「ネス湖のネッシー」や「ヒマラヤのイエティ(雪男)」など、目撃情報などが多数確認されながら未だにその存在がはっきりと確認されていない未知の動物のことを
UMA[ユーマ]
といいます。
この手の“伝説の生き物”の類の話は世界中にあり、日本でも河童や天狗などの怪しげな生き物伝説がたくさんあります。
オランダのライデン国立民族学博物館やイギリスの大英博物館には、中世に日本から輸入された「人魚のミイラ」が今も所蔵されています。
江戸時代後期、日本から人魚や河童のミイラが、オランダを通じて実にたくさんヨーロッパに輸出されていました。
ニセモノも本物も入り乱れたUMAの世界
UMAの画像の多くはフェイク品
UMAというのは、実在が確認されていなくとも、目撃談や残留品の物証があり、実在が推定される生物です。
中には未発見の新種の生物も含まれていると思われ、ちゃんと学問として研究されています。
死骸が発見され、それが未知の種として生存しているものと確認できれば、新種の発見となります。
が、実際変な形態の見たこともない死骸が発見されても、新種の生物と確認されることは少ないです。
ネットで検索すると、世界中でたくさんの変な生き物の死骸が発見されており、UMAとして画像が広まっています。が、多くが、いわば勘違いかニセモノの類です。
- 何かの種の突然変異や奇形
- 動物の死骸が棄損してグロテスクな状態になったもの
- もしくは、作られた工芸品
という場合がほとんどです。
UMA作品はひとつのアートジャンルになっている
UMAはショッキングで話題性のあるものなので、ねつ像写真を発表して注目を集めようとするやからが後を絶たないのは確かです。
ニセモノを作る人は、売名行為というより、ジョークやイタズラのつもりでやっていることが多いようです。
また、アートとしてそういうものを作るのが好きな人たちもいます。
半魚人や宇宙人のような死骸の多くが、そうした作り物と考えられ、実際学問としてUMAを扱っている人たちの対象にはされていません。
が、未知なものへの浪漫を感じ、グロテスクなもの怖いもの見たさの魅力が大好きな人たちには、そんなフェイクの世界の話題も混ぜこぜに並べられたUMA特集がとても好まれます。
UMAアートもそんな人たちの中から生まれ、支えられているマニアな世界です。
中世の日本は世界一のUMAミイラ生産国
UMAのフェイク品の中には、人工的に作られた“ミイラ”が多く見られます。
複数の動物の死骸を組み合わせて作られる、ハイブリットミイラの技術において、実は、中世の日本は世界的に高いレベルを誇っていました。
江戸時代に輸出されていた人魚や河童は、日本のミイラ職人が作っていた工芸品だったのです。
輸出品ミイラは、欧州の珍品マニアの人気商品でした。
人工的に作られたミイラというと、古代エジプトのミイラが有名です。
が、日本でも、実は昔から動物のUMAミイラが作られていたことがわかっています。
輸出されたのは人魚と河童が多いですが、龍や鬼や天狗のミイラも国内外に複数残っています。
古いものは戦国時代以前に作られたと推定されます。
ミイラとなった日本のUMAは信仰の対象
ミイラに霊力を感じた日本人
日本に残るこれらのUMAミイラの多くは、神様信仰のご神体(守り神)として崇められ大事に祀られてきた、もしくはお寺で供養され続けているものが多いです。
エジプトの人間のミイラは、あまりにその数が多かったせいか、長い歴史の中で、燃料や薬の材料にされた時代もあり、死者として弔うべき対象にすらされてこなかった面もあります。
一方、日本のミイラは、何かしらの霊的な力が宿るものと受け止められていたようです。
中世の中国や日本では、仏教の究極の修行として、ついには生きたままミイラになった僧侶までいました。
人魚のミイラは不老長寿の守り神
日本の神社等で祀られているUMAミイラの中には、現代になって科学的分析がされ、それが作り物であると判明しているものが沢山あります。
最初から、江戸時代の工芸品と推測されていたものもあります。が、それでもちゃんと守り神として祀られています。
もともと河童や天狗や鬼などは、守り神様として扱われてきた伝説もあるので、作り物のミイラも人が作った仏像同様、有難いものであることに変わりはないのかもしれません。
人魚のミイラも、高野山の麓の西光寺では、不老長寿や無病息災を願う人々の信仰の対象となっています。
福岡の博多にある浄土宗の龍宮寺では、鎌倉時代に博多津に打ちあがった人魚の遺体を「国家長久の瑞兆(吉兆)」として、境内に埋葬して人魚塚を作りました。
今も本堂内には人魚の骨が安置されています。
日本独特の人魚伝説
世界的には、どちらかというと縁起が悪い人魚
人魚伝説は、大昔から世界のあちこちに残されています。
西洋では、海の妖精として伝わるものもありますが、歌声で船を惹きつけ難破させてしまう悪い妖怪のような伝説も多く、災いの兆しとして、縁起悪いもの扱いされることが多いです。
東洋でも、人魚が漁師の網に捕まってあがると、津波や自然災害がくる、という伝説が多くあります。
日本の人魚伝説では、捕まった人魚が命乞いをするのに
と漁師に告げる話が多いです。
海に放してやると、本当に人魚がいった通りに(たいていは数日後)津波がやってきて、漁師の話を信じて高台に逃げた人は助かります。
そこから「漁で人魚が上がると津波がくる」といわれるようになりました。
人魚の肉は不老不死の薬
縁起悪い扱いにも関わらず、一方で信仰対象にもなったのは、日本独特の伝説として、
という話が多く残っているためです。
人魚を食べ800歳まで生きた「八尾比丘尼[やおびくに]」の伝説は日本各地にあります。
人魚を食べるという発想は、西洋の人魚伝説にはあまり見られません。
日本では平安時代以前から、人魚肉が不老不死である、という記録が見られます。
また、「漁師の網にかかってあげられる」という設定が多いのも日本の人魚の特徴です。
そのため、日本の人魚は本当に捕まって、本当に食べられた生物に由来している、と考えられています。
人魚として食べられていたものの正体
西洋では人魚とはデュゴンの見間違えではないか、という説がありますが、日本ではアザラシやオットセイやイルカではなかったかと思われます。
日本の昔の人魚の想像図は、頭だけ人間の魚(人面魚)のようなものでした。
つぶらな瞳の目が前についているアザラシやオットセイが人魚といわれた可能性は高く、肉が食べられたというのもうなづけます。
やがて、西洋文化が入ってくると、伝説の人魚もいつの間にか上半身人間下タイプの絵に変わっていき、それを元に作ったミイラは、猿と鮭や鯉などの魚のハイブリット作品でした。
人魚のミイラを買っていった西洋人が「日本人はこれを食べた」と聞いたら、さぞびっくりしたでしょうね。
つぶらな瞳のまさケロンは人魚に間違われるかも。あ、まさケロンの肉はおいしくないよ!