2016年冬、東京都心では54年ぶりとなった“11月の初雪”が降りました。
その日、気象庁の研究官がTwitterで
「雪の写真を撮って送ってください」
と呼びかけたことが話題になりました。
結晶なんて顕微鏡サイズじゃないかと思うかもしれませんが、案外大きな結晶もあるもので、スマホで十分撮影できるそうです。
関東中からたくさんの結晶写真が投稿され、ニュースにもなりました。六角形から発達した様々な形の結晶のツイートがTVにも紹介されていました。
雪が六角形の結晶になる理由は、難しい化学の知識がないと、ちゃんと理解するのは難しいのだそうです。ネットにも、一般人向け、子供向けの解説記事がいくつかありますが、長くて難しすぎたり、かみ砕きすぎて煙に巻かれる感じだったり、結局よくわからない場合も少なくないです。
中学生くらいの子供や、化学も自然科学も苦手だった大人にも、納得できる説明をしてくれる情報をあちこち探し回ってみました。
・・・ん~、やっぱり難しかったです・・・!?
雪の結晶を見ると、いろいろなことがわかる!らしい
雪の降るメカニズムの解明
まず、2016年11月23日の、気象庁の荒木健太郎研究官のツイートを見てみましょう。
関東甲信の皆様にお願いです.雪が降ったら雪結晶の写真を撮って下さい.スマホでも撮れます(添付はiPhone5).雪結晶の種類等の情報は雪研究に非常に重要です.綺麗な結晶だけでなく汚い結晶も含め,雪の写真を送りつけて下さい.1円玉とかスケールがあると最高です.ご協力お願いします. pic.twitter.com/fvEWLhd0e6
— 荒木健太郎 (@arakencloud) 2016年11月23日
荒木さんは、関東甲信での降雪メカニズムについて研究しています。雪の粒子を分析すると、雲の構造や低気圧の特徴を把握するのに役立ち、ひいては降雪のしくみの解明につながっていくとのことです。
雪の結晶の形が表すこと
上空の雲の中で、温度がぐっと下がった空気の中の水蒸気が液体に戻り、氷の結晶を作りながら凍っていったものが雪です。
最初は小さな小さな六角形の氷の粒ができ、その氷の粒に周りの水蒸気がどんどんくっついて凍りつき、だんだん大きな雪の結晶に成長していきます。この時、温度や湿度によって、どんな形の結晶になるかが変わってきます。
温度が-15℃前後で、湿度が110以上、という条件が揃うと、典型的な六花の樹枝状(星状)の結晶ができます。
しかし、同じ湿度でも、温度が3℃前後すると(-12℃や-18℃前後)、六角板の形になります。更に、-8℃だと針状に成長し、-20℃以下だと六角柱ができます。
また湿度が変わると、結晶の複雑さが変わってきます。
これらの情報を元に雪の結晶の形を分析することで、雲の中の大気の状態を知ることができます。
六角形と水の分子の関係
六角形に並んでくっつき凍っていく水の分子
水の分子は1個の酸素原子に2個の水素原子が、104.5度の角度でくっついているものです。
分子と分子がくっつく時は、酸素側に、他の水分子の水素側がくっつくような電気的性質があります。ひとつの水分子の周りに4つの水分子が水素側と酸素側を規則正しくそろえるように並んでくっついて凍ると、氷晶ができます。
その規則正しい並び方の基本が、六角形なのだそうです。水の分子を模型のように表すと、こんな風に、隣り合う水分子の水素側と酸素側がくっついています。
そして、雪の結晶の中心の六角形の部分は、その六角形が秩序良く並んで、こんな感じの構造になっています。
樹枝状に成長する部分の結晶構造パターンも、これまで十数種類見つかっているそうですが、まだまだすべてのパターンの規則性の解明には至っていません。
水素結合?
水の分子の水素側と酸素側が電気的に引き合ってくっついていく結合のことを
「水素結合」
といいます。
水素結合が起きるしくみについての解説は、原子の原子核(プラスイオン)と電子(マイナスイオン)の結びつきのメカニズムの部分を理解しないと付いていけません。中学生の理科レベルは優に超える内容なので、どちらかといえば科学音痴の私には、わかりやすくまとめて説明するのはちょっと無理そうです。
化学強い人は、「水素結合」を検索していろいろ調べると、詳細がわかります。
まあ、小学生にもわかるくらいに簡単にいうと、
「水はゆっくり静かに凍ると、水の粒が規則正しく並んで六角形の形に結びつく」
という特性があるので、
「雪の結晶は六角形を基本にして成長する」
というところで勘弁してください。
水と雪の真相解明はまだこれから
水は、中学生でも知っているシンプルでポピュラーな分子です。しかし、実は21世紀の現代でも、その性質や変化のメカニズムには解明されていない部分が残っており、氷となる場合の分子結合の法則性なども今なお研究中なのです。
雪の結晶の生まれる秘密を解明することは、水についての未解部分の真相解明と直結しています。気象庁研究官さんだけでなく、世界の科学者の研究成果の今後に期待してみましょう。
自然が作るものって、人が作る芸術品とはまた違った魅力を感じるよね。心が洗われるな~雪結晶。