌を食べてる時とか、繁殖行動でオスがメスを追いかけてる時にも横縞は見られるんや。
まぁ~、泳いでる鰹の縞模様はあんまし見えんけどなぁ~