6月21日は夏至です。
天文学では、太陽黄経が90度になる瞬間のことだそうですが、暦ではその瞬間がある日のことですね。
具体的な説明としては、太陽が最も北にきて昼間の時間が一年で一番長くなる日、というのが一般的でしょうか。
日本や中国で使われている季節の暦二十四節気の中の夏至は、この日だけでなく、次の節気(小暑)までの15日間くらいの期間全部のことも示しています。
更に細かい季節の暦「七十二候」では、夏至日は乃東枯と表現されています。
と読みます。
二十四節気と七十二候
冬至・春分・夏至・秋分は大古の昔から人類共通の暦
地球の生物は自然の四季のサイクルの変化に適応して生きています。
古代人類にとって、獣や魚を捕獲したり、植物を採ったりして食糧にするためには、季節と自然の変化の知識は必須のものでした。
四季が一周する期間を一年と決め、暦を定めることは、世界のどの文明でも最優先課題として取り組まれました。
暦の作り方は文明により異なっていますが、太陽の位置を基調とする点は共通しています。
特に、
- 冬至
- 春分
- 夏至
- 秋分
の4つはどこの世界でも暦を決める基準点となっていました。
東洋漢字文化圏のカレンダー
中国から漢字が伝承していった文化では、太陽の動きを示す暦として
4つの基準日の間の3か月間を15~16日間隔で6つに区切り、言葉に表現したのが
二十四節気
です。
更にそれを3つに区切り、約5日間ごとにその日の気候の特徴を情緒ある漢文で表現するタイトルをつけました。
それが
七十二候
です。
日本にも中国からこの季節暦が伝わりました。
二十四節気は今でもそのまま使っていますが、七十二候は必ずしも中国と日本の季節感が一致しないため、長い年月をかけて少しずつ日本バージョンに変更してきました。
夏至の日を示す七十二候「夏枯草かるる」
ウツボグサの花穂の結実が始まる頃
夏至日を示した日本版の七十二候
乃東枯(なつかれくさかるる)の「乃東」とは漢方薬に使われる
夏枯草(カゴソウ)
の旧名です。
夏枯草はウツボグサという植物の花穂の部分の呼び名です。
ウツボグサは日本中どこでも自生している植物で、野原や道端に群生しています。
中世の頃はとても身近な花だったようで、芽を出す頃、冬至の日の七十二候にも乃東生(なつかれくさしょうず)として出てきます。
茎の先端に3~5㎝くらいの花穂がつき、紫色のうつぼ(弓矢の矢を入れる袋)の形に似た小さな花が松ぼっくりのように咲きます。
結実すると花穂全体が茶色く枯れたように見えるので、最初の花に実が付き始める様子が
という表現になっています。
滅びの美学?ヨーロッパの夏至との違い
日本より高い緯度に位置する欧州では、冬至と夏至の昼間の時間の差は日本の何倍も大きくなります。
遅くまで日が沈まず、活動時間の長い夏至は、長い夜の冬を過ごす国の人たちにとっては、とても喜ばしい日であり、国により様々な夏至祭が開催されています。
実りの季節の象徴のような夏至には、繁殖に結び付く言い伝えも多く、男女の出会いや結びつきにまつわる風習がいろいろな国に見られます。
この日の収穫には特別な薬効があるとか、開運に通じるとか・・・
総じて神秘的かつ超自然的な活力を感じる日のようです。
梅雨の最中とはいえ、盛夏に向かい作物もぐんぐん育つ時期であることは日本も同じだというのに、生き生きと活力を感じるものではなく、わざわざ枯れ始めるものに着目して暦としてしまう日本って・・・。
侘び寂びに趣を感じる日本独特の美意識が、こんなところにも表れているのでしょうか。
夏至の捉え方ひとつにも、お国柄や文化が深く反映されているようで、とても面白い対比です。
日本独特の美意識かぁ~
ワビサビってやつかな?