落ち着いて正しい知識を得よう
基本事項をおさらい
西アフリカ地域を中心としてエボラ出血熱の感染が世界中に広がる可能性が出てきました。
つい先日感染疑惑のある邦人旅行者のことが大きく報道されました。
幸いなことに検査の結果陰性と判断されたようです。ひとまずは国内初の感染者はいまのところ出ていません。
これまでは西アフリカ地域という日本からは遠い地域でのできごとであり、どこか対岸の火事といったムードが濃かったエボラ出血熱ですが、今回の報道により、他人事ではないことが再認識された感があります。
今後国内での感染例が発生するかどうかは誰にも分かりません。
邦人感染疑惑が大きく報道されたことにより、ネット上などでは、
「ついにエボラが日本上陸か!」
などと大きく取り上げられているようです。
ここではまずエボラ出血熱について基本的な知識を確認していきたいと思います。
エボラ出血熱はウイルスを病原体とする急性ウイルス性感染症のひとつです。
感染すると発熱からはじまり、頭痛、嘔吐につづいて吐血、下血などの出血症状が現れます。
1970年代から発生が確認されており、しばしば大規模な感染も発生しています。
感染経路としては感染者の体液や体液に汚染された物質(例えば注射器など)に十分な防護なしに触れた際、ウイルスが傷口や粘膜から侵入することで感染します。
厚生労働省が掲載しているエボラ出血熱に関してのQ&Aには空気感染はしない、と記載されています。
エボラ出血熱が大きな問題となっているのは明確な治療法が確立されていないことです。
有効とされる薬品なども存在するようですが、世界的に認可されているわけではありません。
そのため、過去の記録を見ると致死率が100パーセントだった時期もあります。
致死率についてはその後改善され現在では60パーセントといわれています。
かなり前の話になりますが「アウトブレイク」という映画がありました。
エボラ出血熱に題材をとったパニックサスペンスだったと記憶しています。
映画の中では未知のウイルスに感染すると全身から出血し、即死してしまうという描写がありました。
こういった先行するイメージによって私たち日本人にとってエボラ出血熱は感染したら絶対に助からない致死性の高い感染症と思われがちですが、それは誤解です。
筆者も調べるまでは致死率が100パーセントだと思いこんでいましたが、そうではなかったのです。
日本の水際対策について
厚生労働省によるとアフリカの発生国への渡航者・帰国者に関してポスターなどで注意喚起を行っているほか、帰国者に関してはサーモグラフィーによる体温測定に加え、自己申告による問診や健康監視を実施しています。
ただしこの措置については疑問を投げかける専門家もいます。帰国後の健康監視が必要なのは、エボラ出血熱にかんしては2〜21日程度の潜伏期間があるからです。
今回初の邦人帰国者も検査では陰性でしたが、潜伏期間のため現在、健康監視状態にあると聞きます。
先述のように自己申告にたよると、その後の対応が煩雑になることを理由に虚偽の申請をする帰国者が発生することが問題視されています。
人は自分の身に実際に物事が降りかからないと危機感を持ちません。
あとあと面倒なことになるので申告などしないというのは、可能性の高い行動であると思われます。
さて、もし国内でエボラ出血熱の患者が発生した場合、どのような対応がとられるのでしょうか。
設備や治療体制は整っているのでしょうか?
