5月は関東で
初鰹
が一番出回る季節です。
の句にある通り、昔からお江戸の庶民が好んだ初夏の味覚です。
黒潮に乗ってフィリピン沖から北上してくる回遊魚の鰹は、三陸沖で夏を過ごし、秋に再び同じコースを南下します。
秋に収穫されるものは
戻り鰹
と呼ばれます。
脂がのっているのは戻り鰹のほうですが、脂が少ない身の締まった初鰹の血生臭い香りと独特の歯ごたえは、昔から多くの日本人に愛されてきました。
足の速さも天下一品!新鮮さが命の魚
強く逞しい鰹は血気盛ん?!
水温24度くらいを一番好む鰹
3、4月頃は九州から四国
4、5月頃関東
6月頃には三陸にたどり着き
北海道近くまで行って夏を過ごします。
黒潮の流れ通りに回遊するのであれば、そのまま時計回りに太平洋の真ん中を南下し、赤道手前で西にカーブして再びフィリピン沖に戻るコースになるのですが、鰹はあえて黒潮に逆らって元のコースを南下します。
体も大きくそれだけの運動量ですから、酸素もたくさん使います。
当然赤味で、身の25%近くが血合いです。
食べられる時間が短いからこそ余計白熱した初鰹熱
血液分が多いということは、食材として考えると、血生臭くとても傷みやすいという特徴につながっています。
冷蔵庫のない時代、江戸っ子が鰹を食べられるのは、関東近海で水揚げされる時期だけでした。
その辺りがまた希少価値となり、江戸の人々の初鰹熱を盛り上げたのでしょう。
痛みやすいとわかっていても、刺身の美味しさに魅了されていた人々は、より新鮮なものを好み、朝船出した漁船がその日のうちに戻って水揚げした日戻り鰹は高値で売り買いされました。
痛みやすさを克服して美味しく食べたい
それでも刺身で食べたい!土佐の人々の欲求が生んだ土佐作り
お江戸より初鰹の時期が1ヶ月ほど早かった土佐(高知)は、全国でも有名な鰹漁の港です。
南国四国は4月でも既に初夏の陽気のせいか、江戸時代、鰹による食中毒が頻発していました。
土佐の殿さまは見かねて鰹の生食を禁止します。
が、人々はどうしても刺身の味わいを捨てがたく、その法令をかいくぐるために、表面を炙るようになったのが、
鰹のたたき
別名「土佐作り」の始まりとなりました。
藁を使って炙ったので、血生臭さも消え、皮のすぐ下の部分に火を通すことで更に旨味が増しました。
土佐作りの評判はすぐに全国にも聞こえ、広まっていったのです。
太平洋から離れた関西ではかつお節が発達
食い倒れの町大阪は、江戸時代から既に東西の食材が集中する天下の台所でした。
しかし、太平洋から離れ、また走りの品の人気が低い関西では、お江戸ほど「初鰹」はブームになることはありませんでした。
しかし、食材としての鰹の美味しさはやはりよくわかっていたので、生食ではなく保存食の研究が進み、
かつお節
が発達しました。
手間暇時間をかけて作られるかつお節は、高級品として年貢の代わりに納められたり、結納品の定番にもなりました。
関西料理は、かつお節の出汁の味を最大限活用するように発展したので、あえて薄味になっていったわけです。
因みに、良いかつお節は、戻り鰹より初鰹で作るものなんだそうです。
現在では、保存技術も流通も格段に進歩し、遠くの港で水揚げされたものも運んでこられるようになったので、全国どこでも3~6月の長い間、南の港のものから順に初鰹を楽しむことができるようになりました。
お江戸では
と言われた縁起物であった初鰹、栄養化も味もいい割には、マグロなどに比べお手頃価格なのもありがたいです。
一番安く大量に出回るこの時期、気軽にどんどん楽しみましょう。
もう、初鰹の時期かぁ~
鰹のたたきとお酒がよく合うんよ!
でも、お酒は20歳からやでぇ~