雪のことわざ・慣用句・熟語/日本人の抱く雪のイメージいろいろ

Written by すずき大和

四季が豊かで、北から南まで気候の違いが大きな日本では、「雪」との関りも地域により様々です。積雪が何メートルもの豪雪地もあれば、雪を知らない亜熱帯気候の土地もあります。

住んでいる場所により、雪への思い入れは違っていると思われますが、

  • 厳寒期の寒さ、自然を生きる厳しさの象徴としてとらえる見方
  • 真っ白くしんしんと降り積もる様など見て抱く、美しさや神秘のイメージ

などは、日本全体に共通する価値観のように感じられます。

そんなイメージを反映した“雪の付く言葉”が、日本語にはたくさんあります。

ことわざ、慣用句、熟語など、普段なじみ深いものから初めて聞くようなものまで、ちょっと目を引く言い方を集めてみました。



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降り積もる雪はどんなイメージ?

『蛍の光、窓の雪』

雪のつく言葉としても最もポピュラーなものといえば、これでしょうか。大晦日のお約束の歌の出だしです。

『蛍雪(けいせつ)』
『蛍雪の功(けいせつのこう)』

といういい方で使われることの多い、慣用句です。

意味は、“苦労して学問に励むこと”です。

「彼は蛍雪の功を積んで医者になった」

というような使い方をします。

昔、貧しくて行燈の油が買えない家の子供が、蛍を集めたり、窓辺に雪を集めて反射する月明りで、夜勉強したことから生まれた言葉です。この場合の雪は天然資源ですね。

『柳に雪』

積雪を重圧や難題に例えた言葉です。

『柳に雪折れ無し』ということわざの短縮バージョンです。

類義語として、『柳に風』もあります。

“柔らかくしなやかやものは、堅牢なものより強い”という意味です。

柳の枝は、雪の重みや強風の勢いで折れずに、しなって耐えますが、堅い木は重さや衝撃に耐えかねて折れてしまうことがあります。剛直に構えるより、柔軟に受け流すことが、試練を乗り越えるためには重要な場合もある、と示唆しています。

『我が物と思えば軽し笠の雪』

これもまた、雪を困難に例えて五七五で歌ったことわざです。

“苦しいことも辛いことも、自分のためだと思えば苦にならない”という意味です。

笠に積もる雪も、自分の物だと思えば軽く感じる、といっていますが、実際は雪が自分のものでもあんまり嬉しくないし、重いものは重いでしょうけど・・・。

『雪の上に霜』『冬の雪売り』

どちらも、雪を“そこいらにいっぱいあるもの”に例えた慣用句です。

『雪の上に霜』は、“十分過ぎるほどあるのに、同じようなものをまた加えること”

『冬の雪売り』は、“いくらでもあるものを売っても、誰も買ってくれない”という意味。

要するに、ありふれたものを持ってきてもあまり意味はない状況を表しています。

雪景色の白さ、美しさを比べてみよう

『雪と墨』『雪に白鷺』

雪の「真っ白さ」を引き合いに出した慣用句です。

『雪と墨』は“ふたつのものが違いすぎて比較にならないことの例え”です。

同義語は、『月とすっぽん』『提灯に釣鐘』『天と地』など、いろいろあります。

『雪に白鷺』は、“見分けにくいこと、見つけにくいこと”の表現です。

黒と黒の場合の同義語『闇夜に烏』というのもよく聞きます。

『月雪花は一度に眺められぬ』

秋のお月見と、冬の雪景色と、春のお花見は、季節が違うので同時には楽しめないことを表したことわざです。

“良いことが全部いっぺんにそろうことはあり得ない”という意味です。

雪景色は、美しいもの・良いものの例えのひとつになっています。

ちなみに、偶然に良いことが重なってしまった時は、「月見と雪見と花見」ではなく、

『盆と正月がいっぺんに来た』

という慣用句がよく使われています。

雪が降るとどうなるって?

『年寄りの達者、春の雪』

降ってもすぐ溶けてしまう春の雪を高齢者の健康が良好な状態に掛けて、

“年寄りが元気で丈夫だ!といってもあてにならないから”

という意味で使うことわざです。

世のおじいちゃん、おばあちゃん、ごめんなさい・・・。

『雪は豊年の瑞(しるし)』

『豊年の例(ためし)』とも『豊年の貢物』ともいいます。

雪が多いと、翌年は雪解け水が多いので、干ばつを免れることができる、ということです。

それ、雪とどう関係あるの?

『雪辱を果たす』

今風にいうと「リベンジ」です。

“一度負けたり失敗したりしたことに再チャレンジして、成功を収めること”です。

なぜ「雪辱」というのでしょう?

訓読みすると、「辱め(はずかしめ)」を「雪ぐ(そそぐ)」となります。

雪は「そそぐ」と読む時、真っ白な雪と化すことから転じて

“恥や不名誉なことを払しょくする”

という意味を表します。黒歴史をチャラにするってイメージ?

『雪隠(せっちん)』

トイレのことです。

これは、昔中国から伝わった表現です。その由来には諸説あり、雪の字の付く名前のお寺や偉いお坊さんが便所掃除をしたとか、便所で悟りを開いたとか、そんな話が残っています。

ちなみに、現在の中国では既にトイレを雪隠と呼ぶのは死語だそうです。

日本では、将棋で狭い所に王様を追い込める手を「雪隠詰め」と呼んでいます。

また、落語などで『空き家の雪隠』という表現が使われています。

空き家のトイレ(昔は汲み取り式)は使っていない=肥えがない=声がない、

ということで、呼んでも反応がない様子をとぼけたキャラクターの人がこんな風にいいます。なんだか大喜利みたいですね。

まさケロンのひとこと

恥や不名誉なことって生きてると必ずあるもんね。それらの雪辱を果たすことを目標に生きてみると今よりも活発になれるかも?っよっっし!!

masakeron-oko


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。