子ども達が頑張っている姿は、見ている人にいつも感動を与えてくれます。
勝った時の嬉し泣き、負けた時の悔し泣き、両方ともじわーっと込み上げてくるものがあります。
夏と春に私達に感動を与えてくれる高校野球も、そのひとつ。
でも最近は高校野球の投手の連投について、疑問視する声が多くなっています。
「あまりにも球数が多過ぎる」
「投げさせ過ぎなのではないか」
そんな意見がある反面で、それに対し、
「今までもやってきたことなのだから見直す必要はない」
「甘やかしてはいけない」
などの肯定派も。
方程式に問題あり
こうでなきゃいけない
「甲子園に行くことを目標に何年も野球をやってきた。それから先のことなど、今は考えられない」
野球少年達の多くはそういう意見で、とにかくそこを目指さないとプロへの道だって閉ざされると考えているようです。
↓
レギュラーになる
↓
試合に勝つ
↓
甲子園へ
↓
注目される
↓
プロやメジャーへの道が初めて見えてくる
こんな方程式が子ども達、もしかすると指導者の中にもあったりするのです。
「無理はしたくないので」とは言えないから
これは野球だけのことではなく、他のスポーツにも当てはまります。
「将来プロになるつもりだから無理はしない」といえる子どもはなかなかいないでしょう。
特別な才能、天才的な資質などを持ち合わせていない限り、鼻で笑われてしまうのがオチです。
子どもが所属するチーム、部活等では、練習の内容・時間・試合での起用方法・体調管理など、それは全て指導者に託されているといってもいいでしょう。
では、実際に指導者はそこまで考えているのでしょうか。
体調管理も大切
今では、あらゆるスポーツが小学生の頃からチャレンジできるようになりました。
しかしケガをする子どもも多く、無理を重ねてしまい悪化してしまうケースもあります。
子どもの体調管理は大人に責任があります。でも痛みや異状は本人にしか分かりません。
指導者や保護者は子どもにスポーツをさせる以上、正しい知識を持つ必要があります。
体調管理はもちろん、練習内容や指導方法、ルール等を学び、それを年齢に合った教え方で子ども達に伝えていく必要があります。
自分自身と向き合う
あるクラブチームでは週に1回体調チェックシートを子ども達に提出させることを義務付けています。
それによって「自分自身の身体と向き合う姿勢」を持つ子どもが多くなったそうです。
また、早めに休んでおけば軽く済んだものが、無理した結果休む期間が長くなってしまうということを理解し、体調不良などで休むことへの罪悪感を取り除くことにも繋がっているようです。
この姿勢を子ども達に浸透させていくことが、将来のアスリートを育てていく上での当たり前な一歩にしなくてはなりません。
年代別に見たトレーニング
小学生
- 同じ運動を繰り返すのではなく、短時間でいろんな種類の動きをさせる。
- 長時間の運動は、大人が考えている以上に身体への負担が大きい。
中学生
- 有酸素運動を多く取り入れる。
- 持久力を付けさせる。
- 大きな負荷がかかる練習はNG。(この時期は身長が急激に伸びるので、関節や骨にダメージを受けやすい為)
高校生
- 長時間のトレーニングが可能になってくる。
- 筋力トレーニング、瞬発力トレーニングを積極的に行なう。
水分補給も大切です
えーっ、2ℓも!?
人間は1日に2ℓの水分を失っています。
その内訳は次のとおり。
- 尿 – 1ℓ~1.5ℓ
- 汗 – 0.6ℓ
- 便 – 0.1ℓ
- 呼気 – 0.3ℓ
スポーツをやっていれば、もっとたくさんの水分を失っていることになります。
かなり積極的な水分摂取が必要なのです。
水分補給のタイミング
運動前
- 運動を始める30分~1時間前に250ml~500mlの水分を摂取する。
運動中
- 喉が渇く前に水分摂取。出来れば15分~30分間隔が理想的。
1回に飲む量は100ml~200ml。がぶ飲みはNG。
スポーツ中は水分だけでなく、塩分も必要なので、水やお茶よりスポーツドリンクがベスト。
市販のスポーツドリンクは糖分が多いので、水を足して飲むようにしましょう。
動き(パフォーマンス)にも影響あるんです
この水分摂取は、パフォーマンス能力とも関係があります。
汗をかいて失った水分が、体重の
- 1%程度になると・・・パフォーマンス能力の低下がスタート
- 2%程度になると・・・自覚症状としては喉の渇き 本人は気付きにくいもののパフォーマンス能力の低下が顕著になる
- 3~4%程度になると・・・本人もかなりきつい状態 パフォーマンス能力の低下が見た目にも明らかになる
- 5%以上になると・・・吐き気、めまい、集中力の極端な低下、危険な状態
抗酸化物質を摂取しなくちゃ
試合や練習後の食事も大切です。酸素を多く必要とするアスリートの身体の中では、活性酸素が多くなりがち。
活性酸素が増えると疲労が蓄積されパフォーマンス能力も低下します。
この活性酸素を取り除く働きをしてくれるのが抗酸化物質。抗酸化物質を摂取することで、疲労回復を早める効果があるといわれています。
抗酸化物質が含まれている食品
- トマト
- バナナ
- キャベツ
- ブロッコリー
- 人参
- カボチャ