厚生労働省によればエボラ出血熱は一類感染症に指定されているそうです。
一類感染症に感染した疑いのある患者は国立感染症研究所により詳細な検査が行われ、感染が確実視された場合は感染防御対策の施された施設によって適切な治療が行われると案内されています。
ちなみにオーストラリアはすでにエボラ流行地域からの渡航者に対するビザ発給を停止しています。
日本が今後同様の措置を取るかどうかは分かりません。公式の見解ではエボラ出血熱が国内で発生するリスクは低いと考えており、現段階では国内の体制を整備することを大きな目標としているようです。
正しい情報を入手し、適切な行動をとる
正しいことを知る努力
唐突ですが筆者はゾンビが発生する可能性はあると、真剣に考えています。ゾンビとはホラー映画の定番である死者が蘇って人間を襲う、という現象です。
筆者はこの絵空事のような現象が何かのきっかけで実際に起こりえると堅く信じて疑いません。
とはいえさすがに死体が蘇るようなことが現実に起こるとは考えていません。
筆者が考えるゾンビとは今回のエボラ出血熱のようなウイルスや、麻薬のような薬物が引き金となって人間が凶暴化するというシチュエーションです。
これは充分起こりえると断言します。
もしそのような事態に陥った場合、生き残る鍵の一つとして冷静な判断が求められるのではないでしょうか。
「ワールド・ウォーZ」という映画がありました。
ブラッド・ピットが主演で比較的最近公開されたので覚えている人も多いかと思います。
全世界規模で細菌により人間が凶暴化するパニック映画です。
このなかで主人公がとったある行動が非常に興味深いものでした。パニックの中、主人公がゾンビにかまれた人間が感染し、凶暴化するまでに何秒かかるか計測するシーンがあります。
10秒でした。そして自分がゾンビに襲われ血が口に入ってしまったときに感染するか、しないかを確認します。
高層ビルの屋上に立ち10秒待つ。もし感染すれば飛び降りて自らの命を絶つ覚悟です。
10秒経過しても何も起こりません。
そして主人公はあくまでも感染者に噛まれなければこの細菌は感染しないことを知るのです。
ブラッド・ピット演じるこの主人公は国連職員という設定です。
紛争地域や疫病流行地域での危機管理を主な仕事としていたという経歴の持ち主ですから、このような冷静な行動がとれたと言ってしまえばそれまでですが、私たちにも同様な行動がとれるのではないでしょうか?
以上、ネットの反応です。もちろんこれらがすべてではありません。
あまり騒ぎ立てず、冷静に判断することを促す意見も多数ありました。
でも興味本位で騒ぎ立てたり、ただひたすら怖がったり、感染の疑いのある人を差別するような意見を発信するのはどうかと筆者は思うのです。
エボラ出血熱に限らず、何か大きな問題が発生したときにそれに対する反応が即反映されるのがインターネットです。
そこでは様々な情報が一斉に共有されることになる。残念ながらデマも含まれています。
重要なのは事実を知ること。いたずらに情報に流されないような準備をしていくことです。
かくいう筆者も調べるまではエボラ出血熱に感染したら100パーセント死に至る、と思いこんでいたのですから。
どのような情報が有益なのか。新聞社や放送局などの発信する情報や官公庁からの情報は正確です。
個人発の情報とは異なり、正確さについては充分に吟味されている可能性が高いからです。また、現地の生の声は大変貴重であり参考になります。
例えば日本人看護師が現地での実体を説明したこの記事
エボラウイルスが石鹸で洗えば完全に死滅するとは知りませんでした。そのほか感染拡大地域の様子などは非常に参考になります。
ウイルスと戦う人々がいる限り、希望はある。
いまのところ国内ではエボラ出血熱の感染者は確認されていません。
しかしながらアメリカなどでは帰国者から感染者が確認されており、日本も楽観視していられません。
医療の進化と関係者の努力により、致死率も60パーセントと改善されつつありますが、まだまだ人類にとっては脅威といえるレベルであり課題は多く残されています。
早急に必要なことは治療方法の確立ですが、日本の企業が開発したインフルエンザ治療薬がエボラウイルスの増殖を阻止する効果があるのではないかといわれています。
この薬品の効果は世界中が認めており、フランスではエボラ出血熱感染者に対して実際に投与され、患者は治癒しています。
また愛知県の民間企業が開発したマスクはエボラウイルスの粒子をくい止めることができ、すでに感染拡大地域に寄贈されたとのこと。感染予防に大きな期待が持たれています。
こういった話に触れる度に筆者は人間の力ってスゴいなと思います。
以前自然界でもっとも恐ろしい脅威はウイルスである、という話を聞いたことがあります。
医療の発展はそのままウイルスとの戦いの歴史であるといっても過言ではないそうです。
医療に従事している方々には頭が下がります。一刻もはやく治療法が確立され西アフリカでエボラ出血熱に苦しんでいる感染者が治癒するよう心から祈っています。
エボラ出血熱は「空気感染はしない」ってことは、ちゃんと気をつけてればそこまで脅威にはならないんじゃないかな?