「えびす講」とは、えびす様を祀るお祭行事のことです。
東京日本橋の七福神のひとつである、宝田恵比寿神社では、10月20日がえびす講です。
商売繁盛の神様のお祭なので、えびす講に合わせて商業の市がたつ地域も少なくありません。
商店街が安売りイベントを大々的に開催するのが慣わしのえびす講も全国にはいくつもあります。
日本橋では、古くからえびす講の前日19日にべったら市が開催されており、二日間つづけて界隈は大変賑わいまっています。
えびす講っていつやるの?
同じえびす神社でも日程はバラバラ
日本全国には、様々なえびす神社がありますが、えびす講が10月20日に行われる所は、実は他にほとんどありません。
お江戸のえびす講が10月なのは、全国的に見るととても特殊です。
最も多いのは、11月の20日前後です。日付で、18・19日を宵宮(前夜祭)、20日を本祭としている所もあれば、土日にかかるように毎年日付を変えて開催している所もあります。
23日の祝日に固定しているえびす講もあります。
関西では、1月10日前後に開催するところが多く、「十日えびす」と呼ばれています。
他にも1月20日の地域、12月の地域など、その日程は神社によりかなりバラバラになっています。
後年になって出雲大社が出したインフォメーション
10月のことを「神無月[かんなづき]」と言います。
日本中の神様は10月に出雲に集まって縁結びの相談をすると言われており、出雲以外の地域では、神様がいなくなってしまうので、こう呼ばれるそうです。
とはいえ、全ての神様が地元からいなくなってしまうのも物騒なので、留守をまもる神様が決められており、それが、えびす様でした。
神無月に、留守居役のえびす様を称え祀るお祭として、えびす講が開催されている、という説明がされているネット記事など多いですが、これは、後年出雲大社の界隈から広がって行った話のようです。
商業まつりの色が濃いえびす講ならではの理由
11月が多いのは、旧暦の10月20日を意識してのことではなく、暮れを控えた11月に、日用品や秋の収穫のしんがりとなる産物がとても安く買える市の開催は、商人にとっても庶民にとっても時期的に好都合だった、という説は説得力があります。
正月あけの「十日えびす」の方がなじみ深い関西でも、新年の景気づけ、縁起物としての市だてやイベントの意が強いです。
同じえびす神社でも、祀られる神様は全国で違う
もともとは別の神様の神社、後からえびす信仰をプラス
全国のえびす講が日程もそのイベントの内容も様々に違っているのは、えびす神社そのものが、同一の神様を分霊していった同系列神社ではなく、もともとそれぞれの土地に根付いた神様の神社だったものが、後からえびす像を祀ったり、えびす神信仰を取り入れたりしたところが多いせいです。
また、純然たるえびす信仰として生まれて発展した神社でも、祭神が大きく二つに分かれていて、異なる神話が言い伝えられています。そんな中で、祭の形態も、それぞれの発展を遂げたと思われます。
えびす神社のおおまかな歴史
海の近い町での漁師たちの海の神様信仰として、えびす神は古代のころから既に日本各地で崇められていました。
交通の便が非常に悪い時代だったのに、なぜ異なる地域でみなおなじ「えびす様」になったのかの理由は謎めいています。
中世の初期、日本の神話(古事記と日本書紀に載っている日本国の創設神話)に出て来る神様の中のどれかが、実はえびす様ではないかと考えられるようになり、ふたつの神様の説が全国に広まりました。
えびす神社の多くが、蛭子命[ヒルコノミコト]と事代主命[コトシロヌシのミコト]を祀る神社に大別されるようになります。
やがて、漁の神様から商売繁盛の神様、五穀豊穣の神様へと守備範囲が広がり、「福の神」として人々から愛される神様になっていくうち、今のようなふくよかで、にこにこ顔の優しいビジュアルが完成されていきます。
あやかったり、近隣の神社と七福神のセットにするため、えびす神信仰も取り入れる神社は更に増えました。
一方、元来の海の神様をシンプルに祀り続け、海から拾った石などをずっとご神体とするえびす神社も残っています。
また、別の神様と同一視する解釈の神社も一部あります。
こうして、いろいろな神様を祀り、いろいろな慣わしを持つたくさんのえびす神社が存在するようになったのです。
全国の有名なえびす講
福男競争で有名な蛭子神社の総本山
蛭子命を祭神とするえびす神社の全国総本山といわれる、兵庫県の西宮神社では、正月明けに十日えびすが開催されます。
十日の朝6時に表門を開き、本殿まで一番に走りついた参拝者がその年の“福男”として認定される「開門神事福男選び」は、毎年ニュースにもなっています。
晩秋の花火大会、長野えびす講
毎年11月23日に開催される長野の西宮神社のえびす講では、“煙火大会”と呼ばれる花火大会のイベントが有名です。
歴史は古く、江戸時代、権堂村(今の権堂町)にあった遊女屋が客引きのために始めたのが人気を呼び、祭として定着したと言われます。
熊手で幸運をかき集める広島胡子神社は三位一体の祭神
広島県の胡子神社で開催される11月のえびす講は、広島三大祭のひとつにも数えられるほど、盛大な賑わいを見せています。
胡子神社は、蛭子と事代主の両方に加え、毛利家の始祖大江広元公の三柱が三位一体となってえびす神としてお祀りされています。
11月18日から20日までの三日間に渡るえびす講では、三十万人近い人出で賑わう市が開かれ、「こまざらえ」と呼ばれる青竹でつくった熊手が売られます。
大判、大福帳、打ち出の小づち、宝船など「七宝」が下げられた熊手は、幸運と財産をかき集めるという縁起物です。
日本一えびす像がたくさんある佐賀のえびす祭
佐賀市は日本一たくさんえびす像がある町として知られています。
長崎街道沿いを中心に、普通の家の軒先や街角にえびす像が祀られています。
えびす神を祀る恵比須神社も複数あります。
十日えびすを開催している神社もあるし、夏の時季にえびす祭がある神社もあります。
東京のように10月20日にえびす講を行っている地域もあります。
2014年現在、市内のえびす像の総数は800体を超え、今後もどんどん増え続けているそうです。
石工職人が多い町であることと、昔から漁業で栄えた町なので、漁業の神様えびす様への人々の信仰がとても熱かったことが、こんなにもえびす像が多い町を作った要因のようです。
開運福笹授与してくれる平塚三嶋神社
湘南のえびす様といえば、平塚の三嶋神社です。ここのえびす講は1月第3日曜日です。
「新春えびすまつり」と呼ばれます。1万円以上の参加料(布施)をすると、福男・福女として「開運福まき神事」に参加できます。
釣竿にみたてた笹にお神札、鯛、福田藁、サイコロなど、様々な縁起物を結ぶ「福笹」が授与されます。
関西では「えべっさん」と呼ばれることも多いえびす様とえびす講、形は様々ですが、いづこのえびす様も、人々から慕われて信心されているようです。
始終にこやかで鯛を抱えたえびす様は、確かになんでもあやかりたくなる優しい神様の印象です。
あなたの町にもえびす神社はありますか?えびす講はいつ頃?あなたもあやかりに行きませんか?
佐賀市のえびす像は800体以上で今後も増え続ける・・・。
よし、まさケロン像を1万体つくってもらおう!