舞台の上で俳優たちが歌って踊るミュージカル。せりふだけでなく、音楽、歌、ダンスを組み合わせた独特の演劇スタイルです。
このようなスタイルはどのようにして始まったのでしょうか?
その幕開けは、映画の始まりと重なり、切っても切れない関係があります。
ミュージカルのルーツはオペラ
ミュージカルは、庶民のためのエンターテインメントとして生まれました。と言っても、
「この作品がミュージカルが始まり」
という特定の作品はありません。1900年代に入って、オペラやオペレッタが人気でしたが、敷居もチケットも高かったため、誰もが気さくに楽しめるミュージカルの原型が生まれました。
当初のミュージカルは、オペラの有名な曲のサビの部分をつないだレヴュー形式でした。レヴューとは一種のバラエティーショーで、寸劇、歌、ダンスなどの演目が上演されていました。そこから、
- マジック(手品)ショー
- ボードビルショー
の2つに分かれました。
蛇足ですが、海外では今でもマジックショーが大変な人気で、よくテレビで中継されています。それはレヴューから発展し、根付いたものだったんですね。
ボードビルショーは、
「チャップリンが出ていた」
と言うとイメージがつかみやすいと思います。当時の芸人たちが舞台に立ち、歌、踊り、手品、コメディーなどを上演していました。チャップリンの映画進出からわかるように、ボードビルショーは、後に映画産業と結びついていきます。
ミュージカル第一作は『ショウボート』
1927年にブロードウェイで初演された
『ショウボート』
が、現在のミュージカルのスタイルで上演された最初のミュージカルと言われています。
『ショウボート』以前は、オペラ、オペレッタとミュージカルの区切りが難しかったのですが、第1次世界大戦後にアメリカで、
- 地声による自由な歌唱
- 俳優が歌って踊る(オペラではダンスはない。オペレッタは歌い手と踊り手が分かれている)
- 打楽器を多用したバンド編成
- 英語歌詞
といったスタイルが定着しました。『ショウボート』は現在でも人気の演目で、たびたび再演されています。『ショウボート』を始めとして、次々とミュージカルが発表されていきました。
ブロードウェイミュージカル全盛期
1940年頃から70年代がブロードウェイミュージカルが全盛期です。サウンドオブミュージックやウエストサイドストーリーなど、有名作がこの頃初演されました。
舞台俳優たちがマイクを通して歌うようになったのもこの頃です。また、上演されたミュージカルショーは、どんどん映画化されていきました。中には
『巴里のアメリカ人』
『恋の手ほどき』
など、アカデミー賞を受賞した作品もあり、劇中の歌は、今でもスタンダード・ナンバーとして歌われています。
ジュークボックス・ミュージカル
1980年頃になると、ミュージカル業界は肥大化します。作品にかける予算が膨れ上がったものの、それらの作品の商業的失敗が相次ぎ、ミュージカルは衰退していきました。
そこで注目されたのが、人気ミュージシャンをフィーチャーした小規模なミュージカルです。そこから、若者向けに有名な曲を採用した、ジュークボックス・ミュージカルが発展していきました。
劇中でヒット曲がたくさん歌われることから、ジュークボックスを文字った名前がつけられました。代表作に、ABBAの音楽をベースにした
『マンマ・ミーア!』
や、クイーンの
『ウィ・ウィル・ロック・ユー』
があります。
ディズニー映画のミュージカル化
1990年代に入ると
『美女と野獣』
『ライオンキング』
をはじめとする、ディズニーのアニメがミュージカル化されるようになりました。大人も子どもも楽しめるため、世界中で大ヒットしました。
現代のミュージカルの主流は?
ディズニーアニメのミュージカルが大ヒットしたことで、ミュージカルが再び盛り上がりを見せました。
2003年、
『シカゴ』
がミュージカル映画として34年ぶりとなるアカデミー作品賞を受賞したことをきっかけに、1970年代のブロードウェイのヒット作がどんどん映画化されました。
最近では
『レ・ミゼラブル』
が記憶に新しいですよね。本来、ミュージカルの映画では、歌は事前に録音した曲を使い、役者は口パクというスタイルですが、『レ・ミゼラブル』では歌はすべてその場で歌っていて、映画と舞台が融合した新しい形になっています。
まとめ
ミュージカルは大衆芸能として生まれ、繁栄と衰退を繰り返しながら、映画と密接に結びついてきました。大衆芸能といっても、日本でミュージカルを楽しむにはまだまだチケットも高く、上映数も少ないのが現状です。
劇場に足を運べないときは映画でミュージカルを楽しんでくださいね。過去の作品をいつでも楽しむことができます。
ミュージカルってなんだか敷居が高いイメージがあるけど、実はけっこう身近なものなのかも。