人類が貨幣経済のしくみを作ってから数千年、21世紀の今、「お金」の形が飛躍的に変化しています。いわゆる
「キャッシュレス決済」
という方向に、世の中は進んでいるようです。
そうはいっても、なかなか現金払いから脱せない人もまだまだいます。この先、キャッシュレスにしないと、時代に遅れてしまうのでしょうか。
キャッシュレスにするとどんないいことがあるの?
日本ではキャッシュレス化が遅れている?
日本は、キャッシュレス化が遅れているといわれています。海外からの観光客やビジネス誘致、労働力導入を拡大したい政府は、国際標準に並ぶようキャッシュレス化促進の方針です。
高額買い物のクレジットカード利用率は、日本もそんなに国際平均と変わりません。差がついているのは、日常的な少額買い物でのキャッシュレス化です。
海外の人が日常的な支払いによく使っているのは、
- カード式の「電子マネー」
- スマホによる「コード決済」
- 銀行発行の「デビットカード」
などなど。政府が奨励するのも、こういう比較的新しいツールです。
キャッシュレス化のメリット
1,消費者からみたメリット
キャッシュレス化の宣伝啓発の一番の“推し”といえば、使う人視点でのメリットです。
- レジでピッとする方式は、会計が簡単で早い
- ATMまでいかなくていい。チャージが必要な場合はレジでもスマホ操作でもできる
- 紛失・盗難も、現金よりはされにくい。されても、ある程度の保障が利く
- キャッシュレス買い物が日常化すると、会計履歴がそのまま家計簿になる
- 別途ポイントカード作らなくても、買い物すれば自然にポイントが付く
日本人の中には、電子マネー等は
「面倒臭い」
「使い方を覚えるのが難しい」
と思い込んでいる人も多いのですが、カードやアプリを入手する手続きさえクリアすれば、レジでの使い勝手は、簡単で安全でラクになるものがほとんどです。
2,お店側のメリット
- 会計時、偽札詐欺やお釣りの間違いがない
- レジでピッ方式が増えると、無人レジ化も進めやすい=人件費の節約になる
消費者がキャッシュレス化をもっと望めば、現金のみ取り扱い店舗より集客効果も高まるでしょう。ただし、今のところはまだそれほど効果はないようです。
むしろ、レジシステムの導入などの初期投資が大きく、キャッシュレスツールを扱う会社に払う手数料もバカになりません。売り上げが実際に収入になるまでにタイムラグが生じるなど、店としては、今はまだデメリットのほうが大きいかもしれません。
3,社会的なメリット
消費者が高額現金を持ち歩かなくなることで、盗難・紛失のリスクが減ることは、社会的なメリットでもあります。
それだけでなく、
“お金のやり取りデータが残ることで、不透明なお金の流れが可視化する”
という点において、国家機構としてのメリットがあります。政府が推奨する本当の理由もそこにあります。
- どんな人がいつどんなお金の使い方をしたか、ビッグデータが収集できる
- 経済情報が可視化されることで、不正や脱税がしにくくなる
ビックデータは、国民のニーズに即した公平な政策を健全に進める上で、役に立つ情報となります。
キャッシュレス化が進まないのはなぜ?
使える店が限定される
キャッシュレス決済は、店側にそれをこなせるシステムがないと使えません。急激に増えている電子マネーやスマホ決済は、それぞれ使える場所が限られます。
都市部では、日常利用のコンビニ、スーパー、ドラッグストア、飲食店など、どこでもだいたい使える電子マネー(首都圏のSuicaなど)もありますが、小さな町に行くと、そもそもキャッシュレス化に対応していない店舗のほうが多いケースもまだまだあります。
スマホのコード決済は、都市部でも使える店と使えない店が、複雑に混在しています。アブリをダウンロードしても、使う店は限定し、日常的に現金と併用している人がほとんどです。
キャッシュレス払いが普通にならないと、履歴による家計簿管理などの利点は望めません。よく使う店がキャッシュレス対応していなければ、わざわざ電子マネーを持とうとは思いません。
現金払いのほうが便利でお得な現状
前述の通り、店側は、キャッシュレス決済が一般化しないうちは、デメリットのほうが大きいです。現金払いの方が嬉しいから、現金払いが得するポイントカード制度が浸透しているのです。
- 使える店が増えないから、キャッシュレス化が進まない
- キャッシュレス化が進まないから、店はキャッシュレス対応しない
- そして、今はまだ現金払いのほうが特典が多い店が多い
この相乗効果が、日本でキャッシュレス化が進まない大きな要因です。
政府は、本気でキャッシュレス化を進めたいならば、
“キャッシュレスにすると店舗がとっても得する”
仕掛けが必要でしょう。
「現金払いのポイント還元10%」
が日常化している大型店舗もある中、消費税アップに伴う景気対策に
「小・中規模店でのキャッシュレスは2%か5%のポイント還元」
程度の政策では、参加店舗の負担を増やすだけで終わっちゃいます。
ということで、冒頭「キャッシュレス化していかないといけないんですか?」の答えは、
「今はまだ様子見で大丈夫」
「必要性を感じるタイミングは、キャッシュレス化の社会浸透次第」
というところですね。
とりあえずは、気が向いたらやってみるっていう感じでいいのかな~。