食の豆知識

夏新・秋新どちらがお好み?新そばの季節って意外と長い

Written by すずき大和

海外の人から見ると、「そば(蕎麦)」は、寿司やてんぷらに並ぶ、代表的な和食です。

東京下町の人にとっては“ソウルフード”といって過言ではない、

江戸っ子の「粋」

を象徴する食文化です。

北海道から九州まで、日本中で作られてきたそばは、夏から晩秋まで結構収穫期が長いのですが、秋に収穫された実から作られるそばは「新そば」といわれ、格別に美味しい旬のものとして、多くの人に認識されています。

が、最近、夏時季に収穫されるそばの実から作られるそばも、

夏の新そば=「夏新(なつしん)」

と呼ばれ、そば通の皆さんから、好まれるようになってきました。



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国産そばはどこで作られてきたのか

日本のそばの歴史は千年以上

そばは中国南西部が原産という説が有力ですが、日本では弥生時代の遺跡から、そばの実の化石が見つかっています。奈良時代よりも古い古代から、作物として栽培されてきたとみられています。

そばは、稲などの穀物に比べ、生育適温の幅が広い作物です。湿気の少なく日当たりのいい場所ならば、痩せた土地でも栽培できたので、日本中で作られるようになりました。

むしろ、風味のいい美味しいそばを作るには、昼夜の寒暖差が10度以上になるような場所で、最高気温25度くらいの気候の中で実を成熟させたものが、最高級品となります。信州そばなど、涼しい高地や寒冷地での特産品が多いのはそのためです。

そばの収穫期は結構長い

そば作りに適した気候になる時期は、産地により違います。

現在、作付面積も収穫量もダントツに多いのは北海道です。北の大地の短い夏は涼しくて寒暖差が大きく、広大な平らな土地を使って、夏中理想的なそばが作れます。
そばの成長は早く、種まきから収穫まで75日くらいしかかかりません。梅雨のない北海道では5~7月に種を撒き、8~10月に収穫しています。

一方、暑い九州の鹿児島や宮崎では、9月後半以降の残暑が和らぐ季節から種まきを始めます。晩秋に旬を楽しめる秋そばです。

北関東や東北地方では、春から初夏に種を撒き夏に収穫する早期収穫ものと、夏後半に種を撒き秋に収穫するもの、2回の作付けを行う地域も多いです。

美味しくないと「新そば」とは呼べない

情報サイトによっては、この二期作の地で最初に採れる夏そばを「夏新」と呼ぶ、と解説する情報もあります。が、最近人気が出ている「夏新」は、このそばのことではありません。

「新そば」

と呼ぶ時、人はそこに“今年の収穫期のもの”という意味だけでなく、

“最も美味しく熟成された時季に収穫したそばの実で作った『旬』の時季のそば”

という意味合いを期待しています。

旬のそばの実で作られたそばは、色も香も味も格別!であるからです。

残念ながら、二期作の夏そばの収穫期は、そばの嫌いな高温多湿な日本の真夏(それでもちゃんと結実するのが、そばのエライところでもあります)となるため、どうしても、秋そばに比べると風味が落ちてしまいます。

夏新とは、秋の新そばの先頭だった

「夏新」とよばれて提供されるそばの多くは、真夏も高温多湿にならない北海道産のそばで作られた夏そばのことです。(中には南半球の秋の収穫の輸入品もあります)

真夏の時季を避けて種まき~収穫されるそばは、南にいくほど収穫時期が遅くなります。涼しい北海道のそばは、日本で一番早い秋の「新そば」なわけです。

が、8月から供されるそばなので、いつの間にか「夏新」と呼ばれて、特に走りもの(収穫期の最初の出回り品)が大好きな江戸っ子のそば通の皆さんの人気を呼んだようです。

新そばはなぜ美味しい?

収穫してからそばになるまでも大事

そばはとてもデリケートな食材で、収穫して乾燥したそばの実は、時間が立つと色も香りも味もどんどん劣化していきます。

保存技術が拙かった昔は、蔵やむろなどの暗くて涼しい場所で、そばの実を保存して、一年中そばを提供していました。が、収穫したてと去年のそばでは、風味も色も全く異なってしまいました。

だからこそ、旬の時季の収穫直後に作られるそばは、「新そば」と呼ばれ、江戸っ子に代表されるそば通の人々からもてはやされ、心待ちにされたのです。

夏から秋までずっと収穫されるそばなのに、本州以南のそばの真夏の収穫が、例え収穫したてでも「新そば」と呼ばれないのは、収穫後の乾燥・保存・輸送・製粉の過程が、高温多湿にさらされるので、秋の収穫より劣化が早い、と判断されているためでもあります。

新そばのアリガタミ

ただし、冷蔵庫の性能が格段にアップし、保存環境が素晴らしく良い現代、旬の収穫の品質をほとんど落とさずに保存し、一年中とても美味しいそばが食べられるようになってきました。

加工も、昔は天日干しで1週間ほどかけて乾燥させていました(今でも、天日干しが一番美味しい、といわれています)が、今は工場の乾燥機で乾燥されるようになりました。収穫から製粉までの時間も短縮され、いつどこで収穫されても劣化の程度はさほど差がなくなっています。

その結果、「新そば」を食べても、思っていたほど格別に美味しいわけではなかった・・・みたいな人も少なからずいます。

まあ、気分の問題もありますしね。

現在の「新そば」の“微妙なアリガタミ”がわかるような「そば通」になりたいものです。

まさケロンのひとこと

そうか〜今は「新そば」じゃなくてもそれに近い美味しさになってきてるってことか!とはいえ、真の「新そば」は味わってみたい・・・!

masakeron-love


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。