カンヌ国際映画祭は毎年5月にフランスのカンヌで開催される世界3大映画祭の1つです。アカデミー賞などと違って、審査員は著名な映画監督や文化人で占められ、ロードショーになるような娯楽大作ではありませんが、じっくりと楽しむ良い作品がたくさんあります。
とりわけ、エントリーされる作品は製作国で限定されていないので、国際色が豊かな映画を楽しむことができます。そこで今回は、
「カンヌ国際映画祭で賞をとった日本の作品」
をご紹介したいと思います。
『殯の森』(もがりのもり)
受賞データ
第60回カンヌ国際映画祭のグランプリを受賞しました。グランプリは、最高賞に次ぐ審査員特別大賞です。極端な言い方ですが、その年のカンヌ国際映画祭にエントリーされた作品の中で2番目に良い作品だった、ということです。これはすばらしい快挙ですよね。
監督
監督は「河瀬直美」さんという、女性の映画監督です。第50回カンヌ国際映画祭で新人監督賞を27歳(史上最年少)で受賞しました。さらに第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門の審査員に選出されています。
カンヌに縁がある監督さんですね。ご自身の故郷である奈良と家族をテーマに、たくさんの作品を発表されています。
あらすじ
家族を失った、認知症の老人と女性介護士のふれあいを通し、「人間の生と死」を丁寧に描いたドラマです。河瀬監督が故郷である奈良県でのお葬式の風習からインスピレーションを得て製作された映画です。
特筆すべきは、主演男優が映画俳優ではなく、奈良市で文学活動をされている古書店の店主さん、つまり、一般の方だということです。他にも、地元の住民の方がエキストラとして出演しています。
『うなぎ 』/ 『楢山節考 』(ならやまぶしこう)
2つ同時に紹介したのは、これらの作品の監督である今村昌平監督は、カンヌ国際映画祭で、なんと2回も最高賞である「パルムドール賞」を受賞した日本人の映画監督だからです。それにも関わらず、今村監督は2回とも授賞式に出席していません。
受賞データ
楢山節考(ならやまぶしこう)
1983年のカンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞。パルム・ドールはカンヌ国際映画祭での最高賞です。
うなぎ
1997年のカンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞。
監督が授賞式に出席ができなかった理由
楢山節考(ならやまぶしこう)
同じ年に大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』がエントリーされていて、パルムドールの最有力候補と言われていました。今村監督の楢山節考は誰からも期待されていなかったのです。
そのため監督をはじめ、関係者は誰もカンヌ国際映画祭に行こうとせず、プロデューサーの日下部さんという方が、主演女優である坂本スミ子さんと2人でカンヌに行きました。
ところが、楢山節考がパルムドールを受賞してしまい、映画会社の社長も今村監督もいなかったため、世界中の映画関係者や報道関係者が日下部さんの元に集まり、祝辞を述べました。
日下部さんは最高の夜になったそうですが、一番の功労者の監督が不在というのが、とてももったいない気がしますね。
うなぎ
こちらも、同じような理由です。作品がエントリーされ、今回は監督も俳優たちも映画祭に参加しました。ですが、『うなぎ』は、以前の今村監督の作品に比べると、おとなしめな作品になるため、まさか受賞するとは誰も予想していませんでした。
それで、授賞式の前に全員が帰国してしまったそうです。受賞の可能性が高いと分かって、大急ぎで監督が呼び戻されたのですが、残念ながら、授賞式には間に合いませんでした。
あらすじ
今村昌平監督が撮る映画は、人間の欲望を赤裸々に描いた作品がとても多いです。
楢山節考(ならやまぶしこう)
『楢山参り』という姥(うば)捨て山の風習がある、貧しく食料が乏しい農村が舞台。生き残るために厳しい掟(おきて)があり、それを破ると、凄惨(せいさん)とも言える罰がくだされます。そんな閉塞(へいそく)的な環境で、岩にかじりつくようにして生きていこうとする人々の話です。
うなぎ
不倫をしていた妻を殺してしまった男の、刑務所を出所した後、偶然命を助けた女性や街の人たちとの「心の交流」が描かれています。
賞を受賞したときのエピソードを聞くと、その映画がより楽しめますよね。筆者は3つとも見ていますが、どの映画も素晴らしくて、どれもおすすめですよ!
帰っちゃだめだよ~せっかく行ったんだから授賞式には出席しないと!