政治・経済

棄権や白票は政治を良くするための意見表明になるなんて嘘だよ

Written by すずき大和

今年は4年に1回の統一地方選挙の年です。

4月、まさに全国のあちこちが選挙の話題に溢れかえっています。

知事選や都道府県議会議員・市区町村議員選は、私たちの暮しに直接関わってくる、目に見える事業や政策についての選択をする実感が強いと思われます。

が、投票率が上がったり下がったりしている「国政選挙」と違い、「地方選の投票率」は普通選挙が始まって以来、ずっとまっすぐに下がり続けています。

2014年は全国平均でだいたい「50%」でした。



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選挙に行かない人の行かない理由

「行けない」より「行かない」人の方が多い

20代・30代の棄権率は特に高く、各種のアンケート調査を見ると、

「選挙は個人の自由だから、行かなくてもいい」

と考える人の割合が、他の年代よりも高くなっています。

そして、行かなかった人にその理由を尋ねる調査では、

  • 忙しい
  • 投票所が遠い
  • 住民票が実家のまま

など、“行けない”理由をあげる人が1/3強いました。

しかし、それにも増して多かったのは、

  • どの党にも候補者にも期待していないから
  • よくわからないから・不勉強だから
  • 投票してもしなくても何も変わらないから
  • 自分に関係がないから・若者には関係がないから

など、“行かない”理由でした。

“行けない”理由の中味も、その気になれば、期日前投票を利用するなどして解決することもできそうです。

が、あえてそんなことをする気持ちはない様子なので、“行かない”類に入るのかもしれません。

全体的に無気力感を選挙や政治そのものに抱いている印象を受けます。

あえて行かない選択をする人の理由

中に、少数派意見として、無気力感からではなく

「あえて行かないことで政治的な意見を表明しようとする人」

がいました。

これは、上の年代の行かない人の中にも若干見られる考え方です。

彼らの主張は、

  • 誰も投票したい人がいない
  • 今の政治のやり方に賛成していない

という意思を棄権することで表わしている、というものです。

そこまで積極的な意図はなくとも、棄権することは「誰も支持していない」ことを意味すると思っている人は、どの年代の行かない人の中にも見られます。

白票で政治を変えよう、と主張したサイト

2014年の衆議院議員選挙の最中、突然正体不明のグループが「選挙での白紙投票を呼び掛ける」謎のサイトを立ち上げ、SNSなどを通じてネット内にその宣伝をばら撒きました。

「mirai-senkyo.com」というドメインで配信されているそのサイトの制作者は「日本未来ネットワーク」と名乗っています。


「黙ってないでNO!と言おう」というキャッチコピーで始まるこの宣伝は、

「投票所に行って、何も書かない『白票』を投じるのは、投票したい立候補がいないという意思表示です。その1票にも、今の社会を変える力があります。」

と、白紙投票が当選者の政策に圧力をかける力になることを謳っています。

棄権や白票によって表明されるのは、政治不信じゃない

白紙投票する人が増えても、当選者は何も気にしない

日本未来ネットワークが謳っている言葉は、奇弁です。

2014年3月に行われた大阪市長選挙では次点の候補者の得票よりも多い白票が投じられました。

しかし、当選した橋下徹氏は「白票が多かったのはメディアの責任だ」と言い切り、自らへの不信任・責任という受け止め方は全くしていません。

当然政策の大きな変更も全くありませんでした。

棄権や白票は、当選者のやり方を勢い付かせるだけ

実際の国政選挙や地方選挙の際、白票はその他の無効票と一緒に扱われるだけです。選挙にいかない棄権と、もたらす影響は何ら変わりません。

棄権も白票も、当選者の得票割合(有効票の中のどれくらいの人から支持されているのか)の数字を高くします。

100人の村で、9人が同じ候補に投票し、1人だけ別の候補に投票し、残り90人は棄権か白票だったとします。

この場合、当選者は

「9割の人に支持されて当選した」

ことになります。

本当は90%の村民は支持していないにも関わらず、「圧倒的多数の支持をうけて誕生した政治家」は、大手を振って、自分のやりたい政策を「90%の村民に支持されて選ばれた」自負心を持ってやり通すでしょう。

2014年の衆議院選では、史上最低の投票率で、与党が圧勝する結果になりました。

それを受けて、安倍政権の政策の強硬姿勢は選挙前よりも強引で手段を選ばないものになっていきました。

棄権は、現政権への抗議にもブレーキにもなりはしません。むしろ、政権の独裁的な暴走を促してしまう効果のほうが大きいかもしれないのです。

棄権や白票が表明する意思とは、当選者への無条件の支持

組織票など持っている強い与党の候補者から見ると、棄権や白票が多くなるほど当選しやすくなります。

かつて、森首相が選挙戦に関する発言の中で

「無党派層は寝ていてくれればいい」

と本音を漏らして非難される、という事態もありました。

棄権や白紙投票を行うことは、「誰も支持しない」ことの表明でも、現政治への抗議でもありません。

むしろ、1位の得票が見込まれる候補者のやることを総べて無条件に支持することになってしまうのです。

「NO!」と言うどころか、強力な与党の誕生を「YES!」と言うのに等しいこと、と言えるでしょう。

投票したいと思う候補者がいない、という人へ

気に入らないから何も選ばないままでいられるのか?

今着ている服がボロボロで着られなくなっても、売っている服に気に入るものがなかったら、何も買わずにいられるでしょうか。

全幅の信頼がおける魅力ある取引先がないから、どことも何も取引しないで会社を立ち行かせることができるでしょうか。

嫌なら何もしないで止めてしまうことができることなら、支持したい選択肢がないうちは、放っておくこともできるでしょう。

しかし、社会の営みは一瞬たりとも静止することはありません。

  • 水道をひねれば水が出て、
  • 行きたい所があれば電車やバスに乗れて、
  • 自分で水車やダムを作らなくても、誰かが発電してくれた電気を買うことができて、
  • 自分で畑を作ったり家畜をかわなくても、誰かが作った野菜や肉を食べることができて、
  • 自分で機織りしたり糸をつむいだりしなくても、誰かが作った服を着ることができて、
  • ゴミを自分で焼いたり埋めたりしなくても、まとめてもっていってもらえる・・・・・

これらは全て、社会が毎日回っているからこそ可能なことです。

社会を回す仕組みを作って、予算をつけて、日々運営できているのは、政治が機能しているおかげです。

誰も入れたい人がいないから、と皆が誰にも投票せず、政治家が一人も生まれない社会になってしまったら、社会は崩壊してしまいます。

今ある選択肢をどう選んで未来につなげるかを考える

100%気に入る選択肢がなくても、今ある選択肢の中で何をどう選んでいけば、より自分の求めるものへと近づいていけるのか、一生懸命考えながら選び、選んだものを活用しながら生きていくのが大人ってものです。

「誰を選んでも同じ」という人、本当に誰でも同じ政治をするのか?

候補者ひとりひとりがやろうとしていることは、本当に誰でも同じなのか?

社会の恩恵の中で生きていくのならば、選択肢を選ぶことから逃げ続けることはできません。

どうか「与党の楽勝を促す陰謀?!」のようなサイトの言葉にだまされたりすることなく、ちゃんと考えて選ぶ行動に踏み出してください。

まさケロンのひとこと

まずは今ある選択肢を考えて、みんなでこれからの社会をカタチにしていこう!

masakeron-love


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。