食の豆知識

ダイエットペプシは危険なの?人工甘味料アスパルテームの話

Written by すずき大和

2015年4月末、ペプシがダイエットペプシに使われている人工甘味料を変更することを発表し、アメリカを初めとして世界中でニュースになっていました。

ペプシは、

「アスパルテーム」

という人工甘味料を使わないコーラの発売をこの夏開始する方針で、現在発売の準備を整えている状態です。

日本でもネットニュースではいくつか流れていましたが、アメリカほど大きく話題にはなりませんでした。



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人工甘味料はお財布とダイエットの味方?

人工甘味料の移り変わり

人工甘味料というと、年配の人は

  • 「サッカリン」
  • 「チクロ」
  • 「ズルチン」

などの名前を思い出すかもしれません。

いずれも戦後すぐの頃、砂糖が高くてそんなにたくさん手に入れられなかった時代、安価で作られる駄菓子やコーラなどに多く使われていました。

しかし、次々にからだへの悪影響が報告されたため、使用が制限されたり禁止されたりしました。

現在の主流となっている甘味料は、

  • 「スクラロース」
  • 「アセスルファムカリウム」
  • 「アスパルテーム」

です。

ことにこのアスパルテームは世界中100ヶ国近くで認可され、使われています。

日本では、お菓子や飲料、惣菜、漬物、調味料など、約600品目の加工食品に入っています。

極めてローカロリーなため、世界中のダイエット飲料と言われる飲み物のほとんどはアスパルテーム入りです。

どうして砂糖じゃなくて人口甘味料を使うのか?

ダイエットコーラと普通のコーラを飲み比べると、味の点ではほとんどの人が砂糖入りの普通のほうが美味しいと言います。

人工甘味料は、砂糖の何十倍、何百倍の甘さがありますが、砂糖の持つ柔らかな風味や甘味の立ち上がり方は模倣するのが難しいようです。

それなのになぜ、砂糖を使わずに人工甘味料を使う加工品が多いのでしょうか?

カロリー摂りすぎ問題にシビアな関心が集まるアメリカでは、人工甘味料の注目度がとても高いです。

血糖値を急激にあげてしまう砂糖と違い、人工甘味料を使ったスイーツならば糖尿病の人も楽しめます。

健康促進の面から家庭でも普段から人工甘味料を使っている人は多いのです。

もうひとつ、人工甘味料が加工品に多く使われる理由は、値段の問題が大きいと思われます。

現在は、戦後のように品薄で供給量が足りないわけではありませんが、砂糖と比べて少しの量で足りる人工甘味料を使うと、コストがかなり抑えられます。

繰り返し出て来る安全性疑惑

そうして重宝される人工甘味料ですが、多くが天然素材をまったく使っていない化学的に合成した化合物であるため、健康への影響を心配する声は日本でも海外でも必ず出ます。

アスパルテームも、繰り返し安全性への疑念が発表されたため、日本の生協やファミレス業界などの中にも、一時アスパルテームの扱いを止めた所がありました。

しかし、世界中で様々な科学的検証を繰り返した結果、明確な危険性は証明できませんでした。

ので、今もたくさん使われています。にも関わらず、特にアメリカを中心に、いつまでもいつまでも疑念の声が絶えません。

そしてついに、ペプシでは消費者の不安をなくすために、アスパルテームなしのコーラを製造販売する決定をしたのです。

国として危険性を認めたわけではないのですが、この大手企業の行動は、再びアスパルテームの安全性の疑惑論争に火をつけてしまった面もあり、欧米では大きな話題になっています。

安全か危険かの判断に絶対はない

科学の答えはひとつではないのか?

アスパルテームの安全性について、現在科学者の間でははっきりと賛否が分かれている状況です。

科学的な検証結果は出ているのに、なぜ安全だという人と危険だという人がでてくるのでしょうか。

実は、アスパルテームは、アメリカで食品添加物として認定される前からずっと賛否の論争があるものでした。

動物実験などで、発がん性が疑われるようなデータが出た、という研究もありました。

また、認可された後、アスパルテームの入った食品を食べていたら健康被害が出た、と訴える人が出てきて、裁判になることもありました。

その度にいろいろ検証実験がなされましたが、それが確かにアスパルテームのせいだと言い切れる結果が、出ませんでした。

だからと言って、代りに原因となる物質等が見つかったわけでもありません。

「アスパルテームを食べた人間や与えられた動物の中に健康被害が見られるが、それはアスパルテームが原因とは言い切れない」

というのが今の所、科学的に出された結論になっています。

要は、それを「安全」と判断するか、「危険」と判断するか、解釈の問題が賛否分かれている、ということです。

食品リスクの判断基準

この地球上には、身体に悪い影響が及ぶ物質は膨大な種類存在しています。

それらの多くは、私たちが通常食材としているものや、水や空気の中にも存在していて、人間は生きていく間、絶えず何かしら身体に悪いものも摂りこみながら生きています。

摂りこんでも健康に生きられるのは、からだの中に自浄能力があるためです。

食品の危険リスクをゼロにする、ということはまずできません。

どんなにわずかでも、悪いものが入っている食品は一切摂らない、となると、水も飲めないし何も食べられなくなってしまいます。

科学的な実証に基づいて安全性の判断をする、ということは

  • “その中にはどれくらいの量の毒性物質が入っていて”
  • “どのくらい以上食べたら害になるのか”

