お盆の今頃、日付で言うと8月12~16日は、暦の七十二候では
寒蝉鳴(ひぐらしなく)
と言います。
実は、ヒグラシが鳴き始めるのは6月後半くらいからの地域が多いのですが、なぜか昔から「秋を感じる」ものの代表のように言われています。
盛夏の頃に多い
- ミンミン蝉
- アブラ蝉
のあまりにもうるさく張り上げるような鳴き声が若干納まってくる立秋以降、控えめにカナカナ・・・
と鳴くヒグラシが目立つのかもしれません。
また、ヒグラシは、朝方や夕方から夜にかけて鳴くので、少しずつ早まっていく夏の日暮れを惜しむかのように、もの悲しく聞こえる気がしてしまうんでしょう。
日本では儚さの象徴・外国では生命力の象徴
風流な“もののあわれ”を体現する日本の蝉
日本では、俗説として
と言われます。
実際には、土の中にいる時間はもっと短いものから長いものまで、種類によって大きく違っています。
そして、成虫の寿命もだいたい1か月弱くらいはあります。
まあ、それでも動物と比べれば短い一生です。
その短い中で力の限り鳴き続け、最後はそのままポトンと落ちてしんでしまう姿が、儚くも潔く感じられるのでしょう。
蝉は、もののあわれに感銘を受ける日本人の美意識を強く揺さぶるものです。
中国では甦りと復活のシンボル
成虫の生き様に着目し、儚いからこそ美しいという美的感覚で見る日本人とは逆に、中国では、幼虫期の長さと土から這い出てきて飛び立つところに着目し、大昔から蝉は
再生と復活
のシンボルとされてきました。
儚いというより、むしろ生命力の強さを感じる生き物であるようです。
また、古代絶世の美女と言われた斎王の后は、生まれ変わって蝉になったという伝説もあり、そこから蝉は永遠の美の象徴ともされています。
中国では、蝉は縁起物として尊ばれ、翡翠や金属でつくられた蝉の工芸品・装飾品が今も多くあります。
ヨーロッパではラッキーシンボル
日本では夏の風景を表わしたり、秋の情感を高めるのに蝉の効果音が好まれますが、欧米人には蝉の声はノイズと受け止められているので、いてもあまり気にされない、という傾向もあります。
そのため、ヨーロッパでは蝉はとても珍しい虫です。
フランスのプロバンス地方では、中国人のように長く生きる生命力にもあやかって、「幸運を呼ぶ虫」という扱いをされています。
アクセサリーのモチーフにもよくなり、ラッキーアイテムとして蝉デザインのものを身に着ける人も多く、お守りなど蝉の姿のお土産品もいろいろあります。
北米の周期蝉は十数年に一度のお祭アイテム
アメリカ大陸には、ヨーロッパよりはたくさん蝉がいるので、蝉のガンガンないている林の音など聞くと、
という反応の人もそこそこいます。
北米大陸東部にだけ見られる
周期蝉
というのも有名です。
17年もしくは13年に1回、時季もぴったり同じくして、恐ろしく大量に蝉が発生するのです。
大発生の年には、町中が蝉まつりのように大騒ぎし、あえて体験しにいく観光客もいれば、あまりに大量すぎるので、この年にはお菓子や料理にも蝉を使ったモノが多数出現します。
17年蝉のチョコレートがけがたくさん飾られたケーキとか・・・・
抜け殻は縁起がいいとされてきた日本
鳴き声にもののあわれを感じてしまう日本人は、蝉といわず昆虫の姿に関しては、ちょっとグロテスクに感じる傾向があり、欧米や中国ほど蝉のアクセサリーなどは出回っていません。
が、一方で
という話はとても良く聞きます。
理由ははっきりとはわかりませんが、木の枝や家の壁などに引っ掛かったまま落ちずにくっついている抜け殻は、受験生に特に喜ばれます。
また、日本では昔から
などと言われていたので、抜け殻つながりで蝉も縁起物になったのかもしれません。
儚さに注目しているように見える日本人ですが、繁殖のために目一杯鳴いて短い命を追えていく蝉を見て、
自然の無常観
と力強さもしみじみと感じています。
そこがまた、わびさびともののあわれに繋がるのですが・・・。
決して縁起悪いものではない気がします。
でも
永遠の美
は、ちょっとピンとこないかもしれませんね・・・・・蝉さん、ごめんなさい
田舎に住んどったら蝉の声って、ホンマにうるさいやなぁ~
でも、大人になって都会に出て行ったら、ちょっと蝉の声が恋しくなってくる事もあるな。