毎年7月2日頃は暦の上での
半夏生(はんげしょう)
になります。
暦というのは、四季の様子を表わした表現で、二十四節気とか雑節などと呼ばれるものです。
半夏生は夏至から11日目くらいの、太陽黄経が丁度100度になる日のことと、その日から5日間くらいの期間のことです。
漢字の表現は、半夏(はんげ)という草が生える頃=半夏生ずる、という意味です。
梅雨が半ばを過ぎ、雨の降り方や晴れ間の日差しが、一段と夏らしくなる時季を教えてくれる暦です。
農作業の節目を知らせる半夏の花
畑の雑草カラスビシャク
暦の大きな目的は、農期の判断の拠り所とするためのものでしたから、畑や里山で見られる自然の風景が記されたものが多いです。
半夏とは、別名
カラスビシャク
と呼ばれるサトイモ科の雑草で、畑によく生えました。
畑の雑草ですから、農家の人にとっては抜いても抜いても生えてくる面倒くさい厄介者です。
生えてくるのが、梅雨の半ば、気温が上がってくる丁度今頃で、この時季は田植えが一段落し、ちょっとの間農作業を休む習慣もあったようです。
半夏生期間が明けたら、まず草むしりから農作業を再開したのかもしれません。
サトイモ科の花の形が特徴的
サトイモ科の花は、
仏炎苞(ぶつえんほう)
という葉が変化して花びらのように見えるものが、花穂をくるむように咲きます。
水芭蕉やカラーの花がそうですね。
あの白い花びらに見えるのが仏炎苞です。
カラスビシャクの場合は仏炎苞が葉と同じ緑色なので、変な形の丸まった葉っぱの中からやはり緑色のひげみたいな花穂の先端がビューっと伸びている感じで、とてもユニークなものに見えます。
仏炎苞の形をひしゃくに見立てて名が付きましたが、狐のろうそくとか蛇の枕などと呼ぶ地方もあります。
雑草ですが、実はむかつきを防ぐ漢方薬にも使われる一面もあります。
つわりにもいいそうです。
群生地が名物となっている半夏生の花
白い花穂と半分白い葉を持ち水辺に群生する半夏生
一方で、この時季、群生地の開花風景がニュースによく出てくる半夏生は、湿地や水辺に生えるドクダミ科の白い花です。
花穂も白いのですが、実は遠目に見える白は花ではなく葉です。
花の時期にだけ葉の半分がペンキをかけたように白くなるという特徴を持っているので、一斉に白い花が咲いたように見えます。
暦の上の半夏生の時期が開花期なので、半夏生と名が付いたというのが通説です。
半夏の生える頃の暦が半夏生と呼ばれるようになり、その時期に咲く花(本当は葉)が半夏生と呼ばれるようになった、というややこしい名付けですね。
という説も一部にあります。
葉の片面(表)だけ白くなるため元はカタシログサ(片白草)と呼ばれていました。
湿原に敷き詰められた白い絨緞
日本や韓国など東アジアに古くから自生していたカタシログサは、水辺を好み群生します。
緑色の雑草地のように思っていた所が、この時季一斉に花穂が出て葉が白くなり、そこだけ白い絨緞を敷き詰めたようになる光景は趣がある眺めとなります。
飛鳥路の自然公園などはよく知られる観光地となっています。
庭の池の周りを囲むように半夏生が咲く京都東山の寺院
両足院
では、普段は入れない庭をこの時季だけ観光客に公開しています。
歌の歌詞や俳句などに歌われる半夏生も、暦の半夏ではなく、このカタシログサを指しているものがほとんどなので、暦の半夏生が示す植物はこれだと思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。
畑も湿地も減ってきている昨今、半夏も半夏生も数が減少しているそうです。
尾瀬の水芭蕉などに比べると、ちょっと地味目な印象かもしれませんが、日本に古くから伝わる貴重な自然ですから、これからも大事にしていきたいものです。
半夏生は、季節の風物詩やのに減ってきてるって残念やな。
後世にちゃんと残していきたいな!