8月9日10日は、8910=はくとう、の語呂合わせから
白桃の日
として、国内でも一番の生産量を誇る岡山の生産者らが東京で毎年キャンペーンを行っています。
毎年やっていて話題にもなるので、首都圏では「白桃の日」を知っている人が徐々に増えていますが、他の地域ではどうなんでしょう?
夏のご贈答果物としては高い人気を誇る岡山の桃ですから、もっと全国向けにも宣伝すれば、販売促進にもなりそうな気もします。
日本記念日協会に記念日認定してもらってもいいのに。
白桃はなぜ高級ご贈答品になったの?
大昔からの縁起物だった桃
桃は中国が原産と言われています。
中国では桃は特別な果物と見なされていました。
西遊記にも、孫悟空が天の桃の果樹園を守る役人に抜てきされますが、自ら不老長寿を企んで桃を全部食べつくしてしまう話が出てきます。
桃には邪気を祓う力があり、不老長寿の象徴ともされる縁起の良い物として、ずっと尊重されてきました。
日本には弥生時代に入ってきたと考えられていますが、やはり大昔から邪気を祓う力があるとされ、神事の際に献納されたり、葉や花を飾ったりしていました。
もともと邪気払いの季節行事だった上巳の節句(3月3日)にも丁度花期にあたる桃が使われ、桃の節句となりました。
絶大な支持の一番の理由は美味しさ
そんな縁起物としての歴史が長い桃なので、お盆の前の贈答週間お中元の際に、
とはいえ、人気が集中するのはやはりその品質が高く評価される
美味しい桃
です。
特に岡山を代表する品種
清水白桃
の評判と人気は物凄いものがあり、通販カタログなどの情報を見ても「清水白桃」の珍重っぷりは、お米で言うと魚沼産こしひかりみたいな扱いです。
甘露と呼ぶにふさわしい、まろやかで上品な甘味を持ち、芳醇な香りが強く、やわらかくてなめらかで果汁たっぷりの果肉の食感がたまらない清水白桃は、
桃の王様
のようです。
やわらかくて輸送が難しく、傷みやすい食材であるにも関わらず、こんなにお中元で人気が高いのは、手間のかかる輸送費も含め、高くとも食べるに値するだけの美味しいものだからでしょう。
岡山の白桃は世界的にも特殊な進化を遂げた桃
日本の桃の歴史
甘くてやわらかくて果汁たっぷりの桃は、日本の白桃の独自の特徴です。
邪気を祓うだけでなく、薬用にも用いられ、平安時代から珍重されて食べられていましたが、のどを潤すみんなの大好きな水菓子なら、瓜のほうがずっと人気ものでした。
江戸時代から桃の栽培は始まっていましたが、観賞用・薬用が主目的でした。
明治になって甘くて水分の多い品種の桃が初めて輸入されてから、一般にも広く日常的に食べられるようになり、栽培者たちも本格的に品種改良に取り組むようになりました。
明治の桃太郎「大久保重五郎」
岡山県で果樹園をやっていた
大久保重五郎さん
は、明治初期から桃の栽培に情熱を注ぎました。
そして新種の白桃を発見するに至り、これが、現在の岡山特産の白桃のルーツとなりました。
大久保さんは「明治の桃太郎」と呼ばれるようになり、やわらかくて甘い新種の桃は
大久保
と名付けられ、岡山に広まっていきます。
多くの人たちが更に品種改良を重ねていきました。
昭和初期、西岡仲一さんという人が、白桃系の優良品種を交配させ、育成して作り上げたのが
清水白桃
でした。
今までの白桃より更にやわらかく、すぐに人気の品種となり、現在に至っています。
西洋に伝わった桃との大きな違い
シルクロード伝いに西洋に伝わった桃は
ヨーロッパでも桃はどんどん品種改良されていきましたが、瑞々しくやわらかく変化していった日本の桃とは反対に
- 水分が少ない
- 栄養分が濃い
- 果肉がしっかりとして崩れにくい
加熱調理にも向く形に進化していきました。
色もどんどん濃くなり、現在の黄桃が作り上げられていったのです。
食物繊維もミネラルも白桃より豊富な黄桃は、生食もされますが、缶詰加工の保存食としても広まりました。
残念ながら、西洋では邪気払いや不老長寿といった神がかり的な珍重はされず、傷みやすいが美しく美味しいところから、若い女性に例えられ、「ふしだらな女」や「乳房」を表現する俗語になったりもしました。
欧米人から見ると、大げさに丁寧に扱われる瑞々しい日本の白桃は、物凄く上品で高級な女性に見えるかもしれませんね。
桃って中国が原産やってんなぁ~
昔は食用ってよりは、観賞用とか薬なんかに多く使われてたんやね!