通販専門チャンネルなどで昔からの定番ものといえば、「美容」と「健康」のための品々です。
マッチョな男性やスレンダーな女性がシェイプアップ・トレーニング器具を宣伝するCMを見たことがない人はいないでしょう。
サプリメントなどの健康食品も必ず出てくる人気商品です。次々新しい物質や成分が表れてはブームとなっています。
魔法のような素晴らしい効果を謳う宣伝・・・ホントなの?
最近注目の物質・成分とはどんなもの?
話題になるのは成分名の時も品名の時もあります。
ひと昔前は「コエンザイムQ10」というのが大ブームでした。
ここ数年最も注目度があがってきたのは「プラセンタ」でしょうか。
- 「大豆イソフラボン」
- 「乳酸菌」
- 「ローヤルゼリー」
などのオーソドックスなものも根強い人気があります。
最近耳にするようになってきているものとしては
- 「オルニチン」
- 「ノコギリヤシ」
- 「ユーグレナ」
などがあります。
人気商品に共通する効能「アンチエイジングとダイエット」
これらの宣伝を見ると、様々な美容健康効果の言葉が並びます。
- 「新陳代謝を促す」
- 「血液の循環をよくする」
- 「抗酸化作用がある」
- 「内臓の働きを活性化する」
など、成分の体内での働きを説明するとともに、
- 「肩こり・冷え性が解消」
- 「肌がきれいになる」
- 「疲れが取れて元気がでる」
- 「便秘が治る」
など、身体に表れる好ましい変化を謳っています。
そして、たいていのサプリメントの広告にほぼ必ず入っている文言が
というものです。
もはや、この二つがないと売れない!というのがこの業界の約束になっているかのようです。
こう何にでも言われると、嘘じゃないのかと疑いたくもなります。
正しい効能であることを認める法律の規制
効能を書いてもいい法律の基準
ありもしない効能を謳う過剰宣伝広告は法律で禁止されています。
特定の病気や症状を治療すると明言してもいいのは医薬品だけです。
食品については、病気を治すのではなく、「お腹の調子を整える」など特定の保健効果が科学的に証明されたものに限り
「特定保健食品(トクホ)」
という認可が受けられ、効能を宣伝できることになっています。
大豆イソフラボンや乳酸菌、オリゴ糖などは、一定の量が一定の条件で入っていると、トクホに指定されています。
トクホではないサプリメントなどには
「栄養機能食品」
と表示されています。
これは、特定の成分が含まれていると認められ、その栄養素の補給のために摂取を推奨してもいい食品、ということです。
決して特定の効果を定めるものではありません。
効果は認められても、それが誰にでも約束されるとは限らない
トクホも栄養機能食品も、身体に足りていない特定の成分を補給するための栄養補助食品です。
もともと体内にあるとか、普通の食事などで摂っている栄養にプラスするものですから、どれくらい摂るとどんな影響が出るのかは、個人差があります。
医薬品との違いは、必ず効果がでると約束されるものではない、ということです。
特にトクホマークがないものは、含まれる成分ひとつひとつの働きは科学的に認められていても、「その食品そのものを食べた結果の効能」の科学的証明はまだない、と思ってまず間違いがありません。
サプリメントの宣伝は「嘘」ではありません
では、宣伝で謳われる数々の効果はみんな「嘘」なのか?というと、そうではありません。
宣伝をよくよく見て聞いてください。
「これを食べれば必ず痩せます」
など、直接の効能をはっきり名言した広告など、実はひとつもありません。
そういう効果があると思い込ませるように上手な方法で宣伝されているだけです。
広告の内容はどんな真実を意味しているのか
実はとてもあやふやな効能の表現
- 「新陳代謝を促す」
- 「血行を良くする」
などといわれるものをよく見ると、
「そういう働きをする成分が含まれている」
という意味であり、「その食品を摂ったら体調改善の効果が表れます」とは言っていません。
体験談は必ずしもその食品の効果の証明ではない
- 「肌がきれいになった」
- 「体調が良くなった」
という成果の多くは、“利用者の感想”として紹介されています。
これは嘘ではないかもしれません。
しかし、それが本当にサプリメントの効果なのかどうかは、一概には言えないのです。
例えば、モニター中は成果を出したい気持ちが働くため、無意識のうちにいつもはする不摂生をしなくなったり、身体に悪いものを食べないように気を付けたりする人が多く、それらの成果もプラスされているかもしれないのです。
また「効く効く」と暗示にかけられたために出た効果の可能性もあります。
実験の結果を効能と証明するのは簡単ではない
「○○大学の教授により、効果が証明された」などという話が使われることもあります。
よく聞いてみると、実験の結果がそう出た、という段階にすぎません。
その結果がその成分(もしくは食品)による効果だったかどうかを証明するには、いろいろな科学的検証が必要なものなのです。
アンチエイジングとダイエットの効果のからくり
アンチエイジングの効果があります、と言われる場合
「アンチエイジングに効果があります」とは、具体的にどんな数字が証明されることなのでしょうか?
