青い雪の神秘・赤い雪の謎/世界中、雪がいつも白とは限らない

Written by すずき大和

雪景色で迎えるクリスマスは「ホワイトクリスマス」

屈辱の黒歴史を真っ白に晴らすリベンジは「雪辱」

雪といえば、純白・潔白なものの象徴のようにいわれることが多いですが、雪はいつでもどこでも白いと思ったら大間違い!実は、世界では、積もった雪が青や赤や緑に見える現象が、いくつも報告されています。

サハラ砂漠の砂が飛んでくるヨーロッパ南部や、中国から黄砂が飛んでくる日本の日本海側では、春先に、雪の上に砂が降り積もって、うっすら赤茶色や黄茶色に見えることがあります。

・・・って、そういうのではなく、

  • 雪が青白くぼうっと光っているように見える現象
  • そこだけ芝生が生えているように部分的に緑色になっている雪面
  • 雪の下からじわじわと何かが染み出すように赤色が広がっていく光景

みたいな、ちょっとオカルトっぽい自然現象についてご紹介します。



スポンサーリンク

白くない雪が広がる風景

青く光る神秘の雪景色

2014年2月、関東地方に珍しくたくさん雪が積もった日、SNSに「雪が青い!」という写真付き投稿がたくさん上がりました。

春先に雪が降って1mくらい積もる時、積雪を掘った所や、雪かきして積み上げた雪山を通過した光が、青く見えることがあります。これは、雪国に住んでいる人にはそんなに珍しい体験ではありません。が、多くの関東人にとっては、驚きの初めて見る光景でした。

ふわふわの雪は、光が表面で乱反射して真っ白く見えますが、半分解けて凍った春の重たい雪は、通ってくる光が青っぽくなります。それは、氷を通過する時、波長の長い光(赤い光側)は吸収されやすく、目に届くのは青に近い光が多くなるためです。海が青く見えるのと同じ原理ですね。

雪に付着した不純物が少なく、できるだけ凝縮されて氷に近い塊雪になった時ほど、美しく青く見えます。

色に染まる雪

ところが、世の中には、光の見え方ではなく、本当に絵具をまいたように、緑色やピンク色に染まった雪が広がる光景も存在します。



こんな風に本当に雪に色がつくことを

「彩雪現象(さいせつげんしょう)」

といいます。

上のふたつの写真のケースは、雪の表面で微生物が大量繁殖することによって起きる彩雪現象です。この微生物は

「雪氷藻類(せっぴょうそうるい)」

または

「氷雪藻(ひょうせつそう)」

と、呼ばれる藻の仲間です。一般の藻は20℃以上の環境で繁殖しますが、氷雪藻は0℃前後でも繁殖します。

繁殖する過程で作り出される「光合成色素(クロロフィル)」や、「カロチノイド色素」によって、雪が緑色やピンク色に染まって見えるのです。氷雪藻による彩雪現象は、日本を含め、ほぼ世界中で見られます。

バクテリアと鉱物の影響で赤く染まる雪

氷雪藻の繁殖以外に、雪の下の土中の鉱物などが表面に滲み出してくることで色がつくケースもあります。出てくる鉱物や成分によって、オレンジ色になったり黄色になったりする事例も記録されていますが、最もよく見られるのは、還元鉄が豊富に含まれる土壌で、鉄が空気中の酸素に触れて酸化し、赤茶色に雪を染めていく現象です。

還元鉄は、土壌中の酸化鉄を微生物の働きによって鉄に還元したものです。そして、積雪の中で再び酸化鉄を作り出す働きをするバクテリアの存在も、近年になって発見されました。

酸化鉄の赤色は、氷雪藻の綺麗なピンクとは違い、もっと黒っぽい・茶色っぽい赤、いわば“サビ色”です。雪解けと共に、泥炭層の水中に溶けている還元鉄が積雪の下から上に上がってきて、赤いシミが広がっていく様は、まるで血を見るようなまがまがしさも感じられます。

日本のクリムゾン・ピーク?尾瀬のアカシボ

クリムゾン・ピークと血の滝

2015年のアメリカ映画(日本公開は2016年1月)「クリムゾン・ピーク 」は、山の上の赤土の荒野に立つ古い屋敷を舞台に繰り広げられるゴシックホラー作品です。冬の終わりに、深紅に染まる雪の中に立つ不気味な屋敷の絵が、おどろおどろしさを演出していました。



クリムゾン・ピークは架空の地ですが、南極のテイラー氷河には、その名も「血の滝」と呼ばれる彩雪現象が見られる場所があります。南極大陸の岩盤と氷床の間にある氷床下湖の水に含まれた豊富な鉄が、真っ赤な雪解け水となって湖に流れ込んでいます。


尾瀬のアカシボ

尾瀬国立公園の尾瀬ヶ原でも、残雪の湿原を赤茶色に染める、

「アカシボ」

と呼ばれる現象が見られます。さながら日本のクリムゾン・ピークのようです。


ここの土壌からも、鉄を酸化するバクテリアが発見されています。このバクテリアと、鉄の還元に関わった微生物の他にも、複数のバクテリアなどが関係してアカシボ現象を起こしていると考えられていますが、まだそのメカニズムは完全には解明されていません。

アカシボや血の滝の謎の解明は、太古の海の形成や氷河期の地球の微生物生態系の解析、気候変動の解明などにもつながってくことが期待されています。

氷雪藻の現象もまだまだ研究中で、今後も微生物の新発見はたくさんあるでしょう。

色付きの雪は、地球の自然の神秘の扉のひとつなのです。

まさケロンのひとこと

でもさ、一番おいしそうなのは白だよねやっぱ。あ、でもピンクもいいかもしれない。

masakeron-love


スポンサーリンク

あなたにオススメの記事&広告

筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。