お盆も過ぎ、子どもたちの夏休みも終盤となりました。
まだまだ暑さ厳しい日は続きますが、夕暮れの時間は少しずつ早まり、吹く風にも秋の気配を感じることが多くなっています。
気付けば、路肩の草むらや郊外の雑木林の方から、
秋の虫の声
も随分と聞こえるようになってきました。
夏休みの宿題の残りに追われていた頃は、がっかり感が大きかった夏の終わりの感慨でしたが、大人になると、過ぎゆく夏を見送る寂寥感の風流さも、なんとなくわかるようになった気がします。
台風の季節の到来
はあまり喜ばしくはありませんが、静かにふけていく初秋の夕暮れ時、涼しく感じられるようになったら、思い切って窓を大きくあけて、虫の声をバックに秋の味覚で一杯やるのも、また楽しいものです。
日本の季節の演出には虫の声
スズムシの飼育は江戸時代から
虫の声に風流を感じるのは、日本独特の文化です。
てきた日本人にとっては、虫の声はわざわざお金を出して買ってまでも楽しみたい季節の演出でした。
飼育が難しくあんまり至近距離で聞くとうるさすぎる蝉は、自然の中で聞いていれば良かったようですが、ささやかに心地良い音色で鳴いてくれる秋の虫は、江戸時代の頃から籠に入れて売られ、そのための
人工飼育
も行われていました。
当時はまだ自然が多く、どこでも虫の音を聞くことができたでしょうに、わざわざ身近に確実に楽しみたいがために、人々はスズムシを買ったり、飼ったりしていました。
比較的簡単に飼えるスズムシ
スズムシは比較的飼うのが簡単で餌も
- きゅうり
- ナス
- スイカ
など、夏の身近な野菜とかつお節などをあげればよく、成虫を捕まえたり買ったりすればワンシーズンを楽しめます。
土を入れて、乾燥しすぎないように注意しておけば、繁殖がうまくいったメスが地中に産卵しますから、そのまま湿度をたもっておけば、翌年の初夏に孵化します。
意外と知らないスズムシの雑学
スズムシとマツムシ、どっちがどっちかわからない?
秋の鳴く虫の代表と言えば
スズムシ
ですが
- コオロギ
- マツムシ
- ウマオイ
- クツワムシ
なども良く知られています。
唱歌
虫の声
には、それぞれの特徴的な鳴き声が、とても的確に表現されていますね。
鳴く虫はだいたいがバッタ目コオロギ科もしくはキリギリス科に分類されます。
コオロギ科の
- スズムシ
- マツムシ
は、大きさや色や鳴き声が違いますが、昔から混同されることが多くありました。
スズムシは
と途切れなく同じリズムで鳴くことが多いです。
と間と抑揚がある鳴き声がマツムシです。
昔、このチンチロリンのほうが
鈴の音
に聞こえるとされ、地方によっては
虫の声の歌の歌詞が広まってからは、中型のリーンリーンと鳴くのがスズムシ、大きくてチンチロリンと鳴くのがマツムシに統一されたようです。
秋の虫の鳴くしくみ
鳴くと言っても、実際は声を出しているのではなく
羽を震わせることで音を出していること
は、皆さんもよくご存知ですね。
では、どうして羽が震えるとあんなに大きな音がでるのでしょう?
前の羽の根元の所が少し重なり合うようになっており、コオロギ科のものは右の羽が上、キリギリス科のものは左の羽が上にだいたいなっています。
上の羽の裏側には、
ギザギザの鑢(ヤスリ)
のようになっている部分
鑢状器(ろじょうき)
があり、下の羽の表側は、丁度ギザギザが当たる部分がバチ状やツメ状(摩擦器)になっています。
このギザギザとバチやツメのようなところが高速でこすれあうことで、あの鳴き声が出ています。
さらに、左右の前羽には発音鏡という薄くて固くて丈夫な膜でできている
共鳴装置
が備わっています。
ここで音が共鳴して、大きく響くようになるのです。
もし悪戯っ子の子どもに捕まって、左右の羽の上下の重なりを逆にされてしまうと、虫はもう鳴けなくなってしまいます。
子どもが虫取りに行く時には
野菜しかあげないと共食いしてしまう
スズムシは
- ナス
- きゅうり
- サツマイモ
などの野菜が大好きですが、生きていくためには
動物性蛋白質
も必要とします。
自然界では他の虫の死骸などを食べていますが、飼う場合は
- かつお節
- いりこ
- チーズ
などをあげましょう。
動物性蛋白質が足りないと、共食いによってそれを補おうとします。
かつお節などあげていても、産卵期のメスは卵の栄養分を大量に必要とするため、弱っているオスを共食いしてしまうことがよくあります。
また、狭い場所に個体がたくさんいすぎて密集していると、共食いによって数を減らそうとします。
共食いさせないようにするには
スズムシが鳴くのは、
相手(恋敵のオス)を威嚇する場合
もたまにありますが、ほとんどは求愛の意思表明です。
ですから、メスとオスがある程度の数一緒にいないと鳴かないのです。
籠などの限られた環境である程度の数を飼う場合、多少の共食いは避けられないかもしれません。
高く跳べるけれど、飛べないスズムシ
背中をカバーし、鳴き声装置でもある前羽と、それに隠れて飛ぶ時に広げる後羽がついています。
実は成虫になってしばらくすると、
スズムシは自らの後足でその後ろ羽を抜いてしまいます。
羽化したてのメスは、近親相関を避けるためか、飛翔して別の群生地へ行くこともありますが、その他の時、まずほとんどスズムシは飛びません。
とても発達した後ろ足によって、バッタほどではないけれど、そこそこジャンプ力のあるスズムシは、緊急の危機の場合などは跳んで逃げます。
しかし、普段は飛び降りれば早いような場合も、地を歩いてはって移動しています。
透明な水槽などで飼育している場合も、フタの空気穴から跳び出して逃げることはあまりありません。
夜行性なので、もともと昼間はずっと草陰などに隠れて、滅多に動きもしないのですけれどね。
虫の音に癒しを感じるのは、世界でも日本人と
ポリネシア人
だけなんだそうです。
他の国の人には、耳障りなノイズとして聞こえてしまうことが、脳波の診断で判明しています。
せっかく持って生まれた感性ならば、進んで使って活かしましょう。
自然環境が減っている昨今、マツムシやウマオイは随分個体数が減っています。
くつわ虫は絶滅の危機
にあります。
スズムシが繁殖しているのは、人工繁殖して売りに出され、飼っていたものが逃げてまた自然繁殖して広がったことも大きく影響したと考えられています。
日本の秋の風情を無くさないためにも、あなたも良かったらスズムシ飼って
鈴虫の声を聞いたら、涼しくなってきたなぁ~って感じるやんな!
これからも、秋の風物詩を無くさんようにせなアカンでぇ~