政治・経済 未来創造

「なんとなく嫌」の感情で選択する未来はどこにつながる?

Written by すずき大和

人間は、地球上で最も知性的な生物です。「知性」とは、

“物事を知り、考え、判断する能力”

のことです。知識を学び、情報を整理して把握し、正しい行動を判断する能力の高さにおいて、人類は他の生物の比ではありません。

しかし、実際には、人間というものは、いつでも論理的に正しいこと、より合理的なことを選ぶわけではありません。論理より、感情や一時的な衝動によって判断してしまうことが、とてもたくさんあります。

論理的に答えを探すより、感情的に判断する方がずっと“楽(らく)”ですから。



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感情が重視される社会って気持ちいい?

「エモい」と「いいね」

2018年、思春期世代向けの某ネットサイトで「10代女子が選ぶ流行語」の1位に

『エモい』

が選ばれました。「emotional エモーショナル」の「エモ」いです。

“感情的になる”
“グッとくる”

という心境を表す形容詞です。

ちょっと前の「やばい」と同じニュアンスかな・・・

SNSの投稿に「いいね」をもらうことが、日々の行動の選択に大きな影響を与える時代、若者に限らず、社会全体的に、

「感情的に共感できること」

が重視される傾向が強くなっているといわれています。

共感力って大事だよね

感情が論理より優先されることが“楽”を選んだ結果なら、社会全体で感情が重要視される傾向がどんどん進むことは、一方で、

“人々の思考停止が進んでいる状態”

ともいえます。

そんな社会で求められるのは、論理的な思考ではなく

「共感力」

です。いわゆる

「空気を読む」
「忖度(そんたく)できる」

人が喜ばれ、言葉で理解し合おうとすることは「面倒くさい」無粋な行為として、なんとなく忌避されるようになります。

その選択、印象操作されてない?

そうなると、他者を説得したい人は、合理的な説明ではなく、「エモい」ツボを刺激する誘導作戦を率先して使うようになります。イメージの良い話ばかりしたり、人がつい気持ちを向けてしまう仕掛けをしたりすることで、知らず知らずのうちにそれを選ぶ人を増やすことができます。

「印象操作」ってやつですね。

共感を判断基準にすることで何が起きるか

本当に怖いことは最初人気者の顔をしてやってくる

小見出しのフレーズは、かつて小泉政権時代に社民党がCMに使ったキャッチコピーです。

耳障り良く感情に訴えるプロパガンダによって、一斉に支持を集め、人々が共感に酔って思考停止している間に、国民の望む社会ではなく、権力者が実現したい理想の社会に作り変えてしまうやり方は、近代、全体主義や独裁を目指す政権が使った常套手段でした。

“感情的な共感を頼りに判断し、正しい実情の把握と論理的な熟慮を面倒くさがっていると、政権に逆らうことができない社会になってしまうよ”

という警告を示唆した言葉と取られ、当時、小泉首相を独裁者呼ばわりするのか!的な物議をかもしました。

怖いことはなぜやってくる?

感情重視社会が全体主義を呼び込む最大の理由は、社会を分断してしまうからです。

世の中には様々な価値観や境遇の人がいます。みんなが平和で幸せに暮らせる社会を作るには、判断が異なる人たちと、共に尊重し合い共存することが大事です。どちらかが一方を従えるのではなく、“win-win”の関係を築く選択が求められます。

それには、お互いを理解し、双方の妥協点を見つけるまで、とことん話し合うことが必要です。

面倒くさい議論が嫌われる社会では、対立する相手と共存するのではなく、排除することで解決を図ろうとします。周りが共感できる人だけなら、物事は楽に決められます。

排除を目指す人は、相手を批判し、罵倒し、対立を深めようとします。議論は、相手を理解し妥協点を見つけるためではなく、自分の選択に都合よい理屈を見つけるために行うものとなり、強引な理由付けや事実の隠蔽・ねつ造を産むこともあります。

相手を批判することがイヤ

批判することを気持ち良いと感じる人は、率先して感情的に相手を叩くことにのめり込みます。が、多くの人は対立や罵り合いは不快と感じます。

感情優先社会では、何事も、波風たてずに穏便に忖度することが好まれます。相手を批判する人に対しては、その批判の内容が正しくてもそうでなくても、

“相手を批判することそのものが、なんとなく嫌い”

という反応をする人が増えます。

「与党の批判ばっかりしてるのがイヤ」

という理由で野党を嫌う若者が多いことは、感情重視社会と無関係ではありません。

権威主義の刷り込み

また、現政権は、目上の者を敬い、忖度する態度を美しい伝統と考えています。義務教育の道徳では、個人はそれを囲む地域や組織の集団、ひいては国家の一部であることが強調されています。それは、権威や権力のある者は無条件に敬うこと良しとする価値観を刷り込む効果もあります。

政権を批判する芸能人に対し、批判の中身に関係なく、

「芸能人の分際で政権批判するな」

とバッシングが起きるのも、力のある者に抗うことへの社会の嫌悪感の表れのひとつです。

権力の批判を嫌悪し、忖度して取り入ることが正しい処世術と考えることを

「権威主義」

といいます。歴史に学ぶならば、権威主義が浸透した後に訪れるのは、全体主義社会です。

全体主義社会で、思考停止して生きることは、楽かもしれません。

が、楽の先にある未来は幸せな社会だと、あなたは本当に思いますか?

まさケロンのひとこと

なんでもかんでも「エモい」で片付けちゃうのはよくないよね。楽しすぎ!
「エモい」そう感じた理由を説明できればおっけーさ!
え?説明できないから使ってるんだって・・・?

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。