を見極めて、食べても大丈夫な量の基準を決めることです。

今の判断が間違っている可能性は、常にある

ただし、今現在の科学は、全て万能で正しいとは限りません。

この先科学が進むと、今の判断基準とは違う基準になることは、十分あり得ます。

からだに悪い影響があると気付くのに、とても長い時間がかかるものもあります。

それまでの科学では気付かなかった、新たな悪い影響や物質が発見されることもあります。

逆に、悪い影響だと思っていたのに実は違っていた、と後でわかることもあります。

明日のことはどうなるか誰にもわからないから、今の判断なんか信用しちゃいけない!と言ってしまっても、やはり何も食べられなくなってしまいます。

人間は、いつでもその時にわかる最大限の知識で最大限の努力をして、判断していくしかありません。

間違いに気付いたら、基準を微調整しながら、精一杯データを信じていくことが、その時にできる最大の危険回避になります。

アスパルテームの基準はどうやって判断されたのか

なぜ安全性に疑惑があると思われているのか?

アスパルテームの認可も、そうやって判断して決められたはずです。

が、これに関してだけは、政府が発表したものに不信感を抱く人が後から後から絶えません。

なぜ人々は政府の判断が信用できないのでしょうか?

ひとつは、

「実際に健康被害があるが、それがアスパルテームのせいかどうか言い切れない」

という結果に対して、「はっきり何が原因かわかるまでは認可は保留」ではなく「認可」になっていることに、違和感があるためです。

もう一つは、認可申請の際、政治的な圧力が働いた疑惑がぬぐえないためです。

認可に際しての賛否の別れ方

サール薬品が開発したアスパルテームについて、当初の動物実験の結果などから安全性に疑問を抱く人がたくさんいました。

そのため、添加物の申請も、反対運動や科学者の意見が強く、長年認可が下りることはありませんでした。

が、フォード政権で国防長官を務めていたラムズフェルト氏がサール薬品のCEOに天下りました。

ラムズフェルドさんは退任前にFDA(アメリカ連邦医薬品局=日本の厚労省にあたる所)の局長を指名していきました。

そして、レーガン政権が発足した途端、サール薬品は改めて申請をだし、FDAはあっさり認可承認しました。

賛否の議論のために提出された論文のうち、アスパルテーム製造企業から研究費を出資されている機関からだされた74の論文は、すべて「安全である」と結論しています。

一方、他の研究機関から出された論文90のうち83論文は「健康被害の危険性がある」と結論しています。

7機関は「安全」という結論でしたが、そのうちの6機関はFDAの研究でした。

その後、FDAから多くの職員がアスパルテーム製造企業に転職しました。

日本人の反応は?

どこまでが風評?

アメリカでは、危険性を心配する世論の方が強く、反対運動も支持を受けています。

ペプシの方針転換は、ある意味反対運動のアクションの成果とも言えます。

日本でもネットを見ていると危険性を指摘するコンテンツがいくつも見られます。

が、それらの意見への反応は、「風評」と切り捨てるものや、疑惑を指摘する人たちに対し、科学的な議論ができない人間であると侮蔑する声のほうが多く見られます。

確かに、日本で警鐘を鳴らす派の意見の中には、サール薬品が軍に科学薬品を供給していた企業である点を引き合いにだして

「戦争に加担してきた企業が訴える“安全性”は信用できない」

というようなことを言うものもあります。

科学的な分析が素人考えのレベルのものや、デマ情報が混入している人もいます。

反対派の論述は科学的な検証とはおよそ言えないものが多いのは事実です。

が、今の判断を絶対視して、疑問を投げる声を全て被害妄想のように決めて斬り捨てようとする安全派の論法も、傲慢さが漂います。

こういうやり取りの応酬は、放射性物質の食品リスクの議論でも見られ、双方が安全を望んでいるのにも関わらず、協働できずに対立してしまう構図が残念です。

日本のコーラはどうなるのか?

今のところ、ノン・アスパルテール・コーラの発売予定はアメリカだけです。

今後全世界に広がって行くのかどうかは、消費者の反応次第かと思いますが、日本ではあまり要望の声がなさそうです。

「添加物を他の添加物に切り替えることが本当に安全になるのか?」

という揶揄の声も多く、ある意味「もっとも!」かもしれません。

アスパルテールは、日本の食文化の中にも深く入り込んでいる添加物です。無関心になりすぎないよう、見守っていきたいです。

まさケロンのひとこと

ダイエット飲料を選ぶときはアスパルテールが入ってるかチェックしてみよう!
摂り過ぎはやめたほうがいいかも。

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。