お酒の豆知識

夏はビールより日本酒!初心者のための「燗・冷や・冷酒」講座

Written by すずき大和

夏です。汗水流して一生懸命仕事した後に飲む、キンキンに冷やしたビールが美味しい季節です。

とはいえ、利尿効果の強いビールは身体の中の水分をどんどん出してしまうので、気を付けないと脱水症状になってしまう!というのはよく聞く話です。

ビールとは別にちゃんと水分補給も・・・といわれても、ビール飲む前に水飲んでしまうと、せっかくのビールの美味しさが半減してしまいます。

ここはひとつ、まずはスポーツドリンクなど飲んでたっぷり水分補給してから、キリッとした口あたりの冷酒で、ゆっくり夏の夜の宴を楽しむ、というのはいかがでしょうか。



スポンサーリンク

冷たくても温めても、そのまま常温でも、美味しい日本酒

温度が変わると呼び名も変わる

ワインやビールなど、美味しい温度の定説があって、常に一番美味しい温度で提供できるように、気を使われるお酒はたくさんありますが、日本酒は、日常的にとても幅広い温度帯で飲まれています。

それぞれの温度によって、風味の特徴が変わり、料理やシチュエーションに合わせて、同じお酒を冷やしたり温めたりして飲む、というのは、世界でも珍しい酒文化です。

温度によって、呼び方も変わってきます。大きく分けると、以下3つに分類されます。

  • 冷や酒[ひやざけ]:常温(18~28℃くらい)
  • 冷酒[れいしゅ]:冷やしたもの(5~15℃くらい)
  • 燗酒[かんざけ]:温めたもの(30℃以上)

冷や酒と冷酒は、本当は別もの

日本酒が好きな人たちには、「冷や酒」は常温のお酒のことだというのは常識なのですが、あまり日本酒を日常的にたしなむことが少ない若い人たちの中には、“冷”の字を見ると

“つめたく冷やしたお酒”

をイメージしてしまう人が少なくないようです。

実際、全国チェーンの居酒屋など、若者や外国人留学生らのアルバイト従業員がほとんどのお店では、日本酒の保存を冷蔵庫内でしている場合が多く、「冷や」と頼んでも、冷蔵庫温度の冷酒しかだしてくれない所はたくさんあります。

当然、バイトくんに

「いや、冷やで欲しいんだけど・・・」

なんていってみたところで意味が通じず、「???」という反応になってしまうのがオチです。

昔は冷蔵庫が各家庭にあったわけではなく、氷も簡単に手に入りませんでしたから、食べ物を冷たくして食べることは希少でした。

冬場に雪室で保存することはありましたが、夏は井戸や川でスイカやキュウリを冷やすのがせいぜいでした。

酒や水や蕎麦は常温か温めるかのどちらかで供されましたから、温か冷かの区別でいえば、

  • 「冷や酒」
  • 「冷や水」
  • 「冷やし蕎麦」

これらすべて常温のものを指したのです。

それでも常温にこだわる!

「冷酒」が居酒屋で普通に出されるようになったのは、戦後、冷蔵庫が普及した高度経済成長期以後のことです。

長い長い日本酒文化の中では、冷やして飲む習慣は、実は物凄く歴史が浅いのです。

冷蔵庫がなかった時は常温で仕方ないけれど、今は冷たく冷やせるんだから、「燗酒」「冷酒」のどちらかでいいんじゃない?と思うかもしれません。

「冷や」なんて紛らわしい言葉はこの際死語でも支障なさそう・・・水だってジュースだって、昔は常温で飲んでいたのが、今はお客さんには冷やして出すのが普通になってるし・・・・と、考えても、ある意味不思議はありません。

そう思う人が多いから、実際問題、日本酒は冷蔵庫保存の居酒屋さんが増えているわけでしょう。

が、そう単純にはいかないのが、日本酒文化の奥深い所です。

ジュースは冷たくした方が美味しいかもしれませんが、日本酒は冷たい方が美味しい、とは限らないのです。むしろ、日本酒党を自負する人たちの間では、

お酒そのものの風味や味わいが一番引き立つのは常温で飲む「冷や酒」

というのが、常識となっており、「冷や」「冷酒」かの違いはすごく大きな問題です。

まあでも、これは主観の問題であり、居酒屋で冷酒しか飲んだことがない世代の人たちの中には、冷たくされてない常温の酒を出されると、

「ぬるくて美味しくないじゃないか!」

と思う人だっている時代になったのも確かです。

そんなこんなで、違いを大事にするお店では、常温と冷蔵庫保管の両方を用意して、「冷や」と注文する人には、一応冷たくしたものか常温か聞いてくれる所も多いです。

温度が違うと何が違う?

