2016年9月1日より流通が始まった、オーストラリアの新5ドル紙幣は、最先端のハイテクを結集し、
「次世代紙幣プログラム」
と呼ばれる特殊製造方法で作られた、斬新な仕掛けが施されたお札です。
もともと、この国は“造幣”に並々ならぬ情熱を持っており、世界トップクラスの紙幣の開発に取り組んできました。今回も意気込みは並みじゃないようです。何より、そのハイテクの
「仕掛けがものすごい!」
と、世界で話題になっています。
次世代紙幣プログラムのお札
何が最先端ハイテクなのか
まずは、紹介動画がネットに上がっているので見てみましょう。
オーストラリアの紙幣は、すべて紙ではなく、合成樹脂でできています。
(「ポリマー紙幣」「プラスチック紙幣」などと呼ばれます)
もちろん防水で、濡れても破けることなく丈夫です。
今回も、プラスチック紙幣だからできる仕掛けが見られます。
新5ドル札の中央は、地が透明になっており、そこに描かれている図柄は、裏側にもちゃんと反転されています。
そして、光に透かすように傾けると、フォログラムを見るように立体的に柄が飛び出して見えます。また
“キリハシミツスイ”
というオーストラリア原産の鳥が羽ばたくアニメーションが見える仕掛けもあります。こんな凝った細工をしてあるお札は、もちろん世界初!です。
販売機の読み取り機能も追いつかないハイテク
5オーストラリアドルは、日本円に換算すると、400円弱くらいですが、このお札の研究開発及び造幣にかかっているコストは、たぶんもっと高そうです。しかし、これだけハイテクが投入されていると、模造品はそうやすやすと作ることはできません。ニセ札防止効果は絶大です。
一方で、あまりに進んでいるための弊害もあります。仕掛けの複雑さにニセ札犯もお手上げですが、現在世間に出回っている自動販売機やATMの読み取り識別機能も追いついておらず、今のところ、人と人の対面販売じゃないと使えないマーケットがたくさん存在しています。
オーストラリア人からはブーイングが大きい新札
ネットでデザインが酷評
流通の5か月前、4月12日に、今回の5ドル紙幣のデザインが公式発表されました。
その際、視覚障害者のためのエンボス加工のクオリティが高まった点のみ機能面のウリとして、デザインについては、3Dやアニメの仕掛けのことは公表されず、中心が透明になっていることの説明もなく、ただ絵柄だけが発表されたようです。
新デザインでは、従来のお札のデザインに比べ、色使いも描かれているモチーフもだいぶ増えており、それが、とても煩雑で派手な印象を与えました。そのせいか、発表直後は、ネットに国内外からの酷評が寄せられ、「趣味の悪さ」を憂いたコメントが、ちょっとした炎上騒ぎのようになりました。
- 「バクテリアが描いてある」
- 「ゲ○(おう吐物)みたい」
- 「デザインがダサすぎ」
- 「猿にフォトショップいじらせて作ったほうがまし」
(以上、SNS等の書き込みの例)
バクテリアというのは、オーストラリアの花「ワトル」の絵のこと。黄色い花の形が、顕微鏡で見る微生物のように見えるようです。
「ゲ○」というのは、ネットで出回った写真が、青い下地の上に乗せて撮られたものだったため、透過の説明なしでは中心に青色の帯が流れるように見えたせいです。
4月にネットで酷評された新5ドル札画像
ちなみに、旧来の豪州のお札はこんなデザイン。5種類揃うと下地の色はカラフルですが、それぞれのお札の色使いとデザインはいたってシンプルです。
今後の展開
実際に本物の新5ドル札を手に取ってみて、立体的な仕掛けを見た豪州国民は、一様にニセ札防止クオリティの高さには関心しました。中心が透過されているデザインを見て、前ほど「ダサい」の合唱は起きていないようです。
が、世界の人々ほど「すご~い!」と喜んでいる風でもありません。
そりゃそうです。どんなにデザインが先進的でも、世界で話題になっていても、
“自動販売機やキャッシュディスペンサー等での読み取りができないお札”
なんて、不満のほうが大きくなるに決まっています。オーストラリアのニュースサイトで新札の話題を探しても、ほとんどが「使えないじゃん!」という問題点指摘がメインの記事でした。
「次世代紙幣プログラム」では、今後7年間で全ての紙幣をハイテク化する予定です。7年の間に、社会のシステムのほうも十分対応できるように進んでいるのでしょうか。個人商店や田舎町などの小さなマーケットでの対応が格差なく進むよう、政府のサポートが望まれるところでしょう。
世界も新システムが進み、省コスト化もできてくれば、いつか日本のお金もこんなのが当たり前の時代もくるかもしれません。私が生きているうちは間に合わなそうな気もしますが・・・。
読み取り機の入れ替えが追いつくか不安だけど、数年後にはそういう時代になってる気もするな〜。