食の豆知識

ケルシー/山梨県原産アメリカ育ち、芳醇な甘さの幻の果実

Written by すずき大和

スモモは、夏から秋にかけて出回る、甘酸っぱくてみずみずしいフルーツです。日本の市場で出回っているスモモは、赤い皮で黄色い果肉の品種が多いですが、緑の皮で赤い果肉のソルダムや、紫(黒)の皮のプラム(プルーン)などもよく見かけます。

ミネラルや葉酸も多く含まれ、手ごろな値でどこでも手に入る庶民的な果実です。独特の酸味と歯ごたえがありますが、その酸っぱさを好む人もたくさんいます。

ところで、8月下旬から9月にかけ、ほんの2週間ほどの短い間だけ出てくる、

「ケルシー(Kelsey)」

と呼ばれる品種はご存知ですか?

ケルシーは、150~200gほどの巨大な緑色の実を付けます。普通のスモモは80~120gくらいなので、倍ですね。

芳醇な香りと甘さ、柔らかい果肉が「物凄く美味しい!」と評判です。が、高価で希少なためなかなか手に入りにくく、“幻のフルーツ”とまでいわれています。



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希少な帰国子女フルーツ

甲州大巴旦杏

スモモの仲間の原種は、中国原産といわれています。古代には日本に伝わり、自然に交配する中で、日本固有の品種もいくつか生まれていました。

巨大な緑色の果実が成る

「甲州大巴旦杏(コウシュウダイハタンキョウ)」

と呼ばれる、山梨県や岡山県地方で古くから作物とされてきた在来種がありました。

実は、これがケルシーの正体です。

花が咲いてから結実まで時間がかかり、雨に濡れると傷みやすいため、ケアに手がかかる割に、緑色の皮の表面に白い粉(ブルーム)がふいた見た目が敬遠され、あまり売れない品種でした。大正時代に入り、だんだん作る農家が減っていきました。

ケルシーのスモモ

日本でだんだん作付けが減っていった時代からさかのぼること半世紀、明治3年(1870年)に来日したアメリカ人ハーク(Hough)さんによって、翌1871年、甲州大巴旦杏の種苗がアメリカに持ち帰られていました。

苗は、カリフォルニア州バークレーのジョン・ケルシー(John Kelsey)さんの農場で育てられました。大きな緑色の実は、アメリカ人を驚かせました。

“Kelsey’s Japan Plum”(ケルシー農場の日本のスモモ)

と呼ばれて、その芳醇な香りと甘さもたちまち評判になりました。

ケルシーさんによって、更に改良された苗は

「Kelsey」

の名で、徐々に世界に広まっていきました。

日本へ逆輸入

20世紀には、ヨーロッパやオーストラリア、南アフリカにまで苗が渡り、作付けされるようになりました。やがて、大正4年(1915年)に日本にも逆輸入されました。

日本原産種のスモモがアメリカに渡り、45年の歳月を経て帰ってきたわけです。

逆輸入されたKelseyは、改めてその美味しさが評価され、セレブご用達フルーツになっていきました。そして、国内で廃れかけていた甲州大巴旦杏の栽培も、「ケルシー」の名で復活していったのです。

ケルシーってどんなフルーツ?

美味しいけど、作るのは大変

さて、再び山梨の農家で栽培されるようになったケルシーですが、雨の少ないカリフォルニアではそんなに手間なく大量に栽培することができました。が、梅雨があり、台風もくる高温多湿の日本で、実を濡らさないように熟させるのは、とても大変なことでした。

果実ひとつひとつに、人の手で雨除け・日除けのカバーをかけていきます。収穫期は10日から2週間くらいしかなく、採れる量も限られています。希少な上にコストもかかるため、どうしても市場では高価になります。

それでも、その美味しさから人気が高まり、最近では6~7月頃から購入予約が始まり、あっという間に売り切れとなっています。

ハート型の大きな実

ケルシーは、前述のように、収穫したては白いブルームで覆われています。が、日が立つとだんだん粉が取れていきます。同時に皮も濃い緑色からやや黄味がかった明るい緑色になり表面に艶が出てきます。すっかり粉がとれてツヤツヤになると、完熟食べごろです。

中には皮が黄色から赤へと変わるものもありますが、多くは完熟しても緑色のままです。ソルダムのように赤い斑点なども出ません。皮はとても柔らかいため、剥かずにがぶっとそのまま食べられます。

半分に割ると、黄色い果肉の中心にタネと空洞があります。この空洞もケルシーの特徴で、空洞周りは果肉が褐色になっています。

赤いスモモより酸味が少なく、ツヤっとしてきてすぐでも十分に甘いです。更に腐る寸前くらいまで熟成させると、ますます芳醇でとろっと柔らかい食感になります。

実の先端が尖った形をしているので、

「兜李(カブトスモモ)」
「尖李(トガリスモモ)」

の別名もあります。

英語の解説を検索すると、

「heart-shaped Plum」(ハート形のプラム)

という表現がとてもたくさん出てきます。

機会があれば一度ご賞味ください

店頭では、銀座などの高級フルーツ店で扱われています。6~20個くらいの箱詰めになって、マスクメロンや国産サクランボなどが並ぶ高い所に飾ってあります。1個当たりの単価はだいたい800~1000円くらいでしょうか。

楽天などのネット通販だともうちょっと安いですが、アメリカよりはだいぶ高価です。

庶民には確かに“幻のフルーツ”かもしれません。ぜひとも一度は食べてみたい逸品です。

まさケロンのひとこと

単価高い…!!けど食べてみたい……!!!!!!

masakeron-love


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筆者情報

すずき大和

調べもの大好き、文章書くことも人に説明することも好きなので、どんな仕事についても、気付くと情報のコーディネイトをする立場の仕事が回ってきました。好奇心とおせっかい心と、元来の細かい所が気になると追求してしまう性格をフルに発揮して、いろいろなジャンルのコラムを書いています。