8月は、暦の上では秋真っ盛りですが、体感的には夏休みど真ん中のシーズンです。海やスイカやギラギラと輝く真夏の太陽のイメージの、一番暑さ厳しい季節です。
日本では、8月の誕生花に「ひまわり」がラインナップされています。花屋さんの軒先にも、ひまわりのアレンジメントがたくさん見られます。
ひまわりは英語では
「Sunflower(サンフラワー)」
“太陽の花”と呼ばれています。
太陽の季節8月の誕生花として、これ以上ないくらいピッタリくる花!
・・・・かもしれません!?
ヒマワリは太陽の花なのか?
ヒマワリは太陽に向かって咲くのか?
ヒマワリは、漢字で
「向日葵」
と書きます。
と花名を説明されたことがある人も多いでしょう。
しかし、ヒマワリ畑の写真を見ると、花の横や後から日光があたり、花に影ができているショットも、結構たくさん見られます。花がみんな同じ方向を向いていないこともあります。
背後から日光が当たっているヒマワリの群生
実は、大きく育った真夏のヒマワリは、花の向きが一定方向で固定されており、太陽の方向に合わせて、朝から夕方まで花の向きが変わっていくわけではないのです。
向日性と屈光性
植物が、太陽(光)の方に向かって伸びる、また葉や花を開く性質を
「向日性(こうじつせい)」
「屈光性(くっこうせい)」
といいます。
多くの植物は、茎の先端(成長点)は屈光性を持ち、陽の光がよりたくさん当たる方に向かって伸びていきます。植物は、光合成によって養分を作って生きていますから、当然といえば当然です。
ヒマワリも茎が伸び続けている間は、太陽の方向に合わせて、茎の先端=花芽の向きを動かしています。しかし、茎の伸びが止まる頃・・・だいたい蕾が大きく膨らんでくる頃になると、向きが安定して動かなくなります。
多くの花は東向きのまま安定するため、花畑を見るとみな同じ方向(東)に向いているように見えます。よく見ると、花畑の西の端のほうや、何かの理由で東側からの光がさえぎられるような条件がある場所では、花は日当たりのいい方に向いて咲いています。
向日性はなぜ起きる?
花の向きは茎の成長で調整される
なぜ花が咲くころは向きが安定してしまうのか?
なぜ「東向き」で安定する花が多いのか?
その理由を理解するためには、まず、花の向きを動かしているものの正体を知りましょう。
向きをコントロールしているのは、
“茎の成長”
です。
植物の成長を促す命令を出す役割をしているホルモンがあります。
「オーキシン」
と呼ばれるそのホルモンは、花が向日性を持っている植物では、茎全部にまんべんなく作用しません。陽がよく当たっている側の反対側に、オーキシンが集中する性質があります。
つまり、陽が当たっていないほうの茎が当たっているほうよりよく伸びるようになっています。部分的に茎の成長が違うと、茎の先端に付いている花は、伸びてきたほうの茎に押される形で、反対側に傾きます。
春に芽を出し、真夏までに1mを超える高さにまで成長するヒマワリは、一日の茎の成長も早いです。朝から夕方まで、常に太陽と反対側の茎が花を押し上げてぐんぐん伸びるので、花は太陽を追いかけるようにどんどん向きを変えていきます。
青い光が好き
茎の成長がだんだん鈍り、やがて止まってしまう過程で、花の向きが東に統一されていくのは、東から差す日光と、西から差す日光では、目には見えませんが、光の性質がちょっと違っているためです。
日の出の朝焼けより、日の入り時の夕焼けの方が、赤い空の色がより鮮やかで、長時間続きますね。あれは、西日のほうが、青い光が届きにくくなるためです。日中、生物が活動的に動くことで、大気中にチリや誇りがたくさん混ざるので、夕方はそれらに青い光が吸収されてしまうのです。
植物が光合成を行うために大事なのは赤より青に近い光です。そのため、成長のスピードが遅くなってくると、一日の青い光の照射量が多い方向に、だんだん花の向きが揃ってくるのです。
太陽を追いかけなくても、太陽の花
ヒマワリはお日様の紋章
さて、以上のように、
という常識は、実は間違っていたわけです。
が、だからといって、ヒマワリが“太陽の花”と呼ばれるのに相応しくないか、というと、そんなことはありません。
その花の形がそもそも、大昔から人々が描いてきた太陽のシンボルにそっくりです。
原産地の南米では、ペルー帝国の太陽信仰のシンボルとして、ヒマワリの意匠もよく使われていました。スペインの侵略以後、インカ文明と共にヒマワリは西洋に伝わり、いくつもの言語で
「回る太陽」
「太陽の花」
という意味の花名が付けられました。
日本人はヒマワリ好き
日本には、大陸経由で17世紀に伝えられました。ヨーロッパ以上に、ヒマワリ人気は高いものがあります。夏の誕生花にヒマワリをあげているのは日本だけです。
日本人の夏の原風景の中に、ヒマワリは印象深く刻まれています。太陽の象徴だけでなく、まさに、
“太陽の季節=夏そのもの、のシンボルの花”
なのでしょう。日本人にはやはり
「8月といえばヒマワリ!」
がしっくりきます。
ヒマワリ、あの黄色具合が気持ちいいんだよね~。ずっと見てたくなる。で、あんまり顔を近づけるとミツバチに刺されそうになる。