- 胡麻
- にんにく
- 大豆
- アボガド
- キウイ
など。
また、試合や練習後1時間以内に、
- おにぎり
- パン
- バナナ
- チーズ
などを食べることでも疲労回復を早める効果があるそうです。
どうするべき?高校野球
技術だけの指導じゃダメ
痛みがある時は決してやらない、それが言えない、通らないような雰囲気を作らないことが大切です。
無理な話と思われるかも知れませんが、本当はそれ以前に出来るだけケガをしない、させないことを心がけることが必要になのです。
まずは正しいフォームを身に付けること、試合や練習前後のストレッチを丁寧にすること、アイシングのやり方などを子ども達に繰り返し指導します。
それを実行していくと・・・
↓
練習を休むメンバーが少なくなる。
↓
チーム全体のレベルアップに繋がる。
↓
とても理想的なチーム作りが出来るようになる。
↓
結果的に指導者もやりやすくなるのです。
アイディアいろいろ
日本高校野球連盟はタイブレーク方式及びピッチャーの投球イニング、投球数の制限の導入を検討することになりました。
しかしその反面で、球数制限・投球回数制限を設けるとピッチャーを多く育てなければならなくなるため、私立や強豪校が有利になるのではないか・・・という意見もあります。
高校野球に対する意見として多いのが
- 9回までではなく7回までとする。
- 甲子園ではなくドームでの開催にし、暑さからくる体力消耗を防止。
- プロと同じく延長戦は12回まで。
- 準決勝と決勝のみ甲子園で開催、あとは複数の球場にて行なう。
- そもそも真夏の大会をやめるべき。
まだまだ意見はいろいろありますが、球児の身体を心配してくれている人がとても多いことに驚きます。
将来が大切か 今が大切か
ダルビッシュの発言もきっかけに?
「高校球児の1日の投球回数を7イニングまでにする。まだ酷使してはいけない年齢の球児を守るという意味で。結局2番手も育つからいいんじゃないかと。」
このダルビッシュ有投手の言葉も話題になりましたが、それを受けてのことなのかMLBと米国野球連盟は1日の投球数などの指標を示しました。
- 15歳~18歳では試合に登板しない期間を年間4か月以上設ける。
- そのうち2~3か月は投球練習も行なわない。
- 1日の投球数 17歳~18歳 最高105球。
- 76球以上投げた場合は、次回登板まで4日間の休養が必要。
日本でも見直されています
国内でも2014年4月に日本中学硬式野球協議会が、リトルシニアやボーイズリーグなどでプレーする中学生投手の試合と練習での投球数を制限するガイドラインを発表しました。
- 試合では1日7イニングまで。
- 2日間連投の場合は合計10回まで。
- 1日に複数試合登板、2日連続で計5回以上投げた場合、翌日の試合には投手・捕手としての出場は不可。
- 練習での全力投球も1日70球まで、週に350球が目安。
チームに複数の投手を育てる流れを作り、故障を減らすのが目的とのこと。2015年度からの適用です。
根性!!
日本では独特な精神論が根付いていて、根性という一言がものすごく重要視されていることが大きな障害になっているともいわれています。
1年中休まず練習することが当たり前のような風潮はやめて、しっかり休養を取ることの必要性をもっと周知していくべきなのでしょう。
また専属のトレーナーを常設することも考えるべきかも知れません。
但しボランティアでお願いするという訳にはいかないので、高野連が補助金を出すなどのシステムを検討すべきでしょう。
子ども達にとって
「将来が大切か、今が大切か」
難しい選択です。
年齢を重ねると、将来が大切だと言いたくなるのですが、若い頃はそんなことは考えられなかったような気がします。
どうなるか分かりもしない将来を語る大人の意見を小馬鹿にし、「今が大切」なのだと強く思っていた時期が確かにありました。
そんな子どもの意見に耳を傾けながらも、身体を大切にすることの必要性を説得できる知識を身に付けると同時に、全国大会に出場出来なければ注目されないというイメージも払拭しなければいけません。
指導者も大変だから
指導者もあらゆる情報を集め、子ども達に正しい指導を行なっていくのは本当に大変なプレッシャーだと思います。
時間や休みを削って自分のプライベートを犠牲にして頑張っていても、良い結果を出せなければ非難されることだって多いでしょう。
本当は一人に任せっきりにせず、複数の人数で随時コミュニケーションを取りながら、子ども達に指導していくことが理想ですが、意見や方針の違いなどから現実的には難しい部分があるのでしょう。
これは今後の課題の一つとも言えそうです。
「スポーツをする子ども達の将来を慎重に考える」
これからはスポーツをする子どもの将来を考え、今までのやり方をもう一度見直し、正しい知識と分かりやすい指導をすることが大人に求められています。
子ども達の可能性を引き出し支えながら、一緒に夢を追いかけられる大人でありたいと思います。
「投球数を制限するガイドライン」っていうのができたんだ。これからは1人のエースが活躍する試合じゃなくて、2番手、3番手とたくさんのエースが活躍する試合を見れるかもしれないね!