宇宙

NASAが第3の月を発見!今、地球には3個の月が回っている!?

Written by すずき大和

2016年6月15日、NASA(アメリカ航空宇宙局)は、地球を周回しながら太陽を公転する新たな準衛星『2016 HO3』を発見したと発表しました。

アメリカでは、マスコミなどが「第3の月発見!」と大きく報道していました。が、文化や自然科学に関する話題については、日本では、日本人が何か賞でももらわないと、例えそれが世界的大発見であっても、あまり大きくは報じられない傾向があるようです。

今回も、ネットの科学系サイトでしかトップニュースにはなりませんでした。

3番目は、2番目と違い、安定して地球の周りを回る、より衛星に近い準衛星なのに・・・・。

え?、「2番目の月なんてあったのか!?」って?

そうでした。第2の月発見の時も、日本のTVのニュースはあっさりスル―していました。

皆さん、地球は今「3個の月」を持っているんですよ。



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衛星と準衛星って何が違う?

月のようで月じゃない月

HO3は、4月27日、ハワイのハレアカラ山の観測所の望遠鏡によって発見されました。

直径40~100mの小惑星で、地球の重力にとらわれて周回するようになって、100年ほどたっていることがわかりました。

「小惑星」というのは、HO3は“太陽を中心に回っている星”ということです。

太陽系には、皆さんがよく知っている“水・金・地・火・木・土・天・海”の8個の大きな「惑星」以外にも、

  • 冥王星などの「準惑星」
  • 星の周りに拡散物質を放出しながら動いている「彗星」
  • 数センチメートルサイズの「塵」
  • 数メートルから数百キロメートルの「小惑星」

・・・など、様々な星が回っています。

彗星や小惑星の軌道は、非常にいびつなことも多く、たまたま地球に接近してしまった時に、うんと小さなサイズの小惑星は、地球の重力にとらわれて、地球の周りにまとわりつくような軌道を取ることがあるのです。

従来の月(衛星)は、地球を中心とした軌道でとても安定して回っています。これに対し、基本的に太陽を中心とした軌道で動く途中、地球や月の引力に影響され軌道が遠回りしている小惑星の場合、見かけ上地球を周回しているだけなので、「準衛星」といわれます。

第2の月とは

最初の準衛星、つまり“第2の月”は、2006年、マイケル・グランヴィク氏 他2人の天文学者によって発見されました。

地球の軌道に乗って回っている、直径2、3mの不可解な物体は、小さな小惑星であることがわかり、『RH120』と名付けられました。グランヴィクさんたちは、惑星と衛星の研究を長年行っており、地球の重力と小惑星の軌道がどう影響しているのかの研究の過程で、この準衛星を発見しました。

そして、2011年、物理学雑誌ArXivに

「The population of natural Earth satellites(地球の持つ自然衛星の数)」

という論文を発表します。

彼らはこの中で、

「地球は常に、地球の軌道に乗って回っている直径1mの自然衛星を、少なくとも1個以上持っている必要がある」

と結論付けています。

つまり、太陽系を回っている小惑星が地球に近づく頻度や大きさや地球の重力の影響などをいろいろ計算していくと、

“直径数メートルの小惑星が、絶えず1個以上は地球の周りにまとわりついているはずだ”

ということです。

この極小の小惑星は、地球に接近して重力に取り込まれると、およそ10ヶ月間軌道上に留まり、その間地球をだいたい3周して、再び離れていきます。

イギリスのデイリーメールの記事で、第2の月を「ミニムーン」と称して、その複雑な軌道を図解したものがわかりやすいです。


彼らの論は、RH120の発見で証明されました。RH120は既に地球の軌道から離れていますが、入れ替わり立ち代わり、地球の周りにはこの極小の準衛星、第2の月がいるはずです。

もう地球に月はひとつだけとはいえない

第3の月の軌道

今回発見されたHO3は、これら第2の月よりだいぶ大きく、周回状態も一時的なものではありません。すでに100年間安定してきましたが、これから先も数百年は地球の準衛星であり続けると見られています。

NASAのページでHO3の軌道の動画が出ています。


HO3の公転軌道は、絶えず揺らぎながら、地球の軌道面に対して浮かび上がり、また潜るという動きを繰り返しているように見えますが、常に安定して地球の周りを周回しながら、地球と共に太陽を公転しています。気まぐれに立ち寄るだけの第2の月とは全く違う準衛星です。

地球の月はひとつではない

第2の月は、そのあまりに小さなサイズのために準衛星と呼ぶことに懐疑的な専門家も少なくありませんでした。そのため、まだ教科書の上では地球の衛星は月ひとつだけということになっています。が、HO3ほど安定周回する小天体は、もう誰も準衛星ではないとはいいません。

そうはいっても、直径100m以下では、月のように誰もが肉眼で見つけられるものではないのですが、これからは、

「地球にはよく見える大きな月と、見えないけど隠れた小さな月がある」

というのが、科学の世界では常識となっていくでしょう。

直接の国益(経済的利益)に結びつかない政策については、先進国の中ではあまりに予算の付き方が貧相な日本ですが、こんな歴史的な発見くらい、もう少し世間の話題として盛り上がってもよさそうな気もするんだけどなぁ・・・・

まさケロンのひとこと

宇宙のことは謎が多いだけに、今までの「常識」が通用しなくなることって多そうだよね。

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。