7月生まれ 誕生石・パワーストーン

ルビーの価値はどこにある?輝く透明な赤は作り物!宝石処理の話

Written by すずき大和

世界の多くの国々で7月の誕生石となっているルビー。

「宝石の女王」とも呼ばれるルビーには、あらゆる危険や災害から持ち主の身を護る力が宿るといわれ、古代より多くの文明の中で珍重されてきました。

  • 困難を乗り越えるパワーをくれる“勝利を呼ぶ石”
  • 情熱的で官能的な魅力を高めてくれる“愛を叶える石”
  • 魔除けのみならず財産や名誉も護る“富と権力をもたらす石”

として、より深い輝きを放つ、美しい宝石を人々は求めていきました。



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ルビーは酸化アルミニウムの結晶

ルビーとサファイアは同じ鉱物

ルビーの原石は、

「コランダム(corundum)」

と呼ばれる鉱物です。

コランダムは、酸化アルミニウムが高温高圧化で溶け、ゆっくり冷えていく時に生まれる結晶です。高純度の場合、透明な結晶になりますが、そこにわずかな不純物が混じると、様々な色がつきます。特に美しい色のものが宝石として扱われています。

クロムという金属が約1~2%混ざったものだけが、赤い「ルビー」になります。

鉄やチタンが混ざって濃紺や青紫色になったものは、「サファイア」です。

クロム入りでも、0.1%程度だと、薄いピンク色の「ピンク・サファイア」になります。

不純物次第で、「イエロー・サファイア」「グリーンサファイア」にもなります。

不純物が多過ぎてもダメです。クロムも5%くらいになってしまうと、灰色の塊となり、もはや宝石としての価値はなくなります。

純度の高さと宝石の価値

何でも“純度が高いほど高品質・高価値”のようなイメージを抱きがちです。が、コランダムは、絶妙な割合で不純物が混ざったものが宝石として珍重されているわけです。

といっても、それがわかったのは、科学が発展した最近のことです。大昔から人々が求めてきた、より価値の高いルビーとは、やはり見た目の純度が高いものでした。

宝石が結晶化される時、溶け込まないで残る不純物は「インクルージョン」と呼ばれます。西洋では、インクルージョンや傷の少ない、より透明度が高いもの程美しいとされます。

加熱加工と非加熱ルビー

宝石の加工処理

コランダムには、

「シルク・インクルージョン」

と呼ばれる、ルチンの針状結晶の混在が多いことが知られています。

このシルク・インクルージョンを溶かして、更にクロムの混ざりムラ(色ムラ)も取り除くため、何百年も前から

“ルビーの結晶を加熱する”

という処理が行われてきました。燃える情熱を象徴するルビーは、本当に一度燃やされていたのです。現在も、流通するルビーの95%は、加熱処理が施されています。

カットや磨き処理以外に、美観アップや耐久性向上のために施される処置(宝石処理)には、いくつかの手法があります。樹脂を充填したり、放射線を照射したり、石の特徴に合わせて、様々な技術が開発されています。

これまで傷や不純物、色ムラなどのせいで見劣りがしていた石も、処理により、最高級品と変わらない美観にすることが可能になりました。

非加熱ルビー

わずかですが、天然の状態でインクルージョンや色ムラのほとんどない、深い赤色の美しいルビーが採れると、加熱処理されずに宝石に加工されます。

“非加熱ルビー”は、もちろん物凄く希少価値が高く、値段も何倍も高いものです。近年異常に人気が高まり、更に値が高騰しています。

日本市場でも“非加熱ルビー”ブームを煽る情報が最近目立ちます。

海外では、宝石処理は、宝石の見た目の価値をよりよくするための“お化粧”のような感覚で肯定的に受け止められています。が、日本人は「天然もの」に執着する傾向があり、処理された宝石の価値が海外よりだいぶ低く見られがちです。

宝石の価値は、何よりも見た目の美しさで決まります。非加熱でも見た目が劣れば当然価値は低くなります。が、最近、非加熱であれば価値が高いと思い込み、見栄えが良くない非加熱ルビーに法外な値段を払う日本人が出てきています。

美しさを求めて生まれた技術

  • より傷や不純物が少なく
  • より透明感が高く
  • より大きい

これら最高級品質を求めて生まれた処理手段によって、それまで一部の特権階級しか持てなかった、美しい高品質な宝石が、庶民の手にも届くようになりました。

技術もアップし、最近は、後から鑑定しても非加熱ルビーと見分けがつかないものが多いです。更に、最も上記の条件に合う最高級品質のルビーは、実は人工的に生成したコランダムなのです。超高品質がニセモノの証、という皮肉です。

また、表面を丸く磨き上げたルビーは、シルク・インクルージョンに反射した光が六条の星のように輝きます。


不純物が入っていても、これもまた、

「スタールビー」

といわれ、古くから珍重されています。

透明な輝きとは違うルビーの価値です。

美しさと宝石の価値

人々が昔から求めてきた品質を手に入れるために磨いた技術なのに、人の手が入ると価値が下がると考えるのは、ある意味矛盾しています。

日本人の多くは、無農薬で自然に作った見栄えの悪い野菜ではなく、農薬や漂白剤を使って見栄えよくした野菜のほうを好んで買います。お腹に入る食材には安全性より見た目を重視し、実を飾る宝石に見栄えより天然性を求めるのも変な話です。

美しさとは?ものの価値とは何なのか?

よくわからなくなる話でもあります。

まさケロンのひとこと

美しさのなかには、いろんな『感動』が含まれてて、人の手が入らないことでしか得られない感動があるんだろうなぁ。

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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。