いつの時代も、美容と健康をウリにする商法は止め処ありません。次々と新たな美容法が出てきて、新たな商品、新たな成分、新たな方法、新たなキーワード、新たなカリスマ・・・が生まれ続けています。
ここ15年くらいの間に多く聞かれるようになった言葉のひとつに「小顔」があります。
日本では顔(頭部)が小さいことは美しさのポイントのひとつという価値観が、社会に蔓延しています。女も男も、小顔目指して骨格矯正したり、顔痩せダイエットしたりしています。
小顔を美しいと捉えるのは世界では特殊な感覚
「小顔」って何?
正面から見た時の頭を含めた頭部全体の輪郭を比較すると、東アジアの人間が最も面積の大きな顔をしているそうです。頭蓋骨内の容量を比べても、日本人のそれは欧米人などに比べると大きいのだとか。
白人や黒人は顔の面積が小さい人が多く、小顔好きの日本人は、日本に来た観光客や留学生を見て思わず
「顔小さいですね」
といってしまうことが多いようです。が、いわれた外国人のほとんどが戸惑っています。
まず、
「顔が小さい」
という意味が伝わっていません。英語で「Small Face」というと、ほとんどの欧米人は、顔の中心に目や眉や口が集まっているような顔を想像するようです。
日本の漫画家「地獄のミサワ」氏の描く絵のような顔、というとわかりやすいでしょうか。
どうしてそれが褒め言葉なの?
頭部全体が小さいことだとわかると、
“頭蓋骨の容量が小さい=頭悪い”
という意味に受け取るのが向こうでは自然です。つまり、馬鹿にしている意味になるわけで、とっても失礼な言葉なんですが、相手がそんな態度じゃないので戸惑ってしまうわけです。
日本と韓国以外では、頭部の大きさを気にする文化はほぼありません。人並み外れて大きかったり小さかったりすれば別ですが、不自然じゃないサイズならば、頭部全体のサイズが、外観の美を左右するとは感じていないようです。
日本人にいわれるまで自分の頭部の大きさが人と比べて大きいのか小さいのか考えたことがなかった、という人が大半です。
彼らからすると、日本人が顔の大きさを比べて、自分のほうが大きいと気にする様子は、例えば、手の爪の形が人と比べて丸っぽいか、四角っぽいかの違いを気にして、手をいつも後ろに隠している人のように見えるのだそうです。
つまり、「誰も気にしてないよ、そんなこと」っていいたくなるのでしょう。
小顔って“かわいい”のか?
アニメキャラは頭でっかく描かれているから“かわいい”
日本文化は、いろいろな面で世界標準とは変わった常識を持っていることが、最近あちこちで話題にされます。「かわいい」が物凄く好まれ強調されていることが、よくも悪くも海外で評価されているのは皆さんもよくご存知でしょう。
クールジャパンの代表のようなアニメの絵のキャラクターも、かわいらしさを強調されたフォルムで描かれています。
日本人の好む
“かわいらしさ”
は、しばしば
“子どもっぽさ”
を強調した表現になっています。
子どもっぽいフォルムとは、胴体の大きさに比べて頭部が大きく、顔全体では鼻から下が短く、おでこから目が大きく長めなバランスであり、アニメの萌え系女の子の絵はほとんどそのフォルムで描かれています。
パッと見、頭周りサイズよりウエストのほうがだいぶ細い女の子ばっかりです。決して「小顔」じゃありません。
が、なぜか実際の人間は、せっかく頭が大きいという子どもっぽいフォルムであるにも関わらず、それを「かわいい」として武器にしようとはせず、逆に醜悪として、やっきになって小顔化の努力をしています。
この感覚の矛盾も、外国人から見て
「日本人が小顔にこだわる理由がさっぱりわからない!」
と思われる原因のようです。
手足の長さからくる8頭身・9頭身が憧れ?
しかし、小顔に憧れる日本人の多くは、
と思っているようです。
どうやら、顔の大きさというのは、胴体との比較ではなく、
“手足を含めた全体の身長との対比で、より頭部の割合が小さいこと”
が大事なようです。アニメの女の子は手足が相当長いので、確かに頭が胴体と比べだいぶでっかくても、8頭身、9頭身になっています。
本当はみんな、手足を長くしたいのだけれど、それは大人になった後ではなかなか難しいので、顔の長さだけでも短くできるのならば、と小顔のほうに向いてしまっている、ということなのでしょうか?
ただ、実際行われる小顔化の努力は、
- 痩せてあごのたるみなどを取る
- 血行をよくしてむくみを取る
- 骨のゆがみを矯正してバランスを整える
という類のものですから、全体の長さの比率を変えられるほどの効果には結びつかないんですけれど・・・。
そして、そんな意味のない努力に一喜一憂する日本人の感覚が、やっぱり理解できない!と外国人に言わしめてしまうのもまたしかり・・・・かもしれません。
持って生まれた身体特徴を指摘する場合の国際感覚を忘れずに
自分に自信を持つことにつながるのならば、努力するのも良し
頭蓋骨に圧力をかけることで顔の大きさ(というか頭蓋骨の形)を矯正することは、脳にとっては物凄く大きな危険を伴うことなので、ちゃんとした医師免許のあるお医者さんは勧めません。
やるなら、顔痩せとか、小顔ダイエットとかいわれている、マッサージや痩身術のほうにしておきましょう。
コロコロローラーなども含めマッサージ等でむくみをとると、一時的に顔のはれぼったさが軽減されるのは確かです。ただし、時間が立てばもとに戻りますから、定期的にやり続けないと効果は保てません。
脂肪を減らしてスッキリしたい人は、結局顔だけでなく、全身の余計な脂肪を減らすダイエットをすることになります。
どちらも、日々くり返し行う努力を必要とします。が、それによって多少顔の輪郭がスッキリして、自分に自信が持てたり、健康状態がよくなるのであれば、外国人に理解されようがされまいが、顔痩せ兆戦を続ける価値はあります。
ただ、見た目がそんなに変わらず、周囲の人が気付いてくれなくても、あんまりがっかりしないようにしてください。
外国人に向かって「小顔」の指摘はやめましょう
韓国人以外の外国人に向かって、例え相手がどんなに美しく、かっこよいプロポーションに見えても、
「顔小さいですね」
というのは、やはり控えておきましょう。
褒め言葉だと理解されなかったり、馬鹿にされていると誤解されたりすると、互いの信頼関係を悪くするやもしれません。
また、そもそも生まれながらにして持っている身体的特徴、しかも民族による違いが大きい特徴について他人がとやかく指摘するということは、国際的にはタブーな行為です。
歴史の中で、民族差別をする時に相手を揶揄するために、身体的特徴がことさら強調されて使われたことがたくさんありました。というか、現在もあります。そのため、たとえ褒め言葉であっても、
というマナー感覚は、日本人も知っておいたほうがいい国際常識です。
それから、外国人と写真を撮る時、「あなたと並ぶと私の顔が大きいのが目立っちゃう」なんて絶対にいわないでください。
相手は「自分が存在するだけで、人を傷つけている」といわれているような気持ちになってしまいます。それは、国際感覚というより、人としての思いやりですね。
外国人に「顔ちっちゃいね」って言うのはNGだけど、まさケロンには言ってもいいからね。