夏の話題

「すずむしの里」信州安曇野松川村の村おこし

Written by すずき大和

明日は暦の上では

処暑(しょしょ)

暑さが峠を超えて秋の気配が強まってくる時季となります。

宵の時刻にふと草むらのほうから秋の虫の声が聞こえてくることもあります。

雑木林や空き地がほとんどなくなってきた都会では、昔ほどどこでもいつでも聞くことはなくなりましたが、緑の多く残る郊外や田舎に行けば、まだまだ虫の声は

秋の夕暮れには大合唱

で鳴り響いているのでしょうか・・・・。



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秋の虫は減少の一途。今や貴重なスズムシの声

スズムシが観光資源となる時代

21世紀の日本、田舎といえども、自然の環境破壊や人口流出による里山の放置などの影響で、虫をはじめとした様々な生態系に、静かに地味に、歪みや変動が起きています。

地方都市でも、平地のまち中では虫の声もめっきり少なくなっています。

里山や田園風景が残る田舎の市町村の中には、まだたくさん生息している虫たちを観光資源として広くPRし、町おこし・村おこしの目玉としようと施策を推し進めている所がいくつかあります。

自治体の花とか木というのはどこでもありますが、

自治体の虫

としてスズムシを認定して、町おこしの一助にしている所も全国にいくつか存在します。

安曇野松川すずむしの里

長野県安曇野地方にある松川村も、そんな自治体のひとつです。

男性の平均寿命が日本一であることで知られる松川村では、自ら

すずむしの里

を名乗り、豊かな自然と共存する環境に配慮した自治体であることを売りとして、観光振興に努めています。

スズムシの登場する昔話が残っている松川村では、昔からスズムシは村民に親しまれていたようですが、昭和30年代頃から、農業の近代化が急速に進み、農薬散布の影響などによって、その数が減少してきたそうです。

村は環境破壊への危機感を早くから感じ取り、20年以上前から低農薬の米作りを始めたり、スズムシの人口繁殖を進めて全国に発送する取り組みを行ったりしてきました。

松川村のすずむし村おこしの取り組み

世界にひとつだけ「すずむし保護条例」

そんな地道な努力の甲斐あってか、北アルプスの麓に位置する農村地帯の村ですが、過疎化が進むどころか、着実に人口を増やしながら静かに発展しています。

低農薬米も自慢の産品となり、

すずむし小包便

のお中元商戦展開も順調に進んでいるようです。

しかし、安曇野の山麓地帯全体でのスズムシの減少傾向はやはり顕著で、

長野県版レッドリスト

では

絶滅のおそれのある地域個体群と報告されています。

そんな中、2009年、松川村は全国に誇る

すずむしの里

づくりを目指して、世界でここにしかない

すずむし保護条例

を制定しました。

第3条では

村民は、すずむしと共生する村の自然環境に誇りを持ち、村が実施するすずむしの保護に関する施策に協力するものとする

と定めています。

具体的施策としては、土地改良事業等を実施する場合は、スズムシの生息環境に配慮した工法に努めることや、村内全域において

スズムシの捕獲を禁止

することなどが定められています。

ゆるキャラももちろんスズムシ

すずむし保護条例には罰則はないそうですが、

すずむしの里

の売り込みには、条例制定の話題は大きな後押しとなったようです。

自治体のHPを見ても、観光協会のPRを見ても、全面的に

すずむし

がアピールされています。

村のマスコットキャラクターとして、

リンリンちゃんりん太くん

というスズムシゆるキャラも活躍しており、公共施設の名称などにも「すずむし」はたくさん使われています。

すずむし小包便の宣伝のために、村の昔ばなしをアニメにしたTVCMも作られています。

厳しい残暑の日中が続く中、夕方になって気温が下がってきた時に、閑に流れる虫の音は夏バテしたからだと心を癒してくれます。

松川村の村長さんは

スズムシを守ることは村の財産である。安曇野の景観を残すことでもある

とおっしゃっているそうです。

緑豊かな日本の自然と虫の声にあわれを感じる感性

ぜひ後世にも変わらず伝えていきたいものです。

まさケロンのひとこと

すずむしを後世に残すためにも頑張ってほしいな!
応援してるでぇ~

masakeron-happy


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。