美容・健康商品に関してアンチエイジングと聞くと「見た目が若く感じる」つまり「肌が綺麗になる」ことをイメージする人が多いでしょう。
しかし、人によって「前より綺麗」の基準は違います。何の数字を持って効果があるとするのかは、まず明言されていません。
加齢により綺麗じゃなくなる原因は
- 年齢と共に細胞が老化し
- 新陳代謝が低下することで、
- 保湿機能が下がるためです。
そのため、
- 抗酸化作用(細胞老化の原因を減らす効果)あり
- 新陳代謝を促進する
- 肌の保湿成分のひとつである(コラーゲンなど)
という成分が入っているものには「アンチエイジング効果があります」と言われる傾向があります。
ダイエットに効果があります、と言われる場合
日本でダイエットというと「体重を減らすこと」を意味しています。
- 摂り込むエネルギーより使うエネルギーが多くなれば痩せます。
- 使われるエネルギーの多くは、一つ一つの細胞が生きているために使う基礎代謝です。
- 基礎代謝は体の機能ひとつひとつが活発になれば上がります。
- 細胞の新陳代謝が盛んになれば、個々の機能も活発になります。
- 新陳代謝を鈍くする原因の一つは老化(活性酸素)です。
というわけで、やはり
- 抗酸化作用がある
- 新陳代謝を促進する
類の働きをする成分が入っていれば、まず「ダイエットにも効果的です」となるわけです。
しかし、「ダイエットに効果的」は=「痩せます」とか「太りません」という意味ではなく、非常にあいまいな表現です。
強いて言えば、「他に体重を落とすための取り組みをしている場合、この栄養素を摂っているほうが、より効果が上がり易い」程度の意味にすぎません。
ちなみに、トクホの中のダイエット効果の項目は、
- 「食後の血中の中性脂肪を抑える食品」
- 「体脂肪がつきにくい食品」
と、具体的な特徴で表現されています。
身体の機能をアップ=何でもアンチエイジングとダイエット
身体にいいと言われる成分の効能の多くは、身体の何らかの機能を活発にする、または働きを整えるものです。
ほとんど効能の波及効果として
「新陳代謝が高まる」
は出てきます。
それが、何でも
- 「アンチエイジング」
- 「ダイエット」
これらに効果がある、となる真相です。
例えば、「オルニチン」という成分は、肝臓の働きを向上させる効果のある物質です。
医療関係の記事を見ると、オルニチンの効能として書かれるのはそこまでです。が、美容健康記事では、肝臓の働きが良くなると、エネルギー物質やホルモンの産生が進むため、身体の機能が活発になり、新陳代謝が促進され、ダイエットやアンチエイジングにも効果的です、となります。
これは、決して嘘ではありませんが、科学的証明ではなく、理論的な推測です。
どこまでの効果を信じ、期待するのかは自分次第
繰り返しますが、「宣伝の内容は嘘ではありません」。
ただ、言われる効能らしき内容が、どこまで科学的に立証されているものか、推論か、体験談の段階なのかをきちんと見極めることが大切です。
憶測部分があまりに多いものは、あまり信用できないかもしれません。
一方、効果を訴える体験談がとても多いものは、未だ研究中なだけで、いずれ効果の程が科学的に証明される可能性は高いかもしれません。
どこまで信じ、何を期待するのかは、自分の責任でよく考えて判断する必要があります。
また、商品の宣伝ではなく、一般的読み物として話題にした記事も、ネット内にはたくさん見かけます。情報の裏を取らずにどこかで見た内容をそのまま並べた記事もあります。
- どうしてそういう効果になるのか説明されているか。
- 何から情報を得たのか書いてあるか。
- 誰が書いている記事か、書いてあるか。問い合わせ先の明記はあるか。
その辺りを注意して見ることも、記事の信憑性の判断基準になります。
世の中、サプリメントなどを食べたり飲んだりしただけで、綺麗になったり痩せたりすることはほとんどありません。
普段の生活習慣や食生活など、いろいろなことが総合的に組み合わさって、健康や美容は促進されるものです。
しかし、一方でサプリメントや健康食品は、時に、気持ちの上で安心できる、自信を持てる、などの効果ももたらします。過剰に頼らず、よりよい生活の一助として、上手に利用してください。
「広告の内容は嘘ではない」けど、どのレベルのものかを見極める必要があるんだね!