秋の話題 食の豆知識

秋の旬の魚?イワシでしょ!!秋刀魚や戻り鰹に負けない凄いやつ

Written by すずき大和

最近の日本の夏は、お盆を過ぎてもダラダラと厳しい残暑が続くことが多いですが、甲子園が終わり、子どもの夏休みの終了が見えてくると、気分は一気に秋に向かっていきます。

2016年は、オリンピックの閉会も“夏、終わった~”感をひときわ高めます。世界的に暑さ厳しい夏となったので、倦怠感が一気にやってくる人も多そうですが、そこは“食欲の秋”のスイッチを入れて、旬のおいしい味覚をたくさん堪能して、元気に秋を迎えたいものです。

秋の旬の味覚はたくさんあります。魚では「秋刀魚」「戻り鰹」人気に押されがちですが、100%日本の近海で獲れる「マイワシ」も、本格的な旬を迎える季節です。



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イワシってチープな雑魚のイメージですか?

紫式部も愛した、庶民の一番人気の旨い魚

日本全国から出土する「貝塚」から発見される一番ポピュラーな魚はイワシだそうです。日本人は先史時代からずーっとイワシを食べ続けてきました。

たくさん捕れて安価ですが、痛みが早く、生臭さが強いため、格差社会が大きくなった奈良・平安の時代には、庶民の食べる下級魚のように扱われ、貴族などからは小バカにされることもあったようです。

とはいえ、その“旨さ”を愛する人は宮中にも少なくなかったようで、かの「紫式部」も、こっそり焼いて食べていたのを夫に見つかったことがあるそうです。その時、なじる夫に返した和歌が残っています。

日の本にはやらせ給ふ石清水 まいらぬ人もあらじとぞ思う

これは、当時流行りの石清水神社詣りにイワシをかけて、

「日本では石清水神社詣りがたいそう人気で、お詣りしない人なんていないでしょう」
(日本ではイワシがたいそう人気で、食べない人なんていないでしょう)

という意味の軽口になっています。

マイワシが高級魚だった時代もある

そんな人気のマイワシの漁獲高には実は波があり、室町時代の頃から、約70~100年周期で豊漁期と不漁期を繰り返してきました。

漁獲高の数字が残る明治以降を見ると、1935年頃(年間約150万トン)と1988年(450万トン)の2回ピークがありました。が、ピークを過ぎると異常なスピードで減っています。

マイワシ漁獲高推移


グラフの「カタクチイワシ」はマイワシより一回り小さいイワシです。見ての通り、

“マイワシが大漁の時期はカタクチイワシが捕れない”

“マイワシが不漁になるとカタクチイワシの漁獲量が一気に増える”

という傾向があります。

このため、一見イワシ全体の店頭に出回っている数は変わらないように見えます。

そのことが、「イワシは安価な大衆魚」というイメージをずっと持ったままの人を多くしています。

しかし、マイワシの値段は当然激しく前後しています。大漁時は1匹数十円ですが、2000年代半ばに底だった時は、なんと1匹1200円前後にまで値上がりしました。当時は“幻の魚”とすらいわれました。


イワシは実はとっても弱くて繊細

イワシの語源はとっても弱い魚だから

イワシは漢字で“鰯”と書きます。マイワシは、実は人間に素手でつかまれるだけでも死んでしまうほど、弱い魚です。骨も身もあれだけ柔らかいですから、さもありなんでしょうか。水揚げ後の痛みが早いのも納得です。発音の“いわし”“よわし”からきた、という説が有力です。

弱いから、大量に群れになって泳いでいます。たくさんのマイワシの群れが同じ方向に揃って泳いでいる映像などを見たことがある人も多いでしょう。まるでテレパシーでつながっているかのように、向きをシンクロさせて泳ぐのも、互いがぶつかってからだが傷つくのを避ける本能かもしれません。

ちなみに、各地水族館によると、マイワシの群れの回転方向は、7割強が右回りなんだそうです。たまに左回りの群れもいるそうですが、どちらも、一度泳ぐ方向が決まるとそれが定着するようです。

食物連鎖の底辺に近い存在

群れで泳ぐマイワシをよく見ると、こいのぼりのように大きく口を開いていることが多いです。あれは、水中のブランクトンをえらでこし取って食べているからです。


小型回遊魚の多くは動物プランクトンだけを食べますが、マイワシは食物連鎖の底辺により近い植物性プランクトンも食べています。植物プランクトンは水温などの影響ですぐに発生数が左右されます。マイワシの数に大きく波が起きる原因は解明されていませんが、海の些細な環境変化に影響されやすいのも理由のひとつと考えられています。

マイワシはいつまで豊かな資源なのか

マイワシの漁獲量の波は、近代まで70~100年周期くらいできていましたが、昭和の2回ピークは40年くらいの間隔でした。これは、海水温が近年上昇している影響ではないか、という専門家もいます。

地球温暖化が進み、気象現象にも変化がみられる昨今、デリケートなイワシがこれからも繁殖し続けてくれるのか、不安に感じている人も多いです。今漁獲高が増えている波の途中ですが、ピークは周期計算によれば1925年頃だそうです。前回のピークほどの大漁になるかどうかは誰にもわかりません。

十数年後には、再び“幻の魚”になるかもしれないマイワシ、今の安価な時代に、せいぜいたくさん食べておきましょうか。

まさケロンのひとこと

たくさん漁れるからって感謝の気持ちを忘れちゃいけないね。

masakeron-love


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。