SFアニメやドラマには、人々の日常の移動手段として、お手軽便利な空飛ぶ乗り物がよく出てきます。まるで自転車に乗るように、小型一人乗りで垂直離着陸も可能な空中バイクみたいなのを乗りこなして生活している描写もよくあります。
ナウシカが乗っている凧は、安全上、なかなか認可されそうにありませんが、バイキンマンのUFOみたいなの(あれはSFというよりファンタジー?)が出来たら、自家用車なんていらなくなるかもしれませんね。
まあ、そこまでいかずとも、
- 自動車くらいの小型機で
- ヘリコプターみたいに爆音・爆風をたてずに
- 垂直離着陸できるもの
が出来たら、飛行場を使用しなくても、ヘリポートくらいのスペースを確保できれば、どこからでも離着陸できますから、自家用飛行機を持つ人が今よりも増えていくでしょう。
なんて、思っていたら、2016年5月、欧州宇宙機関(ESA)が、まさにそういう飛行機を2018年完成予定で作ってるよー、という発表をしてくれました。
日常生活で使える飛行機を目指して
自宅の裏庭から離着陸可能な飛行機
実際の研究・開発を行っているのは、ドイツのエンジニアリング会社「リーリウム社(Lilium)」です。ESAはこれを支援しています。
リーリウムのCEOダニエル・ウィーガント(Daniel Wiegand)さんは、
「日常生活で使える飛行機を目指す」
と話しています。
そのために、
- 静かな離着陸
- 滑走路も広いスペースも不要
- 排気ガス等の環境負担が少ない
- ライセンスの取得が難しくない
という点をクリアする
「世界初の垂直離着陸タイプの小型自家用飛行機」
の開発に至ったのです。
狭くても、周りに家があっても大丈夫
この飛行機は、同社が開発したダクト内でプロペラを回転させるタイプのエンジン(ダクテッドファン・エンジン)が搭載されており、大きなプロペラを必要とするヘリコプターほどの爆音・爆風がありません。動力は電気なので、その点でも静かで環境への負担は小さくなっています。
わずか15m四方の平らなスペースがあれば、安全に離着陸できます。
免許取得も国によっては簡単
ヘリコプターのライセンスを取る場合、技術の獲得は結構難しく、時間もお金もかなりかかります。
しかし、この新開発機の場合は、ライトスポーツ航空機(Light Sport Aircraft)という扱いとなっており、アメリカなどでは、一般の飛行機免許よりも簡単に取れるライセンスがあれば乗ることができます。
早い人だと、20時間程度のトレーニングで取得可能ということです。
(日本ではヘリコプター以外は自家用操縦士免許が必要)
実用化までの道のり
2018年の発売を目指して
現在、ハーフサイズのプロトタイプを製作し、実際に遠隔操作で飛ばしながら、様々なテストを行っている段階だそうです。2016年の夏には、フルサイズの無人プロトタイプでのテストを始める予定です。
2017年には初の有人実験飛行を計画しており、うまくいけば、2018年までには、初期生産の準備が整う見込みです。
アメリカやヨーロッパの先進国のように、既に自家用飛行機の需要がある程度あり、法的整備もそれなりに整っている国では、市販までの制約はそんなにないでしょう。
普及するかどうかは、値段にもよると思いますが、今のところ、同じくらいの大きさの小型飛行機と比べても、だいぶ安い小売価格になる予定ということです。
日本での実用化はまだだいぶ先?
日本の場合、はるかに住宅事情が密集しているので、15m四方のエアポートを確保できる庭がある家は、市街地ではそんなにありません。自宅庭にスペースがあっても、墜落の危険や騒音問題などを心配するご近所からの理解が得られず、いろいろともめてしまいそうな気もします。
というか、まず、法律的に、
「航空機は、陸上においては空港等以外の場所において離着陸を行ってはならない」
という規定があります。
空港等の“等”は、グライダーやドクターヘリなどは、飛行場の要件には満たなくても、一定の条件を満たす場所を場外離着陸場にすることができることになっています。それでも、国土交通大臣の許可は必要です。住宅密集地の広い一戸建ての庭が認可してもらえるかどうかは微妙です。
まあ、日本の場合は、指定のエアポートからの離着陸と、定められた飛行コースから外れない移動手段としての実用化のほうが現実的かもしれません。マイ飛行機ではなく、タクシー利用みたいな公共交通も出てきそうな気がします。
日本での日常使用飛行機は、もう少しコンパクトで身近なもの、マイカーの代わりのマイプレインではなく、自転車の代わりのタケコプターの実用化を待たないと・・・かな?
みんなが自家用飛行機デビューしていったらそのうち「空のパトカー」なんかもでてきそうだよね。