ウーパールーパーは、見た目のかわいらしさと飼いやすさから、比較的人気のある水生生物です。あなたの近くにも、ペットにしている人がひとりくらいいませんか?
もともとはメキシコの湖に生息しているサンショウウオの仲間の両生類です。日本で流通しているのは、飼育用に人工繁殖されているものですが、野生種は、人間の持ち込んだ天敵や、環境破壊のせいで数が激減しており、絶滅危惧種です。
2016年秋、国際的に有名な科学・文化雑誌「ナショナルジオグラフィック」に、
「このままでは、2020年までに絶滅する恐れがある」
と科学者が警告する記事が出ました。
ウーパールーパーは、日本でしか通じない呼び名
CMによって紹介されたバブル期の人気動物
40代以上の人は覚えているかもしれません。1985年にカップ麺のCMで起用されたことで、一気に知られるようになり、エリマキトカゲと並び、バブル時代の人気動物でした。
ウーパールーパーブームが去り、ペットとしての需要も随分減りましたが、未だに根強い支持が一部では続いています。
本名は「アホロートル」
和名はもともと「メキシコサンショウウオ」(英名はメキシコサラマンダー)ですが、国際的に知られている正式名称は「アホロートル(Axolotl)」です。
“アホ”も“ロートル”も、どちらかというと悪口になる言葉です。
日清製粉は、CMのキャッチコピーに使った
「ボクはUFOの“愛の使者”です」
の「愛の使者」を意味するメキシコの言葉
『ウーパールーパー』
を、この動物の愛称として紹介しました。
以後、日本では「ウーパールーパー」が通称として定着しています。
サンショウウオのオタマジャクシがウーパールーパー?
ピンクの姿はまだ子供
両生類というと蛙を思い浮かべる人も多いでしょう。蛙はオタマジャクシの時はエラで呼吸し、大人になると肺呼吸になります。水中と陸上の両方で暮らすから“両生”類ですね。
サンショウウオの仲間も、生まれた時はエラ呼吸ですが、エラはからだの外に突き出しています。大人になると、エラが取れて、肺呼吸の陸生生物になります。
日本の天然記念物になっている「オオサンショウウオ」も、子供の時は突起状のエラがあります。
ピンクや白のウーパールーパーも、実は子供、幼体です。首の周りの突起がエラです。
エラ付きのまま成熟してしまう種
アホロートルの仲間は、大きくなるとからだの色が黒や茶色に変わっていきます。が、エラの突起はついたまま、エラ呼吸の水中生物のまま成熟してしまう(繁殖可能になる)珍しい生体を持っています。
子供と成長した2匹の個体を飼っている人のブログがありました。両方並んだ写真を見てみましょう。成長すると、随分サンショウウオっぽくなりますが、まだエラがありますね。
育て方によっては成体になる
では、アホロートルの成体は存在しないのか?というと、実はそうでもありません。
水槽の水位を下げたり、pHを調節したりして、水中から出やすい環境で育てると、変態して肺呼吸の成体にまで育ちます。マニアはホルモン注射で成長を促して成体にすることもあるそうです。
上記の写真のウーパールーパーも、その後、水槽内に石を置いて陸に上がれる環境を作ってあげた結果、一年後には完全に変態して、エラがないメキシコサラマンダーになっていました。
すっかり変わってしまったようですが、つぶらな瞳の表情にウーパールーパーの面影が感じられます。
アホロートルの仲間は、種類によっては、成体になると、かなりグロいビジュアルになってしまう種もいるようで、両生類マニアじゃない人は、かわいい姿のまま飼っていたほうがいいかもしれません。
野生の仲間は絶滅しつつあることを心に刻んで・・・
原住民文化の中で大切にされてきた動物
アホロートルは、かつてのアステカ帝国では神の化身として崇拝されたこともありました。
“アホロートルが絶滅した時、私たちも一緒に絶滅する”
ともいい伝えられてきたそうです。
メキシコ政府は、1992年に、生息地を守るために一体を自然保護区に指定しました。が、個体数の減少は止められませんでした。
- 繁殖してしまった外来種の魚を駆除することが難しい
- 開発が進み、汚染物質が流れ込み続けて、湖の水質が悪化している
という問題が顕著です。
水質保全をしながら農耕をする伝統の農法を復活させよう、という動きも一部で出てきましたが、手間暇のかかる農法を継承しようとする若い農業従事者はほとんどいません。
メキシコ人にとって、アホロートルを守ることは、メキシコの自然環境そのものを守ることとイコールです。が、経済発展と開発のグローバル化の波の中で、絶滅していく自然をなんともできない現状があることも確かなのです。
ウーパールーパーは関係ないのか?
人工繁殖の日本のウーパールーパーとは関係ないといえばない話です。
それどころか、バブル期に比べると人気が落ちている分、繁殖業者の中には食用に転用しようという動きもあります。
ウーパールーパーは、食べられる絶滅危惧種!
なわけです。
法的には問題ありませんが、なんだか複雑な気持ちもします。
ウーパールーパーってペットかと思ってたら居酒屋で食べられてたのかー!!