日本のミュージカルはなぜ一般化しないのか
日本では、ミュージカルを楽しんでいるのは一部のミュージカル好きな人たち。大多数の人にとってミュージカルと言えば、ブロードウェイのミュージカルを映画化したものではないでしょうか?
ニューヨークやロンドンなど、都心部にいくつも劇場があり、
『仕事帰りに気軽に劇場に足を運ぶ』
という楽しみ方が日本で浸透しないのはなぜでしょう?
日本のミュージカルの上演スタイル
日本ではどのようにしてミュージカルが上演されているのでしょうか。
劇団形式
劇団とは、俳優、制作部門、劇作家、演出家などがいる、舞台演劇で活動している団体のことです。欧米では劇場に所属している場合が多いです。日本のミュージカルでは、
- 劇団四季
- 宝塚歌劇団
- わらび座
が有名です。
プロデューサー・システム
アメリカで発達した演劇を上映するためのシステムです。プロデューサーが企画に基づいて資金を集め、劇場を借り、俳優や制作スタッフを集めます。制作の主体は、映画会社や芸能プロダクションなどさまざまです。
有名なのは、大手芸能プロダクションのホリプロが、毎年、夏に上演しているピーター・パンです。映画で有名な東宝株式会社は演劇も手がけていて、マイ・フェア・レディやエリザベートなどの有名作を上演しています。
利益が出にくい日本のミュージカル
ロングラン上演が難しい
日本では、専用の劇場を持つ劇団以外は上演期間が週単位、長くてひと月ほどです。これは、日本の劇場の契約が週単位か、月単位が多いためです。
- チケットが10,000円として、
- 2,000人収容できる劇場で、
それぞれ1週間、1カ月ミュージカルを上演したとします。
1週間の場合
1カ月の場合
上記の数字は単純にチケットの売上です。客数を2,000人と仮定しましたが、これは帝国劇場や宝塚の大劇場クラスです。
そこを常に満席にして、仮に1カ月公演し、1日に2回公演したとして、そこから俳優のギャラ、スタッフたちへのお給料、劇場のレンタル代、舞台装置や衣装に宣伝費などの経費が引かれ、いくら利益が残るのでしょうか。
ブロードウェイの人気作品、『ウィキッド』を劇団四季で上演した際は、衣装、大道具だけで10億円以上かかったと言われています。1カ月の公演ですら採算があいません。劇場がもっと小さくて収容人数が少なかったり、チケットが売れないと利益どころか「赤字」です。
一方欧米では作品に人気が出て、ロングラン上演になると、5〜10年間もの長期間、上演し続けます。そうなって初めて、ミュージカルは高い収益を生むことができるのです。
短い上演期間が生むデメリット
利益を温存するため、高い制作費がかかる大作を制作できません。短い上映期間で安定した集客を得て、利益を出すために、
- 座頭に知名度の高いスター俳優を起用
- 演目はブロードウェイの人気作品になりがち
です。また、上演し続けることで、芝居の内容に手直しを加え、完成度を高めていくことが難しいのも問題です。
日本はミュージカルが育つ土壌がない
アメリカではオフ・ブロードウェイと呼ばれる100席から500席ほどの小さい劇場でもミュージカルが上演されていて、人気が出るとブロードウェイに進出します。
このように、小劇場から躍進した代表作に
『コーラス・ライン』
があります。日本では新しいミュージカルが上演される機会が少なく、発表する場所がありません。これではミュージカルの作家、脚本を書くクリエイター、ミュージシャンが育ちません。俳優も出演回数をこなすことができず、キャリアを積むことができません。
敷居が高い日本のミュージカル
高いチケット代
公演によっては、チケット代が12,000円もする演目もあります。これが、元から少ないミュージカル人口の足をますます劇場から遠ざけています。「利益が出にくい日本のミュージカル」でご説明した通り、短い上演期間で利益を出すためですが、もうひとつ理由があります。
1日2公演の功罪
最近のミュージカルの傾向として、歌のパートが増えています。それがチケット代の高騰に直結しています。欧米では1日1公演ですが、日本のミュージカルは上演期間が短いため、昼と夜の1日2回公演が中心です。
俳優の喉の負担を配慮して、ダブルキャスト、トリプルキャストが採用されます。ダブルキャストが採用されるのは、もちろん主役級のキャストです。つまり、最もギャラが高いとされる俳優たちです。
衣装もそれぞれの役者のサイズに合わせて作るため、衣装代が余分にかかります。それら全てが入場料に跳ね返ってくるのです。
まとめ
日本では、ミュージカルが
「ショービジネスとして成り立っていない」
のが現状です。その中でも、劇団四季、宝塚歌劇団、わらび座は養成所も併設し、人材の育成に努めています。
また、どの劇団もオリジナル作品に力を注いでいます。ブロードウェイの人気作品に比べるとまだまだ目立ちませんが、今後に期待したいですね。
日本人がもっとお金持ちになれば、、!!