ファンタジーの世界には、神話や宗教の教典や古典文学やおとぎ話に出て来る生き物がたくさん登場します。
- セイレーン(人魚)
- ペガサス
- セントール(ケンタウロス)
- ドラゴン
- トロール
- エルフ
- ドワーフ
メルヘンチックな描かれ方もあれば、ホラーな場合もあります。最近では、文学や映画より“ゲーム”のキャラとしてのほうが馴染み深い、という人も多いかもしれません。
馬の額に長いまっすぐな角が生えた姿の『一角獣(ユニコーン)』もよく出てきます。
シベリアで発見されたエラスモテリウム・シビリカムの化石
シベリアの一角獣
これらの伝説の生き物は、日本でいえば「妖怪」とひとくくりにできるのかもしれません。
西洋では「妖精」「精霊」などと呼ばれることもあり、いわば
“人の目には見えないけれど、存在が信じられているモノ”
“架空の生き物”
“空想動物”
という扱われ方をしています。
が、先ごろ、アメリカの応用科学誌「American Journal of Applied Science」に、ロシア・トムスク大学の古生物学者アンドレイ・シュパンスキー博士が
“カザフスタンから出土した「シベリアのユニコーン」の化石が、2万6038年前のものであることが判明した”
という衝撃の事実を発表しました。
って、え?一角獣って架空の生き物かと思っていたのに、「絶滅動物」だったの??
一角獣は空想動物ではなく、UMAだった!?
いやいや、よくよく続きを見ると、「シベリアの一角獣」は通称で、本当は
『エラスモテリウム・シビリカム
(Elasmotheriusm sibiricum)』
という学名の動物のようです。
これまでの研究では、約35万年前に、シベリアの気候変動が原因で絶滅したと考えられてきました。35万年前だと、まだシベリアには人類がいなかったのですが、2万6000年前まで生存していたとなると、太古の人類と遭遇していた可能性が高く、それゆえ“衝撃の事実”なのです。
エラスモテリウムが人間の生息地の中に居たとすれば、伝説のユニコーンは、人々の空想上の動物だったのではなく、実際の目撃証言から伝承されていったUMA(未確認動物)だったと考えられます。
シュパンスキー博士は、実際にシベリアに暮らすタタール族の伝説を調査すると、確かに一角獣のエピソードが残されていたということです。
シベリアの一角獣と西洋に伝わったユニコーン
エラスモテリウム・シビリカム
これまで発見されている化石の研究から、エラスモテリウムは今から260万年前、シベリア南西部に出現し、現在のロシア・ヴォロネジ周辺からカザフスタン東部にかけて生息していたとみられています。
UMA伝説の一角獣の姿は、ヨーロッパに伝わる間に、美しい白馬に細くてまっすぐの角が生えている絵が定着したようですが、モスクワの歴史博物館収蔵の9世紀の細密画の中には、鹿のようなからだの動物の額に太くて曲がりくねる巨大な角が生えている一角獣の絵もあります。
出典:Wikipedia
化石の分析からは、実際のエラスモテリウムはサイの仲間であることがわかっています。角そのものの化石はこれまで出土していませんが、骨格を分析すると周囲1m、長さはその何倍もの巨大な角が、額付近から突き出していたと想像されます。
出典:Wikipedia
伝説に描かれる姿とはだいぶ違うのを見ても、本物のエラスモテリウムは、人間に捕獲されることなく絶滅してしまったUMAだったと思われます。
ユニコーン伝説
ヨーロッパの一角獣伝説は、ギリシャ神話の中にすでに見られます。ユニコーンはラテン語のユニコルヌスからきており、ラテン語はギリシャ語のモノケロースからきているそうです。
非常に獰猛でありながら、処女に抱かれるとおとなしくなるという、クレヨンしんちゃんのごとき性格(笑)を持っていると伝えられています。
角は「毒」を清める力があると信じられていたため、海洋生物のイッカクの角が「ユニコーンの角」として高く売られていました。おかげでイッカクは乱獲の憂き目にあったようです。
白馬の姿ですが、正確には
- ライオンの尾
- ヤギのあごひげ
- 二つに割れたヒヅメ
- 紺色の目
を持っている、という説もあります。
シベリアの一角獣が、どういういきさつでそんな伝説に発展していったのかは、いろいろな説があります。シュパンスキー博士はどう分析しているのかと思いましたが、科学者の彼は、伝説の経緯より、エラスモテリウムが生き残っていたこと及び絶滅した理由のほうに興味があるようです。今回の発見の意義について、以下のように語っています。
「私たちの研究は、各時代における地球環境の変化を知る手がかりにもなるのです」
「過去を知ることで、近未来に起きる気候変動などをより正確に予測できるようになります」
何にしろ、この発見は、人類文化学や古生物学の進展に大きな影響をあたえるものになるでしょう。実在した一角獣は、古代のロマンを運ぶ伝説の使者となったようです。
実はすっごくブサイクな顔してたりするのかな。。