暦・カレンダー

卯月・清和月・木葉採月。旧暦4月は猫の手を借りて癒されよう

Written by すずき大和

5月後半、2015年は記録的に早い5月の暑さを記録していたようですが、暦の上ではようやく旧暦の4月を迎え、名実共にいよいよ「夏」シーズン到来です。

昔の中国では、旧暦4月1日は「清和節[せいわせつ]」と呼ばれていました。

清和とは、

“空が晴れて和やかなこと”

という意味です。

若葉が芽吹き、梅雨に入る前の爽やかな時季を表わしています。

それが日本にも伝わり、卯月(旧暦4月)のことを別名で「清和月[せいわづき]」と呼ぶこともありました。昔の人は季節感の表現が豊かですね。

今回は、そんな旧暦4月と“猫”の関係の話です。



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卯月は煩雑な農作業の集中期

田植えが終わってやれやれ・・・とはいかない

旧暦(太陽太陰暦)の日付は、一年で11日くらいずれていくので、旧暦○月といっても、その年により、季節が一か月くらい違うことがあります。

2015年の旧暦4月1日は、現在の太陽暦の5月18日でしたが、2014年の4月1日は、4月29日でした。

だいたい今の5月から6月半ばくらいの時季に旧暦の4月はやってきます。

昔の日本は、江戸などの都市部を除くとほとんどか農村でした。

この期間は、地域により多少の前後がありますが、ほぼ日本全国の田植え時期と重なります。

お米の国日本ですから、田植えは夏の農繁期前半の大きなクライマックスです。

村中みんなで協力して行う春の一大事業のひとつです。

ところが、実はこの時期は更に、重要な農作業が目白押しに続きました。

昔は一つの作物だけ大規模作付けするような農業ではなく、米も麦も野菜も養蚕も、なんでもやって自給自足で生きていました。

田植えが終わるか終らないかの季節は、竹藪では筍採取の終盤で、蚕は繭を作る直前で、紅花の花や麦畑もこれから収穫期に入ります。

田植えが終わったからほっと一息、なんてしている暇もない農繁期でした。

暦に反映された季節のお仕事

昔から自然の細かな移ろいを大切に感じていた日本人は、日付を表わす暦の他に、季節を表わす様々な表現を定めた暦を使っていました。

旧暦=太陽太陰暦の

“太陽暦”

にあたる暦です。

「立春」とか「節分」とか「八十八夜」とか、カレンダーに小さく書いてあるやつですね。

5日間ごとの季節わ表わす「七十二候[しちじゅうにこう]」という暦でも、農繁期らしく、この時期田畑の様子を表わした言葉ばかりが続きます。

先ほどの農作業項目は、まんま七十二候の表現です。

  • 5/6~10頃  蛙始鳴[かわずはじめてなく] ※蛙がなくのが田植え期の知らせ
  • 5/11~15頃  蚯蚓出[みみずいずる]  ※みみずは田畑の土を耕してくれる虫
  • 5/16~20頃  竹笋生[たけのこしょうず] ※筍の頭が土から出ると収穫期終了
  • 5/21~25頃  蚕起食桑[かいこおきてくわをはむ]
  • 5/26~31頃  紅花栄[べにばなさかう]
  • 6/1~5頃   麦秋至[むぎのあきいたる]
  • 6/6~10頃  蟷螂生[かまきりしょうず]  ※カマキリは、畑の害虫退治役

月の名前の別名は、毎月30~40くらいありますが、4月の呼び名の中にも農作業の表現がありました。

「麦秋」は、そのまま4月の別名になっています。

「蚕起食桑」は、繭を作ってさなぎになるために、メチャメチャ餌を食べる時季ということですが、いい繭を作ってもらうためには、餌の桑の葉を大量に採ってきて養蚕舎に入れないといけません。

それを表わす4月の別名として「木葉採月[このはとりづき]」というのもありました。

作物と蚕の番人は、猫にお願い

招き猫の由来

ここでちょっと話をそらしますが、招き猫って皆さんご存知ですね。

片手を顔の横にあげて「おいでおいで」して座っている、商売繁盛の縁起物の猫の置物です。

最初に招き猫を作って売り始めたと言われる由来には、いくつか説があるのですが、なぜ猫が縁起物になったのか、という点については、共通しています。

昔、農村の多くで養蚕が行われていた頃、さなぎになる直前の丸々成長した蚕の幼虫をネズミが食べてしまうことがよくありました。

ネズミは蔵の中の収穫した農産物もよく食べてしまうので、田植えが始まる頃になると、ネズミ除けのために猫を借りて来て、養蚕舎や蔵の中に放つことがよくありました。

忙しくて何でもいいから手伝って欲しい時に使う

「猫の手も借りたい」

という慣用句はここからきていると言われます。

猫は養蚕の守り神の動物とされていました。

農村での養蚕は時代と共に廃れていきましたが、「守り猫」を縁起物とする風習は、そのまま商人文化に引き継がれ、いつのまにか商売繁盛の守り神になって、招き猫が生まれたのだそうです。

4月の猫は役に立つ!

「猫の手も借りたい」という言葉は、今では

「(対して役に立たなくてもいいから)誰でもいいので手伝って欲しい」

という意味で使われます。

猫の手は、確かにたいして役にたつ仕事をしてくれるわけではありません。

が、昔々は、4月の猫は大いにお百姓さんたちの役にたっていたわけです。

わざわざ借りてきてまで働いてもらっていたのですから。

21世紀の卯月も、猫で癒されよう

田植え期の農家は、今現在でもやはり忙しい時期かと思います。

一方、市街地で暮らす多くの日本人にとって、ゴールデンウィーク明けの時季というと、5月病とか、蒸し暑くなってうっとおしいイメージだとか、あんまり活動的な印象ではないかもしれません。

地球温暖化のせいかどうかわかりませんが、今の5月は、確かに空は晴れていますが、急激な暑さの到来であんまり和やかな雰囲気ではありませんね。

最近は、小動物と一緒に過ごすことで得られる癒し効果に着目するセラピーも盛んです。

無気力に陥ったり暑さにイラッとしたりする5月は、表に出て、近所をうろうろしている猫と戯れてみるのもいいかもしれません。

発情期直後で子猫が生まれている時季でもあるので、身近に「猫もらって下さい」情報があれば、思い切って飼い始めるのもいいでしょう。

肉球の癒しパワーは、専門医のカウンセリングなどより、よっぽど元気をもらえそうな気がします。

猫の手はやっぱり役に立つものですよ。

まさケロンのひとこと

「最近元気ないかも」って感じてるみんな、猫ちゃんの肉球癒しパワーに頼ってみよう!

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。