年度末、年度始めというと、総会と年会費徴収がつきものです。
戸建てやマンション住まいの人は、
「町会」とか「マンション自治会」
から、そんなお知らせがきたことはありませんか?
お店をやっている人は
「商店会総会」
があるかもしれません。
経営者の人には、
「○○振興組合」とか「××連合会」
など、業界組織からの通知もあるでしょう。
子どもがいる人は、
「PTA総会」
なんていうのもあります。
趣味のサークルやファンクラブ活動、子ども会などのボランティア活動をする人も多いです。参加費が活動費に充てられる団体は、総会で事業内容や予算や役員を決めています。
月毎の町会費や参加費も、年度始めに1年分徴収する例も多いので、人よってはこの時期物入りになっているかもしれません。
会計年度はどうやってできあがったか
決算は信用のもと
どんなに立派な目的を持った会でも、会計がいい加減だと、あまり関わりたくないと思うのが自然です。決まった期間ごとに収支決算をちゃんとすることは、ちゃんとした組織であることの最低限の証です。
納税義務のある企業がちゃんと決算するのは当たり前ですが、小さな趣味の会であっても、お金の流れをきちんとし、活動内容も明確にする決算書は、会の内容を世間に説明するものであり、運営の健全さ映す鏡となる大事なものです。
1年単位の会計期間
会計期間が1年単位なのは、
課税のシステム
に関係しています。古代から、年貢は収穫サイクルに合わせて1年単位で納めていました。
中世の商家の決算は、もっと短いサイクル(毎月、毎日)でまとめられていました。現在も上場企業には四半期ごと、半年ごとの中間決算報告がルールになっています。商売の流れは短いサイクルで変動するので、マメに業態チェックする必要があります。
商人も納税する時代には、1年単位の決算報告を申告するための会計システムも必要になりました。現代の株式会社は、株主総会での報告義務も背負っています。
3月決算の理由
決算月をいつにするかを規制する法はありません。いつから新年度にしても自由です。しかし、現実は、
3月決算、4月新年度
の組織が圧倒的です。
官公庁と産業界の決算が3月であるのは、
納税額が確定するのが3月なので、4月スタートの予算編成が合理的
というのが一つの理由です。
また、かつて、株主総会に出席して審議を妨害したり、進行を煽ったりすることで、企業からお金をせしめていた「総会屋」と呼ばれる小口株主たち(多くは暴力団)が、横行していた時代がありました。
総会屋が集中しないよう、90%以上の企業が6月末日の同じ日に一斉に株主総会を開いていました。株主総会は決算月の3か月後なので、必然的に、3月決算の企業がたくさんありました。
上場していない小さな会社も、取引先に合わせて3月決算にしました。
新卒で一斉就職する慣行の日本では、大学以下の教育期間も企業に連動しました。
非営利団体も、3月決算の利点のあるなしに関係なく、世の中の流れに合わせて、なんでも4月始まりになっていきました。
3月決算は本当に合理的なのか
株主総会の変化
現在、暴力団締め出しの社会機運と法律が進み、総会屋は姿を消しつつあります。企業は、総会屋対策の必要がなくなり、自社都合に合わせて会計年度を分散させるようになってきました。
- 海外の取引先に決算期を合わせる
- 決算書作成時期と繁盛期をずらす
- ボーナス月など出費の多い時期に納税時期を重ねない
- 収入のシーズン差が大きい会社は、決算期に黒字になるようにする
などの都合を加味し、合理的な決算月を定める会社が増えています。2016年には、3月決算は全体の7割にまで減っています。
恒例を崩さないNPO
利益追求を目的に活動する企業は、合理的に変化していくことに躊躇しませんが、多くの非営利活動団体(NPO)は、3月決算に具体的根拠がないにも関わらず、それを変えようという気配はありません。
しかし、3月決算4月総会には、『不便な一面』もあります。
民主的でない総会
町おこしイベント運営など、公的助成金の比率の高い活動の場合、行政予算の確定した年度明けに総会をして、一般会員から意見が出ても、既に事業案と助成金額が決定しているので、
今更何も変えられない、
という状況がよく見られます。
行政の予算案編成期に、組織の執行部だけで決めた事業案と助成金要望書が出されてしまう会も多く、総会は上の通達を承認するだけの会(シャンシャン総会といいます)にすぎなくなっています。
株主総会もそうですが、資金出しているだけの株主と違い、NPOは一般会員が事業の現場を担っているので、総会でしか会員の意見を聞く場がないのであれば、予算案決定前に総会を開いて事業の要望をまとめるのが、民主的な運営というものです。
が、日本は「和を重んじる」文化なので、みんながワーワー討論するより、リーダーにお任せして上意下達する「全体主義的」進め方にするほうがスマートであり、それを支えるのは日本人の優れた「協調性」だ、と考える人もいます。
上にお任せするほうが、個々の会員の責任も軽くていい、という人もいるでしょう。
会費負担は馬鹿にならない
責任の追い方や会員の参画の問題はさておき、若い人の地域活動離れが進み、未来の人材育成問題が深刻な昨今、年会費負担を和らげるための総会の分散も、一考に値する気もします。
ふつうにお金がギリギリの人だってけっこういると思うんだけど、そこでさらに年会費のパンチきたらそりゃダメージでかいよね。