暦・カレンダー

元号って面倒臭い!?でも無くならない、日本独自のカレンダー

Written by すずき大和

今、この文章を書いているのは、2018年・平成30年の5月です。

来年の今頃は、新しい元号に変わっています。

現時点では、まだ新元号が決まっていません。

来年のカレンダーはとっくに印刷が始まっており、対策に苦労している関係者は多いでしょう。官公庁など、今も正式書類は元号表記の業界は、新元号発表予定の4月以降、膨大な切り替え作業を1か月で完了しないといけません。

そして、SEの世界では、様々なシステムの再構築をめぐる気の遠くなるような作業に、既に昨年から取り組まれていることでしょう。

事務作業の効率だけ考えると、西暦と元号を並行して使う世の中は、決して合理的ではありません。

「いっそ、元号なんて廃止してしまえ!」

という意見も、実は昭和の頃から何度もいわれてきました。

が、そう簡単に無くせないのが、この元号なのです。



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元号ってそもそも何?

今は何年?を決める権利は統治者特権

人類が狩猟生活を送っていた大昔、人々は風や水や山の緑の変化や天体の移ろいを読んで、捕獲や収穫の可能な時期や場所を予測して生きていたと思われます。

農耕を始め、集団で定住して、みんなで協働して営む社会が確立されるようになると、時を数える共通認識が必要になりました。社会の営みの基本になる、重要なルール

「暦(こよみ)」

の誕生です。

どの文明においても、暦を定めるのは権力の頂点に立つ統治者の特権事項でした。いい換えれば、暦は時の権力者のシンボルでした。

紀年法

年の数え方(今年は何年?の決め方)を

「紀年法(きねんほう)」

といいます。世界では、大きく分けて3通りの紀年法が使われています。

  • 『紀元(きげん)』: 特定の年を始まりとして、現在は何年目かを表す方法
  • 『元号(げんごう)』: 昭和・平成など、次の期間に移る時にリセットする数え方
  • 『循環式紀年法』: 一定のサイクルで永遠に何度も繰り返す年の表し方

キリスト復活の年から始まる「西暦」は、「キリスト紀元」の紀年法です。

『元号』は、現在は世界でただ一国、日本でしか使われていません。

循環式の代表は東洋の「干支」です。古代から中世に中国の文化の影響を大きく受けた国々で、現在も使われています。

国際的には、キリスト紀元が共通になっていますが、イスラム世界では別の紀元が使われています。台湾や北朝鮮にも独自の紀元があります。

日本でも明治から戦時中までは通称「皇紀(こうき)」と呼ばれた紀元が使われていました。日本で西暦が一般化したのは、戦後になってからです。

日本の暦の歴史

5世紀以前の古代社会の日本には、まだ暦は存在していなかったと見られています。6世紀、朝鮮半島経由で中国の暦が伝えられました。

当時、中国は東洋で最大最先端の文明国家でした。周辺の国々の多くを属国化し、漢字や暦、社会統治のしくみ、様々な学問などが伝えられました。

暦は天子様(中国の王様)から民に授けられるものであり、中国に服従することの証として、属国にも与えられた、という側面がありました。

日本も中国から文化と技術を取り入れましたが、冊封(さくほう:属国となること)を受けることなく、独自文化を発展させてきました。暦も、中国暦をそのまま取り入れましたが、紀年法は「大化の改新」以来、ずっと日本オリジナルの元号で表してきました。

元号は、いわば独立国の証でした。

天皇制と切っても切れない元号

江戸時代は幕府の特権

江戸時代初め、中国の暦ではなく、幕府が日本独自の暦を作るようになりました。誤差を修正しながら、幕末まで何度も改定を重ねました。

江戸時代以前の元号は、ゲン担ぎで改定されることも多く、飢饉や天災が起きると改められたので、天皇や将軍の代に関係なく短期間で変わりました。

天皇の御世の証

近代に入り、西洋列強に並ぶことが国の目標となり、和の風習や東洋的なものが否定されるようになりました。政府は旧暦を廃止し、西洋と同じグレゴリオ暦を取り入れました。

と、同時に、天皇を「現人神(あらひとがみ)」として頂点とする全体主義国家を目指した政府は、神話に基づく最初の天皇(神武天皇:天照大神の直系の子孫とされています)が即位した年から始まる

「神武(じんむ)紀元」(皇紀)

を定めました。そして、天皇の代ごとに切り替える元号制度

「一世一元」

が法制化されました。

以後、今上天皇(きんじょうてんのう:今の天皇)は名前で呼ばれますが、崩御すると、元号が諡号(しごう:死後につけられるおくり名)になりました。

戦後、天皇を神格化する法は廃止され、皇紀は西暦に変わりました。が、元号は慣習として残りました。1979年、改めて「元号法」が定められ、一世一元制度も法制化されました。

現代の元号の意味すること

長い日本の歴史の中で、元号は日本国の独立を象徴する証でした。

近代以降は、天皇のシンボルになりました。天皇が神様から日本国民の象徴に変わった現在も、天皇のイメージと直結する、天皇の代名詞のような側面を持ちます。

天皇に対する国民の感情は、今も特別なものがあり、元号を無くすということは、そんな敬虔な心の拠り所まで消してしまうような印象を抱く人も、少なくないでしょう。

元号とは、そんな歴史とアイデンティティを背負ったものです。そんなこんなで、合理性だけで廃止を論じるのは難しい問題・・・となっているわけです。

まさケロンのひとこと

時々ややここしいこともあったりして、いるのかな〜?って時あるよね。でも新元号が何になるのか気になってる自分もやっぱりいる。。

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。