10月になりました。
暦の上では秋分の期間の後半にあたり、草木や旬の食べ物も秋の話題が盛りとなっています。
もう金木犀の香りが漂っている地域もあるかもしれません。
金木犀は花の時期が短く、その強い香りが街に漂うのは、早い時は5日くらい、長くても10日余りですが、甘く強い香りの印象は強く、多くの人に秋の到来を感じさせる風物詩になっています。
桜と同じで、開花の時季は年によって10日くらいズレます。
だいたい9月下旬から10月上旬に開花することが多いです。
まだあまり生態が解明されていない部分も多い花で、珍しい特徴もいろいろ持っています。
今回はそんな金木犀のあまり知られていないウンチクについて、いろいろある花言葉を起点にしてご紹介します。
甘く強い芳香 花言葉は「初恋」「陶酔」「真実」
インパクトの強すぎる香り
金木犀の特徴といえば、まずはあの強烈な甘い独特の香りです。
一度嗅いだら忘れない芳香は、強い鎮静・リラックス効果を持ち、思わず酔いしれてしまう人もいます。
そんな甘く忘れられない香りの刺激に虜になってしまうところから、
「初恋」「陶酔」
という花言葉が生れました。
また、何キロも離れた所までも届くと言われたその香りのため、咲いていることを隠し覆すことはできない、という意味で「真実」「真実の愛」という花言葉もあります。
ヨーロッパ人にはあまり好まれなかった香り
金木犀の仲間は中国南部が原産と言われ、中世以前から、中国ではお香やお酒やお茶として親しみながら、その香りを楽しんでいました。
生薬や食用にもされています。
日本でも飛鳥時代の頃から金木犀の仲間の銀木犀があったとされ、その香りを好んで庭木として植えてきました。
一方、ヨーロッパでは昔はこの香りは強烈すぎてあまり好まれず、「アジア人の好む香り」と長年言われて、パヒューマーたちからもあまり興味を持たれていませんでした。
シルクロードを通ってくる花から抽出した高価な精油は、そのままの香りを楽しむより、他のいろいろな香料と共にフレグランスの材料として使われていました。
最近になり、アジアブームに乗って、木を庭に植えたり、アロマオイルとして金木犀の精油を使う人も増えてきたようです。
芳香剤の金木犀は人工生成した香り
日本では、1970~80年代に、トイレの芳香剤として金木犀の香りが定番人気商品となっていました。
もともと、汲み取り式トイレの近くに金木犀の庭木を植える習慣があったこともあり、今も年配者の中には金木犀=トイレの香りという印象が強い人が多いそうです。
しかし、この芳香剤の香りは、実は人工的にいくつかの香料をミックスして作りだしたものです。
本物の香りを完全に抽出するのは技術的にとても難しく、実は、精油やお酒、お茶の香りは、本物の花の香りとは微妙に異なるものになっています。
小さく可憐な花 花言葉は「謙虚」「謙遜」
地味に小さく咲く花と香りの強さのギャップ
春の桜は、咲きだす前から注目され、蕾が膨らむ様子も逐一伝えられながら、開花を心待ちにされますが、金木犀は、香りが漂ってきて初めて開花を認識することが多い花です。
花の見た目は、決して桜のように華やかではありません。
枝も大きく張り出すことなく、こんもりと楕円形にまとまった樹形になるので、狭いところに植えるのに丁度いい庭木であり、花も小さく固まってちんまり咲きます。
外観は、全然目立たない地味な樹木なのです。
香りの強烈さに比べ、あまりに見た目が遠慮深いため、
「謙虚」「謙遜」
の花言葉になりました。
小さな花はもろく、環境に敏感
金木犀の小さな花は、大気汚染が進んだり、砂やホコリがたくさん降りかかるような環境では、成長が遅れたり、花を咲かせなかったりすることが知られています。
かつて高度経済成長と言われた頃、日本は今の中国のように、急激な工業化が進んでいました。
自然破壊や公害の発生が、広く社会問題化していた時代でした。
この時期、東京や大阪などの大都市では、金木犀が花をつけなくなる現象が見られ、このままでは螢のように都市から金木犀の花が消えてしまうのではないかと心配されました。
自動車の排気ガスや工場の廃棄に多く含まれる硫黄酸化物や二酸化硫黄などが大気中に増えてくると、金木犀は咲かなくなります。
幸い、その後公害の対策が進み、都市部でも綺麗な川や澄んだ空気が戻ってきました。
今では、都市部の金木犀もたくさんの花を付けています。
つつましい金木犀の花は、物凄くデリケートな一面ももっているのです。
一斉に咲いて一斉に散る 花言葉は「高潔」
黄色い絨緞を作るクローンの木々たち
金木犀の花は、同じ地域の木はほとんど同じ時期に一斉に開花します。
花房にたくさん付いている小さい花が順々に咲いていき、それぞれの花が4~5日でしおれることなくパッと花びらを散らしていきます。
だいたい10日から2週間くらいですべての花が散り、木の下は黄色い絨緞を敷き詰めたようになります。
その散り際の印象の潔さから、
「高潔」「気高い人」
という花言葉が生れました。
一斉に咲く理由は、日本国内の金木犀はほぼすべてが雄株であるため、繁殖は挿し木で行っているせいです。
つまり同じエリアの苗木のほとんどは同じ遺伝子のクローンなのです。
北からだんだん南下する開花前線
金木犀の開花のメカニズムは、まだ完全に解明されていませんが、その開花の条件としては、日照時間と気温が深く影響していると思われます。
真夏の暑さがある程度和らぎ、太陽の当たる角度・枝の間に差し込む日光の量などがある時点に達すると開花するようです。
ずっと古い時代の記録では、中秋の頃(9月初旬から中旬)に開花していた時代もあったようですが、少しずつ地球の温暖化が進んできた今、中国でも日本でも、9月下旬から10月初旬に咲くようになりました。
気温の低下が開花のきっかけとなるため、開花の前線は春の桜と反対に、東北・関東から九州まで、年により2週間から25日くらいかけて南下していきます。
最近、一度目の花芽が咲いてから、もう一度別の花芽がまた咲く「二度咲き」の現象が、たまに観測されており、これも温暖化の影響のひとつではないかと言われています。
花言葉にはもうひとつ
「変わらぬ魅力」
というものがあります。これは由来がよくわかっていません。
どんなに暑くて日照り続きの夏も、冷夏の年も、秋がくれば忘れずに季節を教えるように咲いてくれる花、だったのかもしれません。
環境汚染に敏感なことがわかっていますから、「変わらぬ魅力」がまた大気汚染で失われることが無いように、人間としては自然環境を守っていかないといけませんね。
金木犀の花言葉には
- 甘く強い芳香「初恋」「陶酔」「真実」
- 小さく可憐な花「謙虚」「謙遜」
- 一斉に咲いて一斉に散る「高潔」
- 「変わらぬ魅力」
があるんだね!たくさんのインパクトある特性も持ってるし、これはしっかり守っていきたいね!