日本酒に慣れない人は冷酒が飲みやすい

日本酒の風味が一番よくわかるのは常温、というのは当たっています。

この温度帯だと一番雑味が少なく、余計な刺激もないので、微妙な味わいがわかりやすいといえます。

また、料理の味を邪魔しない温度でもあります。お酒の旨さを堪能したい人がこだわりたくなるものは確かにあるのです。

温度を15℃以下にさげていくと、味わいはわかりにくくなりますが、独特の酒臭さが抑えられ、米本来の芳香だけが残るようになり、のどごしがよくなって飲みやすくなります。

さらっとした味わいの吟醸酒は、更に爽快な舌触りになるでしょう。

新酒の香が残る生酒や生貯蔵酒も、冷やすと更に香よくなって飲みやすいです。

ただ、ビールのように10℃以下までキンキンに冷やし過ぎると、味わいがほとんどわからずのどごしばっかりになる感じです。

うんと暑い日はこれも美味しいかもしれませんが、このくらい冷やす時はすっきりさらさらなタイプより、ちょっととろっとした本醸造酒などのほうが柔らかい口当たりで美味しいでしょう。

酎ハイなど飲んでいた人が、最初に日本酒を飲み始めるなら、吟醸酒や大吟醸酒などを12~15℃くらいに冷やした冷酒から入ると馴染みやすいです。

大人同士のサシ呑みなら、やっぱり燗酒

一方、温めた時の風味はどうなるのでしょうか。

もともと昔からの定番の日本酒の飲み方は「燗酒」です。

温度が高いほうがアルコールの吸収が早く、早く酔いが回りやすいので、一献かわしながら気持ちよ~くなる感じを楽しむ時は、35~45℃くらいのややぬるめの燗が、一番雰囲気がありますね。

15~30℃くらいの範囲では、酒の温度が上がっていくほど苦味が減り、甘味が増す感じがしてきます。

30℃は、一番ぬるめの燗酒の温度です。

35℃以上になってくると、“キレ”が良くなってきます。

日本酒を飲まない人にどう説明したらいいのか・・・・・甘味が増すだけでなく、気持ちよい辛口が感じられるようになってくる、といったらイメージしやすいでしょうか。

さらっとした吟醸酒より、純米酒でコクや酸味があるもののほうが、燗にした時にキレが際立ち美味しいです。

55℃以上まで温めてしまうと、燗酒というより酒蒸しみたいな香になります。

デリケートなお酒はアルコール分も少しずつ飛び始めますし、ふうふうしながらじゃないと飲めないのは、あんまり“粋”じゃないですよね。

からだに優しい日本酒でおつかれちゃん

「私は日本酒党です」

っていうと、若い人たちから

「強いんですね」

といわれることが多いです。

確かに、炭酸や水やジュースで焼酎やウイスキーを薄める飲み方に比べればアルコ―ル摂取量は多いかもしれません。

が、ストレートな状態では、ウイスキーやテキーラやブランデーや紹興酒などの外国のお酒に比べると、日本酒はいたってソフトなお酒です。

日本人の約半数は生まれつきアルコールを分解する酵素の活性が弱いか欠けているそうです。

一気にカーっと酔いがまわらず、じわ~と酔う日本酒は、日本人の体質にあった優しいお酒だったのです。

やっばり、日本人なら日本酒飲みねい!!

今までなんとなく敬遠していた人も、良かったら、この夏はちょっと日本酒にトライしてみてはいかがですか。(好みと体質には個人差がありますので、そこは各自考慮ください・・・笑)

まさケロンのひとこと

まさケロンは日本酒と刺身の互いを高め合う組み合わせがたまらなく好き(日本酒にもよるけど)。

masakeron-love


スポンサーリンク

あなたにオススメの記事&広告

筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。