9月29日は、「来(9)る・福(29)」の語呂合わせにちなみ、
『招き猫の日』
なんだそうです。
制定したのは、日本で唯一最大の“招き猫愛好家組織”である
『日本招猫倶楽部』
招き猫が好きで好きでたまらない人、招き猫収集家、研究者などなど、年齢性別職業出身問わす、招き猫マニアやファンは、日本全国各地に大勢いらっしゃるようで、1993年の組織設立以来、着実に会員を増やし続けている巨大な趣味のサークルです。
招き猫は日本発のラッキーアイテム
農耕社会から生まれた猫の縁起物文化
大昔から、人間はいろいろな動物を家畜やペットにして、一緒に暮らしてきました。農耕民族だった日本人にとって、動物は働き手としても大事な存在でした。
猫が人の家で飼われるようになったきっかけも、最初は穀物庫のネズミ駆除対策でした。
中世から近代の時代は、多くの農村で養蚕も行っていました。日本は絹糸生産が盛んな国でした。蚕の幼虫やさなぎもネズミによく食べられたので、蚕小屋の中に猫が放たれることも多くありました。
猫は“養蚕の縁起物”とされ、張り子の猫の置物や絵馬などが祀られるようになりました。
やがて、日本の養蚕業が衰退する時代になると、養蚕に限らず、
“商売繁盛の縁起物”
として、片手をあげて座っている『招き猫』の人形が、広く全国に知られるようになっていきました。
招き猫発祥の地はたくさんある
招き猫の人形を最初に作り始めた、といわれる地は、実は全国に複数あります。猫は縁起がいいとする概念は、広く日本全体にあった風習なので、それぞれの地で猫が福を招く像が出来上がっていったと思われます。
各地の発祥説の中には、当時の物証や記録がなく、伝説化しているところも少なくありません。が、東京浅草神社(三社さま)に伝わる今戸焼の置物
「丸〆猫(まるしめのねこ)」
は、19世紀江戸時代に作られたとされる、現存する人形が存在し、今のところ、これが確認できる日本最古の招き猫とされています。
伝説によると、老婆が貧しさゆえに愛猫を手放しますが、その猫が夢枕に立ち、
「猫の人形を作り祀れば、福徳自在となる」
といったそうです。お告げの通り今戸焼で作った猫を三社さまの鳥居脇で売ると、大評判となり、今に伝わっています。
現在売られている丸〆猫:横向きで、背中に〇に〆の印があるのが特徴
招き猫寺として有名な豪徳寺
同じく東京世田谷の豪徳寺も、招き猫発祥地として有名です。
江戸初期に彦根藩藩主・井伊直孝が江戸屋敷にいた時に鷹狩りに出て、豪徳寺の前を通りました。手招きする猫に導かれた結果、落雷を逃れたといわれます。直孝は寺を立て直す寄進をし、豪徳寺は井伊家の菩提寺となりました。和尚は猫が死ぬと墓を建てて弔いました。
後世に「招猫堂」が建てられ、皆さんが良く知っている、正面向きの招福招猫の人形を作って祀りました。以後、多くの人が訪れて、招き猫を崇拝するようになったといわれています。今も、豪徳寺境内には無数の招き猫の置物が並び、観光名所になっています。
深く楽しい招き猫の世界
招き猫ミュージアムと瀬戸の町
日本招猫倶楽部は、「招き猫の日」制定以降、
- 全国の招き猫発祥の地や人形産地などを中心に、「来る福招き猫まつり」を開催
- 全国各地や海外の都市で「招き猫展」を企画・開催
- 「招き猫ミュージアム」を開館
など、様々なPR活動を行ってきました。
「招き猫ミュージアム」は、日本招猫倶楽部の世話役を務める夫妻の数千点に上る招き猫コレクションを展示するため、2000年に、夫妻の在住の地群馬県吾妻郡嬬恋(つまごい)村に建てられました。
2005年3月、愛知県瀬戸市へ移転しました。
瀬戸市は「せともの」発祥地であるやきものの町です。全国にある様々なやきものの町の中で、最初に陶器の招き猫の量産を始めたのが、この瀬戸の町でした。明治後期から100年に渡り、精密な造形のものからファンシーな人形まで、様々な招き猫を作り続けてきました。
瀬戸市では、1996年から官民をあげて「来る福招き猫まつりin瀬戸」を開催し、「招き猫のまち」を観光PRの目玉のひとつとしてきました。ミュージアムの移転により、ますますブランド色を高め、内外から多くの人を集めています。
時代と共に広がる招き猫の世界
昔から、右手を上げた招き猫は“金”を招き、左手を上げた猫は“人”を招く、といわれてきました。現在では、色別に開運の方向が特化された招き猫もあります。
従来は三毛猫柄ですが、昔からの言説にちなみ、
- “猫は夜目が利くので縁起がいい”とされてきたため、黒猫は魔除け・厄除け
- “赤色は疱瘡や麻疹が嫌う色”といわれるため、赤猫は病除け
と、いわれています。更に最近では、
- 青猫は、学業向上・交通安全
- ピンク色は、恋愛成就
というのも追加されています。
中国では、金色の豚が開運招福の象徴ですが、そこにちなんで金色の招き猫もたくさん売られています。昨今の日本文化ブームもあり、東南アジアや欧米でも招き猫が作られ、飾られるようになってきました。
置物の人形以外にも、さまざまな招き猫グッズが日々新たに生まれています。招き猫は、「〇ティちゃん」にも負けない、歴史と伝統と周知力のある、日本の誇るゆるキャラ猫なのです。
招き猫いっぱいいるとちょっとコワイね。でも可愛いんだよな〜!