2016年7月18日海の日を契機に、オレンジ色が、日本の津波防災のシンボルになります。
「防災をもっとオシャレでわかりやすく」
というコンセプトで活動するNGO、
『日本財団・海と日本PROJECT』から助成を受けて進める、津波防災プロジェクトが、2016年から始まります。
一連のニュースを見ながら、
「海と共に生きる未来をつくる」という視点に立ち、
「自然と闘う」のではない、
「自然と共存する」防災のあり方を問いかけていく
という、若者のビジョンについて、考えされられるものがありました。
津波が来た時の避難場所をオレンジ色でアピール
津波を防ぐだけでなく、いつ津波が来ても大丈夫な体制を
これまで、人々は津波の度により高くて頑丈な防潮堤を建築してきました。しかし、東日本大震災では、巨大な防潮堤も乗り越える津波が、人々の日常を破壊しました。
再び東北の海では、巨大防潮堤が建設されていますが、それだけでは、やがて人の記憶が薄れ、脆弱な体制のまま、想定外の災害に見舞われて、大きな被害を繰り返すのではないか・・・・防災ガールの発想の始まりは、そこからでした。
防潮堤に頼るだけでなく、常日頃から
“もしもに供える身近な減災・防災を心がける”
ことで、人々の防災気運を高めていれば、強靭な体制が保たれ、
“いざという時の被害を最小限に抑えられる”
というビジョン・・・・
防災ガールの目指すのは、これまでにない、ある意味受け身の姿勢の防災です。しかし、これは、私たちをとても強くする防災ではないかと思いました。
このプロジェクトは、これまでになかった「海の防災」「津波防災」の在り方の提唱です。
合言葉は「ハッシュビーオレンジ」
日頃からの心がけ、といわれても、面倒くさい防災訓練や、情報の一方的提供だけでは、人々のモチベーションは高まりません。
もっと身近で気持ちを明るくする防災
ほんのちょっとの関心を引くことを促す防災
そんな観点から生まれたのが今回のプロジェクト
『#beOrange(ハッシュビーオレンジ)』
です。
具体的には、
“緊急時の津波避難場所にオレンジ色の旗をたてていく運動”
を、楽しく進められる要素をコーディネートしながら展開していくようです。
避難所のマーキングは、実際の被災時の避難誘導を助け、逃げる人たちの冷静な行動を喚起する効果もあります。また、日常から繰り返し旗を目にし、避難訓練などにも活用することで、防災の認識も高まるでしょう。
2016年度の展開
初年度は、南海トラフ地震の際の津波被害が予想される海辺の町3か所
「愛知県」・「静岡県」・「高知県」
で展開します。
その他、7月の海の日に東京でオープニングイベント、11月の津波防災の日(11/5)にクロージングイベントを行います。海の日は、オレンジ色のTシャツ集団が東京の街を練り歩き、まずは津波防災のシンボルカラーの周知をアピールする予定です。
そして2017年度以降も、新しい津波防災のロールモデルが全国へ、世界へ展開していくことを目指しています。
防災ガールの取組み
一般社団法人防災ガール代表・田中美咲という人
防災ガールを率いる田中美咲代表は、東日本大震災の春に社会人になった人です。日経新聞のインタビュー記事によると、社会が重苦しい雰囲気の中、関西の会社でソーシャルゲームを作る仕事をしていたそうです。
関西にいると、東北の現実がイマイチ遠い存在に感じられましたが、学生時代の友人たちが東北へボランティアなどに行くのを見ながら、
「自分はゲームなんか作ってていいんだろうか」
と思うようになりました。
結局、一年半後に退社。震災後に立ち上がった公益社団法人に入り、福島県庁と沿岸部8市町村の広報課の人々と一緒に、県外避難者向けの情報発信事業を始めます。この活動の中で、復興・防災というものの奥深さに気づき、
「東京に帰ったらこれを若い人たちに広める仕事をやろう」
と思うようになったといいます。
そして、立ち上げたのが防災ガールです。
無味乾燥で興味ない、そこに興味を持たせる展開を
緊急時もその後のケアも、被災者も含めて若い世代のボランティアの動きがとても重要になります。しかし、将来の災害時に活躍する、今の10代、20代、30代の人たちは、子どもや老人の世話が身近なその上の世代に比べ、防災への関心はとても低い、という現状があります。
田中さんは語ります。
「防災って面白くないんですよ。絡んでくる法律とか仕組みは調べれば調べるほど複雑だし、無味乾燥。ぶっちゃけ興味がわかない。」
「これをなんとか面白く、興味をもって挑戦できるようなものにしていきたいって思ったんです。そうしたことから防災ガールのテーマの根幹である『防災というものを面白く、興味深く“翻訳する”こと』が見えてきたんです」
2013年に設立された防災ガールは、
- ゲームのように行う避難訓練をプロデュース
- おしゃれでかわいい防災グッズを製作・販売
など、若者が関心をもつ防災をひたすら探求し、少しずつ実績が認められてきました。
今回のプロジェクトもその延長線上にあります。
「草食系」だの「ゆとり」だのいわれても、そういう若者だからこそ、「海と共に生きる」道も躊躇なく選択できるのかもしれません。
「チャラチャラ遊び感覚で津波防災なんていうな!」
と思う人もいるかもしれませんが、どうかしばらく見守ってあげてほしいな、という気もするのでした。
「やらなきゃな」っていうより、「やりたいな」っていう方が真剣に向き合えるかもしれないよね。いろんなカタチがあっていいと思うんだ~。