年度末・年度始め 政治・経済

国会の不思議/予算審議なのに、予算の話してないんじゃね?

Written by すずき大和

現代の日本は、官公庁も企業も法人も、多くの組織が4月に始まり3月に終わる会計年度で動いています。

国や地方自治体の議会では、建前上、年度内に翌年度の「予算」を決めないといけないので、普通は年度末に合わせて予算審議のための「議会」が開催されます。国の予算の場合は、毎年1月から始まる「通常国会」で審議されます。

何かの理由で審議が長引くと、年度内に予算成立できない年もあります。が、討論が盛り上がる話題は、たいてい予算の話じゃありません。

ちなみに、2017年2月は、

  • 「南スーダン派遣中の自衛隊日誌の知られるとまずい表記を、防衛省が隠蔽した疑惑」
  • 「極右思想小学校建設地として、国有地が異常に安く売られた件と安倍総理の関与」

関連の質問がエキサイトしていました。



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予算審議で討論されていること

予算委員会

国会の仕事は予算だけではなく、他にも様々な法律を作っています。全部の議員と政府の閣僚らが揃う「本会議」ですべてを決めるのは、人数が多すぎて収集がつかないので、いくつかの委員会に分けて、審議を分担しています。

予算を審議するのは「予算委員会」です。

予算は最重要事項なので、各党の幹部クラスの議員がたくさん参加し、政府の閣僚(各省の大臣)もずらっと並び、NHKのテレビ中継もあります。

予算の話をしない予算委員会

与野党が政府予算案を叩きまくる欧米の議会とは違い、日本の予算委員会の中で予算案が修正されることはほとんどありません。毎年ほぼ案のまま可決されます。

野党と与党のやり取りの多くは、具体的な予算の修正を検討する内容ではありません。
よく野党が出す話題は、政府要人等に対して、「資質に欠けるのではないか」と追及する話です。スキャンダルや失言、何かに対処する時の態度や言動などに疑問を呈して、

  • 政府の見識を問い直す
  • 疑惑を究明する
  • 総理の任命責任の追及

などしているうちに、

「この問題を放置して、審議なんかできない」

なんて話になって、野党が審議をボイコットし、会議が硬直する場合もあります。

予算審議は何でもあり

およそ国に関する問題は、すべて予算に関係しています。そのため、予算委員会では、ジャンルもテーマも原則的に制限なく何でも取り上げることができる、と解釈されています。

それを利用して野党は予算修正と関係ない質問もたくさん出し、生中継で存在をアピールするわけです。

結果、政治家のスキャンダルが暴かれたり、過去の施策がおざなりな対応で運用され続けている問題が指摘されたり、時には政権が揺らぐほどの大きな問題があぶり出されることもままあります。

が、しかし、では予算案の妥当性の審議は誰がどこでやっているのでしょうか?

予算審議はデキレース!?

予算審議の段取り

1,予算案

予算案を作るのは行政(内閣)です。

秋頃、各省庁や政府機関が、要望を財務省に提出します。(『概算要求』)

財務省の官僚がそれを基に、予算の原案(『財務省原案』)を作ります。

この過程で、各省庁から様々な働きかけを受け、折衝(駆け引き)が行われます。官僚としては、後々修正が入るのは面倒臭いので、この段階で極力、省庁から文句がこないような案を作ります。

財務省原案は内閣の閣議(総理と大臣の集まり)に提出され、討論して『政府原案』(予算案)を決めます。この際、与党を支援してくれている利益団体からの要望を反映した内容に修正されることが頻繁に起きています。

つまり、国会に提出された予算案は、与党と閣僚と利益団体にとって、とても都合の良いものに仕上がっています。

2,委員会審議

国会審議の場で初めて野党の要望が出てきます。多くの場合、利益団体にとって嬉しくない内容です。与党としては、無視したいですが、それでは独裁国家になってしまうので、一応、審議の場で野党の意見も聞きます。ついでに国民の意見も公聴会で聞きます。

が、政府が予算案を修正することはほとんどなく、与党が圧倒的多数の力で押し切って採決される場合が多いです。

衆議院の優越性(衆参で賛否が分かれたら、衆院の決定が優先)のため、衆院さえ通れば、予算は自動的に成立していきます。

野党の逆襲

官僚が与党リクエストで作った案に、利益団体リクエストを乗せた予算案をそのまま年度末中にすんなり通すと、官僚と利益団体からは

「強くて頼りになる与党」

と支持され、与党の力はますます盤石になります。

与党が顧みないニーズを反映した野党の修正案は、適当にあしらわれるだけです。日本の有権者はそれを見て、多くの人が

「野党、だらしない」

という評価をします。

野党として、存在意義をアピールするためには、スキャンダルや失言や利権の癒着を暴く質問で攻め込む戦略へと、どうしても流れていくようです。

かくして、予算委員会から予算修正討論は消えていく、という不思議な現状が生まれました。予算は見えない所で与党と官僚が審議するものになっています。

見えないから、利益団体は与党にだけすり寄り、癒着も生みやすいのですが、政権支持率は何があっても高く、有権者はよほど与党を信じているようです。カリスマ性のあるリーダーが正しい方向を決めてくれる社会で、自分は難しいことあまり考えずに生きるのがラク、という人も少なからずいます。

民主主義志向の強い国の人が見ると、たぶんそこが一番不思議かもしれません。

まさケロンのひとこと

国民がもっともっと「ん?なんかおかしくね?」って疑問に思えば変わっていくかもなーとか思うんだけどね。大勢が「興味あんまりなし」状態じゃあ変わらないよね。

masakeron-oko


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。